ハイブリッド車ブームの奥にあるトレンド
米国在住ジャーナリスト
<記事要約>
21世紀に入り、米国のハイブリッド車市場は倍々ゲームを続け、今では米国の自動車市場の1.5%を占めるまでに成長した。特に、昨年米国を襲ったガソリン価格高騰の波が強力な追い風となり、ハイブリッドカー販売台数はついに25万4千台に達した。これは2005年の20万台から27%の伸び。
しかし、販売台数の伸び率で見ると2000年以来、2番目に低い数字である。ハイブリッドカーに与えられていた税制優遇の一部が撤廃されたことなどが原因とされる。デトロイトのシンクタンク、R.L. Polk & Co.は、米国のハイブリッドカーブームがとりあえず一段落したとの見方を示した。
2月27日ロサンゼルス・タイムズ経済面より
<解説>
27%の伸びにも関わらず減速感というのもすごい話だが、それだけハイブリッド車浸透の勢いが凄まじかったという事だろう。米国に住み、ここ数年のハイブリッド車ブームを肌で感じてきた身としては、少々マニアックなまでの熱狂だったという思いさえある。それは、単なる低燃費という以上のブームだった。
3年ほど前、米国ホンダを取材した際、興味深い話を聞いた。ハイブリッドカーのユーザー像の主なセグメントは20代から30代の専門職、いわゆるヤッピーと呼ばれる人々だという。比較的収入が高いこれらの層がメインユーザーだと聞き、少々意外に感じたのを覚えている。少なくともガソリン高騰によって生活が逼迫する人々ではないからだ。
その後、周囲のアメリカ人の行動を見るにつけ、ハイブリッド車ブームの奥にあるトレンドが見えてきた。
ハイブリッドカーは、燃費の良さ、そして環境問題に貢献する事への満足感以上に、ある種のスタイルを提供してくれる。端的に言えば、環境問題に関心を持っているという事を周囲にアピールできるのだ。低燃費の恩恵はもちろんだが、こうした側面がハイブリッド車の大きな魅力になっていることは間違いない。
実際にハイブリッドカーを買い求めた知人を見ると、会計士や金融アナリストなど、いわゆるハイプロファイルな職業に就いている人がかなり多い事に気づいた。BMWからの乗り換え組さえいた。高級ゴルフコースの駐車場では、鈴なりになっているベンツよりもアコードハイブリッドに乗る方が周囲と差別化できるのだ。ハイブリッドカーはある意味で「個性とステイタスを感じさせる高級車」であった。
R.L. Polk & Co.の調査は、市場の減速を表すものではなく、ハイブリッド車マーケットが新しい局面に入ったことを示しているのではないだろうか。現在のところ、ガソリン高騰で本当に生活を脅かされている層にとって、ハイブリッドカーは高値の華だ。今後販売台数が伸び、コストが下がれば、潜在的なユーザー層は更に掘り起こされるだろう。
実用性とファッションが入り混じった第一期のブームが一段落し、本当の意味での資源節約へ、ハイブリッドの新時代が始まるのはこれからだ。
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