Entry

自国市場の開拓よりも外国に目を向けるインド企業の事情とは?

●建設ラッシュのビル建設現場でサリーのまま仕事をする
 下層の女性たち

<記事要約>

「外国の方が簡単だ」というタイトルで、諸外国の企業が、急成長を続けるインドへ進出する中、インドの会社が揃いも揃って外国に目を向けている原因についての記事があった。

皮肉にも「昨今のインドの会社にとっては同じような投資額を使う場合でも、自国の市場を開拓するよりも外国へ行った方が、それに見合った利益がよっぽど簡単に得られる」からだそうだ。

その原因はというと、インドではひとたび会社が自国でプロジェクトの始動や拡大をしようとすると、あまりにも様々な障害にぶつかるからだという。

障害とは時代錯誤の労働法、無関心の官僚達、気が遠くなるほど長引くあまたの事務手続き、インフラの不整備などであり、特に最も大きなハードルは土地の獲得。そんな事にいちいち煩わされ足止めをくらっているうちにプロジェクトはタイムアウトになってしまうだけ。

だったらさっさと代替戦略(つまり海外へ目を向ける)を探した方が時間と金の節約になる上に、よほど展望が明るいというわけだ。India.Inc社は今年に入っての2ヶ月で40ビリオンドルに値する取引を行ったが、その半分が外国でのM&Aにおいてだそうである。

(インドのビジネス雑誌、「Business-Today」3月下旬版 から)


<解説>

インドの発展は確かに猛スピードと言っても過言ではない。出現しまくるショッピングモールは多すぎて把握すら追いつかず、不動産は急高騰。

だが・・・、それはあくまでも都市部での話なのである。

ニューデリーから外へ、試しに2時間、車を走らせて見るといい。そこにはヘタすると100年前から変わっていないと思われる農村風景が展開されており、ア然としてしまう他ない。

国土の中の秘境と言われるようなエリアに行けば、そのようなシーンが人口のほんの一握りの人数によって展開されている国はあるだろう。だがインドの場合は、都市部エリアを抜けた途端にデコボコになる道路を、時速40キロ程で走っての2時間弱で充分。

村ともなれば「どこから来た?」「ジャパンからです」「そこはバスで行けるのか?」そんな会話も大げさではない。経済格差も、都市部の新中産階級と人口の大半を占める(←これもポイント)農村部の人々の間では10倍以上はあるのではなかろうか。

貧富、身分、教育などあらゆる「格差」が天と地ほどの開きのあるインドでは、言うなれば「国民は同じ場所を共有しつつもそれぞれは、格差ごとに全く別のレイヤーで生きている」といった感じなのである。

こんな風で大丈夫なの? 車の窓に展開される、時空の旅のような景色を見ながら私はよく思っていた。

だが、ここは「あらゆる矛盾を孕みつつもトータルではなんとかなってしまう」と形容される事も多い独特な国。だから「インドなりの、何か驚くような展開をみせるのかもしれない」という根拠のあるようなないようなヘンな期待もあり、あえて「大丈夫なの?」という疑問についてはあまり考えない事にしていた。

だが、やはり急激過ぎる発展と、発展が全体(全レイヤー)に及ぶのを妨げるあらゆる旧体質の狭間で問題は確実に起きているのだ。長い間「その国たるもの」を維持してきた「良きもの」だったはずの物事も前進する上では足かせになるというのは、どの国の発展段階でも必ずぶつかる問題だと思うが、やはりインドはあらゆる面において極端だと思われる。

ましてや、古くからの体制や因習、そういったものに格別ガンコな国民性。

例えば法律では否定されているが実際にはれっきとして存在している、インドの代名詞とも言えそうなカースト制度。富裕階級がいい思いをしてきた背景にはカースト制度が大いに関わっているが、これより先に前進するにはそれがネックにもなってきたという抜き差しならない非常事態。

TATA SonsのExecutive Directorも「私たちは整備もされていないデコボコ道をフェラーリで走っているようなもの。成長はしているが、本来あるべきスピードでない」と言っている。

だが、私のようなそんじょそこらの外国人にも一目でわかってしまう時代錯誤のシステムと地域格差の現状も、”フェラーリに相応しい環境”が整うのはずっと先の話なのか、近い将来なのかという見通しの話となると、インドという国が独特すぎて、そんじょそこらの外国人にはわからない。

様子を見るしかないようだ。

※記事によると、外国から進出してきた企業もインドでの土地確保に苦しめられており、現在ヒーロー・ホンダ(ホンダの、インドでの合併会社)もウッタランチャル州でこの問題にぶちあたっているそうだ。



  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/120