＜記事要約＞

フランス人でも、イタリアン人でも、スペイン人でもなく、なんと、イギリス人が、世界で最も人気のあるトレンド・シェフになった。その人の名は、ジェイミー･オリバー。

ジェイミー･オリバーは、ほかに類を見ないほど世界的に成功。地元イギリスでは、「Fifteen」というレストランを作って、失業したり冷遇されている若者に料理を教え、シェフとして働けるようにした。｢Feed me Better｣という学校給食改善キャンペーンも、推進した。

このイギリスのカリスマシェフが、スイスのパートナーとして、コープを選んだ。コープ大型店、コープ・シティデパート、コープ・ウェブサイトで、ジェイミー･オリバーブランド60種を販売する。商品の種類は、徐々に増やしていく。

2007/3/20　　Coopzeitungより　　(スーパー、コープの情報紙。120ページで、情報満載。毎週発行。店頭で入手ほか、登録すれば郵送も可)

＜解説＞　

コープは、スイスで2番目に大きいスーパーマーケット。最大のスーパー、ミグロ(Migros)とコープの両者で、スイスの流通市場の、実に70％を占めている。

コープグループは、傘下の商店やホテル、ガソリンスタンドなどを合わせて、2006年末の時点で、国内に1546店を構える。

チーズの量り売り、オーガニックフードの種類が豊富、毎購入時にためたポイントで好きな製品やチケットと交換できるなど、独自の路線で差異化を図っている。コープは、ミグロに比べると全体的に高め。そのため、｢Prix　Garantie｣というピンク色のマークを付けたお買い得商品も売り始めている。このマークの商品は、200以上もある。

コープは、ほかにも、「Betty Bossi」マークの商品などで、工夫を重ねている。「Betty Bossi」は、年間3000人以上が受講する料理教室を開いたり、料理本を出版したりして、スイスでは有名だ。

こうして、2006年はグループ売り上げを4.5％伸ばした。よほどうれしかったのか、これを祝って、今年1月に、現社員そして前社員にコープ商品券を配布したそうだ。

では、好調なコープが、なぜ、今、“ジェイミー･オリバー”商品を売り出すのか。

答えは、ディスカウントショップの進出。ドイツの安いスーパー、アルディ(Aｌdi)が、じわじわと店舗を増やしているからだ。

数年前までは、休日、スイスの人々が、スイスとドイツの国境沿いにあるアルディに押し寄せていた。数人の知人も、何時間もかけて、わざわざドイツのアルディまで行っていると聞いたときは、何もそこまで・・・と思った。しかし、専門家の分析によると、年間50?60万円も節約できるというから、納得もいく。

と、先月、私の近所にもアルディがオープンした。

アルディは、確かに安い。しかし、やはり品質は劣る。試しに買ってみたクロワッサンは、サクサク感がゼロ、ドレッシングに至っては、まずくて食べられなかった。それでも、ミグロやコープにとって、アルディは商売がたき。それに、フランス系のカルフール(Carｒefour)などもあるし、ドイツのリドゥル(Lidl)もスイス進出を狙っている。

また、コープが危惧しているのは、アルディだけではないはず。今年1月、ミグロが、流通業第3位のデナー（Denner）と吸収合併したのだ。デナーは、少し前にピック・ペイ（pick pay）というチェーン店と合併していたので、ミグロは益々大きくなった。
 
さらに、スイスのスーパーの競争激化を促すものがある。『カー・ティップ（K-Tipp）』という消費者情報誌だ。カー・ティップは、ビスケットからドライヤーまで、いろいろな店のあらゆる商品の品質を抜き打ちテスト・比較する。スーパーの価格比較もお馴染みだ。それらの詳細な結果が、100万人の読者に知れ渡る。

でも、日本のスーパー･コンビニ商戦に比べたら、スイスはまだまだ。さて、ジェイミー･オリバーブランドは、どれほどの好結果をもたらすだろうか。