Entry

脳障害に禁煙の鍵、見つかる

<記事要約>

2007/1/26/Scienceより(米国科学振興会が発行する科学専門誌。1880年来の歴史がある。) アイオワ大学と南カリフォルニア大学の研究者は、卒中などで脳に障害を受けた喫煙者を調査した。その結果、大脳皮質奥の意識的衝動に関わる部位「島(insula)」に障害のある患者は、そうでない患者よりも簡単に煙草を止める傾向にあるということがわかった。

南カリフォルニア大学の神経学者アントワーヌ・ベシャラ氏ら研究チームは、「島」に障害を受けた19人の喫煙患者を調査。そのうち12人は脳障害を受けてすぐに喫煙を止め、以来、吸いたい衝動や喫煙のぶりかえしもなく過ごしていることを確認した。 一方で「島」以外の脳障害を受けた50人の喫煙患者のうち、同様に喫煙を止めることができたのは4人だけだった。

関連記事リンク:http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/315/5811/531 
 



<解説>

これまで煙草の常習を維持する脳の部位については不明だった。今回の調査によれば、どうやら大脳皮質奥の「島」という部位が禁煙のカギとなるらしい。 禁煙のために「島」を意図的に傷つけることはできない。

しかし「島」と 「煙草を吸いたい衝動」の関係を掘り下げれば、禁煙に効果的な方法が見つかる筈だ。通常ニコチンが刺激するのは「島」ではない部位の皮質であり、その作用は脳内の化学物質に影響を与える。

一方「島」は、単純に煙を吸うという物理的衝動を促すと考えられている。この説が正しければ、ニコチンパッチよりニコチンなしの煙草の方が禁煙治療に有効と、神経学者ベシャラ氏は仮定する。

難しい話はさておき、喫煙者にはとかく過ごしにくい世の中だ。アメリカでは、全米50州のうち半分以上が、レストラン、バー、オフィスなど公共スペースにおける禁煙を実施(もしくは法案進行中)。 そうでない州でも多くの主要都市が禁煙法を採択している。

最近は煙草から子供を守るムーヴメントも盛んだ。ヴァーモント州、ワシントン州などは里親が子供のいる家で喫煙することを禁じている。 ルイジアナ州、アーカンソー州などは、子供が乗った車内での喫煙を禁じている。

これら禁煙法に追従する州は後を絶たない。 2006年7月、嫌煙家で知られる米国公衆衛生局長官リチャード・カーモウナ氏は、改めて間接喫煙が子供や非喫煙者の病気、死亡に関わると報告。SIDS(乳児突然死症候群)の原因にもなると国民に警告したことが、こうした禁煙法ラッシュに拍車をかけている。

喫煙は他人に迷惑だから、ばんばん法律で取り締まってしまえという風潮だ。 加えてアメリカの煙草は高い。メーカーの元値は一箱平均2.22ドル(約260円)。しかし小売店のマージンに加え、国税0.39ドル、地域ごとの諸税が上積みされた米国平均の小売値は4.40ドル(約530円)。マンハッタンではマルボロ一箱7.75ドル(約930円)で売っている。

この経済的ショックのおかげで、私は1年前、禁煙に成功。もはや「島」が煙草を欲しがることもなくなった。 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/17