若者を3年でやめさせないための経営戦略
ジャーナリスト
転職するのは当たり前という風潮がある。かつてネガティブに捉えられていた“転職”という行為も、現在ではキャリア形成やスキルアップという言葉と併用されれば、ポジティブな行為として受け止められるようになった。
実際、転職のマーケットは、ここ10数年で事業者数も売上も10倍以上に伸び、現在も成長を続けている。
リクルートワークス研究所によれば、2008年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象にした民間企業の求人数は前年比13%増の93万3000人とバブル期を上回り、17年ぶりに過去最多記録を更新した。一方の求職者は同0.1%減の43万7000人と微減しており、求職者にとって就職・転職の売り手市場化は加速するばかりというのだ。まさに大転職時代である。
中でも伸びているのが、社会人になってから1から3年目くらいまでの若手をターゲットにした“第二新卒者”のマーケットだ。最近の若者は、 社会人デビューしてからの動きが激しく、そのマーケットは新卒者市場と同等、もしくはそれを上回る勢いがあるのだ。
新卒入社の社員が3年以内に辞めてしまう割合は30%以上といわれているので、社会人1から3年目の人をターゲットにすれば、だいたい新卒と同等規模のマーケットがあることは理解できるだろう。
しかも、一度はどこかの企業で社会人としてのトレーニングを受けているので、新卒入社者よりも教育する負担は軽くて済む。その上、程度の差こそあれ業務知識も身に付いているのだから、同じマーケットであれば、第二新卒の転職希望者は企業にとって魅力的だ。
しかし、そういった状況が同時に企業を悩ませている。せっかく教育した自社の社員も定着してくれないのだ。若手社員の人員確保のために、企業は経営戦略上どのような施策を打つべきなのか。
大手企業の多くは、若手社員のモチベーションのコントロールに気を遣っている。ある企業は、入社時の新人研修だけでなく、組織の雰囲気に馴染んでくる入社半年後に、現状と初心を比較させる研修。2年目には、スキルアップ中心の研修を行い、スキルが身に付いてくる3年目には、マインド重視の研修に注力する。
中には、意識的に上司が部下をランチに誘うように働きかけ、コミュニケーションを促進させている企業もある。
社員が楽しく働ける企業としてよく挙げられるのがGoogleだ。同社の社員は、仕事の時間の20%は、自分の興味がある分野に費やしていいということになっているのだ。会社のリソースを利用して、自分の研究に没頭できることが社内でのモチベーションを高め、そこで生み出されるアイデアや成果は、仕事にも反映されるという好循環が実現しているのだ。
私が経営者だったら何をするだろうか。Googleをヒントにするならば、若手が会社の中で自立的に仕事に向き合える仕組みづくりのように思う。
若者を3年間以上、自社に留める施策を考えてみた…
新卒者の入社時に、新卒入社者全員の共有財産として、ビジネスに運用するための一定程度大きな金額を与えるのはどうか。金額の算出は、(新卒者の採用単価×採用人数×0.7)くらいでどうだろうか。
1000名規模のメーカーが採用する新卒入社者が30名だったとして、採用単価が100万円だとすれば、2100万円を30名に運用させるプロジェクトを、入社式と同時に発足させるのだ。
ルールとしては、以下のような感じを想定している。
・運用方法は比較的自由(投資でもいいし、ビジネスでもいい)
・3年目以降の運用益の50%の配分は自由
・運用がうまく行かない場合は、運用が成功した年代の社員にコンサルティングを依頼することもできる
・経営層はアドバイザーとして参画できるが、舵取りは禁止
・元本の50%を割ったらプロジェクトは強制終了
経営層は、各年代の運用プロジェクトをウォッチしてコア業務に支障をきたさないようにマネジメントしていけばいいのだ。なお、退職時には運用益の分配の権利は消滅する。
社員にとっては、ビジネスが学べる上に、成功すれば富を手にすることもできるというメリットがあるうえ、社内コミュニケーションの促進にもつながるだろう。失敗すればプロジェクトは消滅し、各自社内就職活動をして、ほかの年代のプロジェクトに入れてもらうなどの救済措置も考えられる。
強制的に社内ベンチャーを立ち上げさせるようなイメージだが、離職率の低下を見込んで、その分の採用予算を社員に運用させるのだ。失敗しても上記のルールであれば、採用予算の35%が損失となる計算なので、離職率を65%に抑えられれば現状とトントンである。
どうだろう、こんな筆者の思いつきのような施策を試してくれる企業はないだろうか。
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