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何から始める?国家ブランド戦略

(記事要約)
2007/2/22 IL GAZZETTINO(北東イタリアの地方紙大手。今年120周年目を迎える)より

イタリアを表すロゴマークが決まった。往年の観光王国の座を奪還するための第一歩だ。ロゴは、赤と黒2色でできたiと緑色のTの2字からなるシンプルなもの。ルテッリ文化相は、「70年代に外国人観光客数がトップだったのに、イタリアはいまや5位に甘んじている」と言う。そして、「街や企業が好き勝手に動くのではなくて、一枚岩になって観光を盛り上げていくべき」とも。官民挙げてのキャンペーンで観光業は盛り上がるのか。また、観光にとどまらず「イタリア」ブランドの価値をあげる一助となるのか。

参考 : http://www.italia.it/
キャンペーンと同時に立ち上がった観光サイト。ロゴも見える。 


(解説)

外国人観光客が最も訪れる国はフランスで、年間75百万人。イタリアは37百万人で5番目。順位よりも、観光客の数がライバル・フランスを訪れるそれの半分にも満たないことの方が痛い。「ナゼだ!」。そう思うイタリア人は多いはず。

一丸となって何かを成し遂げるのがあまり得意でなさそうな国ではあるものの、「イタリア」ブランドを確立していこう、という政府の方針は、時宜にかなっていると思う。観光を突破口にしたい、ということだろう。

さて日本。

海外で乱立する日本食レストランから、ホンモノを選別しよう、という動きがあると聞く。日本食とは呼べない、現地の日本食の酷さを体験としている身としては、動きそのものには賛成したい。しかし日本ブランドの保護という大きな戦略があってのことなのかどうか、には疑問を持たざるを得ない。

一例をあげてみる。世界で放映されるアニメの6割は日本製だそうだ。イタリアでは8割に届くだろう。しかし、放映権を手に入れた局によっては、アニメの扱いはかなりひどい。日本の製作者はこのことを知っているだろうか。

昨年の秋から放映され、キャラクターグッズもすでに売り出されている「ナルト」。MEDIASETというテレビ局で週5回、午後1時40分から放映されていた。ところが2月はじめ、104話まで放映された後、突然第1話に戻って放映されだした。更に2週間後、週5回の放映回数は3回になった。105話以降がいつ放映されるのか、明らかにはされていない。

視聴者を無視した放映方法だと思うのだが、それだけではない。初回からオリジナルの主題歌はない。あるのは手を抜いて作ったとしか思えないような主題歌だ。

視聴者はどう感じているのか。反応が知りたくてアニメ関連の掲示板をのぞいてみた。局の好き勝手し放題は「ナルト」に限ったことではないらしい。掲示板は、アニメファンの怒りと諦めで一杯だった。

日本のアニメから日本文化に興味を持ち始める若者は多い。コスプレ大会は年を追うごとに賑わい、日本のアニメの主題歌だけを演奏するカバーバンドもあちこちに存在する。

もしアニメの主題歌がオリジナルの日本のものだったら、日本の音楽コンテンツの海外進出の足がかりになるはずだ。じわじわと流行っていってキャラクターグッズが末永く売れるためには、週5回よりも週1回の放映の方がいいだろう。

日本のブランド価値をもっと高めたいなら、売られていったコンテンツがどう扱われているかチェックするのも必要だと思う。「放映スケジュールは計画的に。途中で切って初回に戻してはいけません。主題歌はオリジナルでヨロシク」。日本の製作者側は、このぐらい強気でもいいのではないか。少なくともイタリアの視聴者には喜ばれる。そしてこの視聴者は将来、日本語を学び日本を観光したい、と考えるようになるかもしれない。

日本のアニメは、「日本」を表すロゴこそ持たないけれど、習俗や歴史や日本人の世界観がぎっしり詰まった福袋だ。その福袋の現在の市場価格が、数十年後に宝の山に化ける可能性がある。化けたとき、日本にとっても福袋となる。これはあなどれない。



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