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低迷するNBC局は即興コントで勝負

米国テレビ・ネットワークNBC局は、4月9日より新番組としてコメディ・ショウ『Thank God, You're Here』を立ち上げる。最初の放送は月曜9時から2時間。翌週月曜の9時からもう1時間放送した後、18日より水曜8時から1時間のレギュラー枠で放送される。オーストラリアの同名人気番組(2006年4月放送開始)のアメリカ版である。

同番組では週替わりで4人のゲストが登場し、それぞれに与えられたシチュエーションで即興コントを披露する。ゲストは司会者に紹介された後、楽屋でコスチュームに着替える。しかし舞台のドアをあけるまでは、どのような設定か知らされない。審査員デイヴ・フォーリー(ベテランのコメディアン)が即興コントの出来についてコメント。最後に誰が一番面白かったかを決定する。

NBC局はプライムタイム(午後8時から11時)番組の予算カットを強いられている。このような番組は、予算カットに貢献するかもしれない。ただし、即興の面白さだけでどれだけ視聴者を引っ張れるかが課題だ。

(記事要約)2007/4/9/The Hollywood Reporter(1930年創刊、米国を代表するエンタテインメント業界紙)


●『となりのサインフェルド』の相棒役で知られる俳優ジェイソン・アレキサンダーがゲストの回。「宇宙船のキャプテン」という設定で即興コントに挑む。


(解説)

米国4大ネットワークの1つNBC局はプライムタイムにおける視聴率競争で大苦戦を強いられている。ニールセン調査の視聴率TOP20には、法廷ドラマ『Law & Order』ゲームショウ『DEAL OR NO DEAL』(日本では島田紳助 司会『ザ・ディール』)がかろうじて引っかかる程度だ。

現在視聴率上位は、FOX局の人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』、CBS局のドラマ『CSI:科学捜査班』シリーズ、ABC局のコンテスト番組『Dancing with the Stars』など、リアリティ・ショウやドラマがほとんどを占めている。これら人気ジャンルで絶対的なヒット番組を確立できないのが、NBC局低迷の原因の一つだ。

一方、NBC局はコメディ番組に強い。根強い人気がある『サタデー・ナイト・ライブ』、ウィークデイ深夜のトークショー『TONIGHT SHOW』は、今でも同時間帯で他局をしのぐ視聴率(4%強、占拠率約10%)を記録する。

黄金時代には激戦区木曜プライムタイムのコメディ・ドラマ枠に、日本でも馴染みの『フレンズ(1994-2004)』と『ウィル&グレイス(1998-2006)』があった。

かような背景においてNBC局が勝負をかけるのが、即興コントの番組『Thank God, You're Here』。タイトルは「あなたが来てくれて、有難い」という、ゲストが設定舞台に登場する時の決まり文句となっている。

同番組は水曜レギュラーの番組にもかかわらず、月曜『DEAL OR NO DEAL』の後枠でお披露目となる。高視聴率番組の視聴者を引っ張り込むためだ。抱き合わせのような番組編成は、アメリカで新番組を立ち上げるときによくある手法だ。

気になる第一回放送の視聴率は5.8%。裏番組がCBS『Two and a Half Man』8.4%、FOX『24』 7.2%、ABC『Dancing with the Stars』12.2%とすでに固定ファンを確立した強力番組ばかりだけに、まずまずの数字と言える。

目下ゲストは、テレビで馴染みの脇役系コメディアン(日本でいう高橋克実ぐらい)が中心。人気よりも役者としての力量で見せている感じだ。サタデー・ナイト・ライブばりにハリウッド・スターや有名ミュージシャンが続々登場すればさらに盛り上がるのは必至だが、いきなりそうはいかない懐事情はあるだろう。

ちなみにNBC局(NBCユニバーサル)は、番組宣伝に最もYouTubeを活用するネットワークだ。2006年夏以来、コメディ系番組中心に、多くのプロモーション映像を提供している。

●NBC局提供YouTube映像のページへのリンク:
http://www.youtube.com/profile?user=NBC
そんなNBCも、この夏FOX局のニュース・コープと共同でYouTubeに対抗する新しい動画サイトを立ち上げる意向を発表したばかり。今後の動向に注目したい。


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