全入時代の大学経営
ジャーナリスト
■多様な学生の囲い込み戦略
少子高齢者化社会が進む中、2007年は、大学入学志願者総数と大学入学者総数が67万5千人で同一になる「大学全入時代」という試算が出されている。各大学では「経営」という問題に頭を悩ませる。
まず、大学側はいかに「人を集めるか」ということが至上命題となっている。
そこで、まず、大学側が「広報」を充実させることになる。ネット上での広報戦略として、受験生用のコンテンツを充実させている。オープンカレッジ、出前授業、模擬授業等も行って、大学の授業に触れさせて、イメージさせている。東京大でさえ、女子高生のための説明会を行ったほどだ。
また、イメージさせた結果、受験生を多くするために、受験機会を増やしたり、多様化させている。
大学経営にとっては、受験倍率、受験生の増加とともに、「受験料収入」は魅力的なものだ。特に私立大では独自でユニークな入試方法がとられる。大学入試センター試験だけで合格できる受験方式も出てきている。AO入試や自己推薦等など、一般入試以外でも選択肢が数多くあり、一般入試でも、試験で選択する科目を多様化させている。
たとえば、慶応大政策学部では、小論文のほか、英語か数学、あるいは両方を選べる。東洋大経営学部会計ファイナンス学科では、簿記利用入試がなされている。東洋大工学部で初めて導入した「9月入試」も早稲田大商学部など他大学に広まりつつある。
さらに、推薦入試も多様化している。推薦には「指定校推薦」と「公募推薦」がある。北陸大では2007年から、「あなたの学ぶ意志が入学条件」とのキャッチフレーズで、すべての全日制高校を指定校にし、地方の私立大学では生き残りに必死だ。
■入学後のアフターケア
こうして「入り口」を多様化させると同時に「箱」としての学部も多様化している。
京都精華大では「まんが学部」を、平成帝京大では「ヒューマンケア学部」などのユニークな学部を設置。また、各大学で「副専攻」制度を作り、メインとなる「専攻」と同時に、「副専攻」を認定する文書を出している。こうしたことで、知的好奇心を満たせるカルチャーセンター化しつつ、就職にも活かせることになっている。
しかし、こうした流れは、基礎学力の低下を是認させることになりかねない。それを補うものとして、大阪大では「世界史」を高校の教科書を使った授業を展開。一般教養課程の正規科目として認めている。摂南大では数学、物理、情報処理、英語の補習授業を行い、事前登録なしに受けられるるなど、各大学で取り込んでいる。
そして、最終的には就職指導の充実。
学卒後の就職率が低下することも関連して、「自由放任型」から、きちんとした「個別指導」でアドバイスをしていく。それにより、学生を就職させることと、大学全体の就職率をアップさせることをしている。
少子化時代の大学経営は、学生を「囲い込む」ことと、「かまう」ことで成り立っている。今度は、そうした姿勢に、付加価値を付けていくことで、「差」を生み出して行くことが求められる。
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