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世界同時株安 中国バブル崩壊連鎖の恐怖

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2月28日の東京株式市場は全面安となり、今年最大の下げ幅。前日のニューヨーク・ダウ
30種平均の下落幅は同時多発テロ以降最初の取引となった2001年9月17日以来の大きさで
あった。

日本の株式市場が、ようやく上向き始め、「投資再開」したと思ったら、「世界同時株安」
に見舞われた、という方も多いのではないか。全く、油断も隙もない。

この「世界同時株安」ショックは中国発だと報じられている。

中国の株式市場、不動産市場は投機的な様相を呈しており、いつ、バブルがはじけても
おかしくないと言われているが、崩壊した場合の影響について述べてみることにする。


■常軌を逸した中国庶民の株式投資熱

上海株式総合指数は2006年に2.3倍になったうえ、さらに年初から24日に付けた過去最高値
までで12%上昇していた。

成思危・全国人民代表大会副委員長が1月31日付英フィナンシャル・タイムズのインタビュー
に以下のように述べている。

「株式市場がバブル化している。投資家はリスクを認識すべきだ。強気相場では投資家は
やや不合理な投資を行う。どの投資家も勝てると思っているが、その多くが最終的には負ける。
しかし、そのリスクを取るのは投資家の選択次第だ」

これを受け、3月5日からの全国人民代表大会(日本の国会にあたる)において金融引き締めや
株式投資抑制策を打ち出すのではないかとの見方が強い状況にあった。

中国は、計画経済から市場化改革に移行することによって、世界中から資金が流入し、投資と
経済成長が互いに促進される好循環が生まれている。

但し、お金が集まるところに「バブル」はつきものであり、中国の株式市場、不動産価格の
高騰もまたすさまじいものになっている。そして、その実態は、とても健全なものとは評し
がたい。

よく日本では、「株式のようなリスク資産への投資は、余裕資金の一部にとどめなさい」と
言われる。

しかし、現在の中国人の投資姿勢は、不動産や車を担保にしてまで、現金をつくり、株に
資金を注ぐという常軌を逸したものである。これは、銀行の融資審査が、非常に甘いという
側面がある。


■日本のバブル形成の発端

中国人および中国への投資を行っている外国人、中国でのビジネスを展開している人々に
とって、80年代の日本のバブル形成から崩壊に至る教訓は肝に銘ずべき事柄だろう。

そこで、振り返って、日本のバブルの主な要因について考えてみる。

その発端は、1985年の「プラザ合意」である。

「プラザ合意」というのは、先進5カ国蔵相・中央銀行総裁(米国、イギリス、西ドイツ、
フランス、日本)が、アメリカの経常収支赤字と財政赤字軽減のために、協調して為替レート
をドル安に進めることに合意した会議の通称だ。

プラザ合意前後に1ドル=240円前後だった円ドル相場は、1985年末には200円割れに、1年後
には150円へと急激なドルの下落が実現した。

この急激な円高により、輸出立国日本は不況に陥った。日銀の不況対策として、1986年1月から
1987年2月まで合計で5回の公定歩合引き下げを実施することになる。プラザ合意前に5.0%
だった公定歩合は、1年半後の1987年2月には戦後最低の2.50%まで急低下することになった。

他方、アメリカも大幅なドル下落の副作用として、インフレ、高金利、景気後退などの問題が
生じていた。

すでにドルの水準は十分に下がっており、当初の目標にまで達したとの判断から、日銀は
1986年3月以降、プラザ合意以降の為替介入を突然逆転させて「ドル買い・円売り」を実施する
ようになった。

ところが、勢いのついた円高・ドル安の流れは止まらなかったため、日銀はさらなる
ドル買い・円売り介入を続けることになった。

1986年に日銀が行ったドル買い・円売り介入の額は4兆円を超えた。

急激な利下げと介入資金によるマネーサプライの増加によって、1980年代半ばの日本は猛烈な
カネ余り現象、すなわち「過剰流動性」が発生することになった。


■バブルの加速化

日本のバブル発生要因は、このような背景に加え、金融機関の貸し出し姿勢の変化にもあった。

日本の銀行は原則として、不動産を担保にカネを貸出してきた。
その前提は、「土地の値段は下がらないもの」という80年代までの土地神話である。

カネ余り現象に加え、80年代後半から始まった金融自由化は、金融機関の貸し出し競争を
激化させた。銀行は、次第に将来の地価高騰の期待も担保評価に組み入れ、金を貸していった。

このような金融機関からの資金は、事業の設備投資などだけに使われたわけではなく、
「株式市場」、「不動産市場」にも流れ込んだ。

「過剰流動性」により、右肩上がりで上昇する市場を目の当たりにすれば、実際の事業資金
として投下するよりも、本業以外の投資によって、お金がお金を生むやり方のほうが効率よく
儲けられると考える経営者が出てきても不思議はない。

取得した不動産をテコに、さらに、それを担保に資金を借り入れ、次々と新たな不動産を
獲得していく、という資産形成が盛んに行われるようになった。不動産価格の上昇と連動して、
株式市場にも多額の資金が流れ込んだ。

だが、冷静に考えてほしい。これらの資金の多くは借り入れに頼っているのである。表面的
には、資産は増えるものの、一転して、市場の風向きが逆向きになった場合、どうなるのか。
投下資金が大きければ大きいほど、多くの借金を抱え返済不能に陥ることを、バブル崩壊を
経験してきた日本人の多くは理解できるであろう。


■バブル崩壊の引き金

土地の高騰、投機、地上げは社会問題となった。年収の数倍もの住宅価格は、サラリーマン
の夢を奪い、持てるものと持たざるものとの格差を生じさせた。

このような状況下で、政府・日銀は次の対策を講じた。1989年5月には、公定歩合引き上げが
行われ、1990年4月からは、土地融資に対する総量規制、2年遅れて1992年4月からは、
土地税制改革として、地価税の創設、譲渡益課税の強化、土地評価の適正化が行われた。

こうした一連の対策、規制強化がその後の「バブル崩壊」に繋がる決定的な出来事であったと
いわれている。


■予断を許さない中国政府の動き

いかがであろうか。性質は異なるが、現在の中国が辿ろうとしている流れに思えてこない
だろうか。

中国には、多くの日本企業が進出している。それは、日本の銀行からの融資と一体になった
ものである。そして、その設備投資は、中国経済が長期的に順調に伸びていくであろうこと
を前提にして行われている。

日本のように、中国が政府の引き締め政策をきっかけに、これまでの好循環が、一気に悪循環
へと変わってしまう危険性は高い。

つまり、株式市場、不動産市場の崩壊により、銀行の不良債権の増加、融資金を投機目的に
費消していた企業および個人の負債増大、一般庶民の消費減少などの経済悪化へと進展し
かねない。

消費が縮小すると、企業の過剰設備、過剰雇用問題が表面化し、レイオフを断行せざるを
えなくなる。そのとき、中国には社会不安が広がる。

反日感情の強い中国労働者の日本企業に対するバッシングやストライキが起こった場合、
経営の舵取りは極めて難しくなる。


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