女子高生がヴァギナの話で停学に
米国在住ジャーナリスト
(記事要約)
3月7日、ニューヨーク州クロス・リバーにあるジョン・ジェイ高校の女生徒3名(16歳)は、学校主催の集会で「ヴァギナ」に関する詩を朗読したことから、1日間の停学処分を受けた。
問題の詩は、1996年、作家イヴ・エンスラーがオフ・ブロードウェイで上演した朗読劇「ヴァギナ・モノローグス」からの一節。女性を讃えた同朗読劇は、「ヴァギナ」という言葉が何度も登場することから、これまでにも議論の対象となっていた。
学校側は、公共のイベントで「ヴァギナ」と言うのは不適切であると判断し、事前に、女生徒3名に、朗読をやめるか「ヴァギナ」という言葉を削除して朗読するかの選択肢を与えた。これに対し、女生徒3名はあるがままに詩を朗読。指導に反抗したかどで処分が下された。
ひとたび事件が報道されると、この処分が適切か否かは物議をかもした。番組には処分を受けた女生徒3名、原作者イヴ・エンスラー、地元教育委員会代表ピーター・ブレスリンが出演し、それぞれの立場を語った。
2007/3/9/NBC TODAYより(米国テレビ4大ネットワークの1つNBC局、朝のワイドショー)
番組リンク: http://today.msnbc.msn.com/id/17535427/
(解説)
女生徒の1人は、「ヴァギナ」はほとんどの家庭で使われる重要な言葉で、取り締まられるべきではないと主張する。原作者エンスラー女史も「ヴァギナは身体の一部。ひじ、手と同じ。それなのにこんな問題になる世の中がどうかしている」と嘆く。
そもそも「ヴァギナ・モノローグス」は女性であることを謳歌する主旨で作られた作品。女生徒たちが朗読した一節は「私のミニスカートは女性軍開放の旗。私は、このストリート、あらゆるストリートで我がヴァギナ国を宣言する」と、なんらエロチックな脈絡ではなかった。
教育委員会ブレスリン氏も「私自身なんら問題を感じない」と発言する。実際3人の女生徒の処分は、後日、一旦保留となった。
これは「学校が言論の自由を弾圧」といった深刻な教育問題ではない。せいぜい保守的な学校とリベラルな生徒の間で小競り合いが起こった程度に見る方が賢明だ。
それでも痛快なのは、朝っぱらから「ヴァギナ」を議論したワイドショー。エンスラー女史は、「レイプ、戦争、プルトニウム」、「ヴァギナ」よりもよほど不穏な言葉が普通に使われていると反論する。詭弁にも聞こえるが、論法としては面白い。
その集会ではFワード(ファック)を含む発言もあったというが、教育上は、よほどそちらの方が不適切だ。「ヴァギナ」はそもそも解剖学用語であり、日本で言う「膣」に限りなく近い。小学校ならともかく、今回のような高等教育の場面では、特に制限する言葉ではないだろう。
ちなみに朗読劇「ヴァギナ・モノローグス」は2006年夏、宮本亜門演出、内田春菊、東ちづる、野沢直子主演で日本でも上演された。
最後に、英語で「vagina=ヴァギナ」は「ヴァジャイナ」と発音する。「ヴ」で下唇をかみ、「ジャイ」の部分にアクセントをつけること、お忘れなく。
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