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YouTube活用を模索する米国のコンテンツホルダー

  • ジャーナリスト

■YouTubeの驚異的な浸透力

動画投稿サイトYouTubeとコンテンツホルダーの間で著作権侵害を巡るやり取が続く一方、こうした動画投稿サイトをプロモーションの場として活用しようとする積極的な動きも米国にはある。ただ、効果は薄いとして最近になって掲載コンテンツの削除要求をした巨大メディアもあるなど、両者をつなぐはっきりとした方向性はまだ見えていない。

誰でも簡単に動画を投稿してオンライン上で共有できるYouTubeが、シリコンバレーのベンチャー企業としてサービスを始めたのは2005年12月。経過した時間はまだ一年と少しだが、知名度は飛躍的に上がり、ネットの世界で一二を争う有名なサイトとなった。Googleに買収されたのはご存知のとおりだ。

それに伴い表面化しているのが著作権者に無断での動画アップロード。映像コンテンツをパソコンに取り込む技術が発達したため、テレビ番組、プロモーションビデオ、テレビCMなどが一般の人から次々に投稿される事例が後を絶たない。YouTubeでは著作権侵害をしているコンテンツの掲載を禁止し、著作権者から要求があり次第削除しているが、数の多さに実態が追いついていない状態だ。


■TV局のYouTube利用

テレビ局やレコード会社などのコンテンツホルダーは、著作権侵害となるこうした動きに 反発しているが、一方で宣伝効果があると見込んでいるのも事実。人気コンテンツになるとあっという間に100万件近くアクセスされることもあり、コンテンツを無料宣伝できるからだ。YouTubeへの世界中からのアクセス数は毎日1億件ともいわれているだけに、その影響力を利用しようとの思惑がある。 

3大ネットテレビ局も素早く反応し、まずNBCが昨年6月にYouTubeとの間で戦略パートナーシップに関する提携関係を結んだ。YouTube内にNBC専用コーナーを設け、番組宣伝に役立つようなビデオクリップを配信。YouTubeの配信枠を買い上げる見返りにバナー広告を出稿する。

プロモーションツールとしての使い道はいろいろある。これから放送される番組の予告編やオリジナルコンテンツの配信に加え、視聴者から番組宣伝用ビデオをYouTube上で募り、優秀作はテレビでも放送することもできる。

CBSも昨年10月からYouTube上で「CBS Brand Channel」を開始し、番組プロモーションを行っている。同社が著作権を持つニュース、スポーツ、エンタテイメントなどの番組を配信して視聴者を引き付ける試み。さらに一般公募した15秒動画のテレビ放送も実施した。レズリー・ムーンバスCBS社長によると、CBS Brand Channelは開始後3ヵ月で750億ページビューを達成、相乗効果でテレビの視聴率も上昇したという。

テレビ番組をインターネット上で見ている視聴者は50%を超えたといわれ、テレビ局はいままでのやり方で視聴率を稼ぐことに限界を感じ始めている。視聴者の利用するメディアが多様化するなか、同社では人気番組をインターネット、携帯電話、iTunes Storeなどのさまざまな形態で配信。ただ流すだけではなく、番組によってはクイズを交えたり視聴者がカメラアングルを変更できたりとインタラクティブ性を追求しているところだ。


■YouTubeからの対価徴収を目論むコンテンツホルダー

一方、YouTubeのプロモーション媒体としての利用価値を疑問視する見方もある。MTVやパラマウント映画など世界中に120を超えるメディアネットワークを抱えるViacomは今月、無断掲載されている同社のコンテンツ約10万本の削除要求をYouTubeに対して行った。

YouTubeに掲載される話題性と引き換えに、著作権保護を行わないのは本質的でないとの考えからだ。実際にはYouTubeに掲載されることで発生する宣伝効果と、著作権を守れないことで生じる損失とを秤にかけた結果だともいわれる。

Viacomは傘下企業の番組全体が配信されるようなケースは別として、短いビデオクリップの場合には基本的に違法掲載を黙認してきた。つまり180度方針を転換したことになる。同社が著作権を持ちYouTube上に無断掲載されたコンテンツは、現在までに12億回視聴されているという。

Viacomの狙いは、YouTubeとの間でコンテンツ配信に関する商業契約を結ぶことにある。コンテンツが著作権者の了解を得ないまま投稿されて視聴可能な状態になっている以上は削除するのが原則で、掲載される場合にはそこから対価を徴収すべきとの考えだ。

対するYouTubeでは、サイトで得た広告収入をコンテンツホルダーと分配する計画もあり、デジタル指紋技術などの技術検討を重ねている。コンテンツを制作するために費やした労力やコストを考慮せず、ただ掲載することで視聴者を集めて収益を上げているとの批判をかわすためだ。


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