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お笑い界を席巻する吉本興業は磐石か

空前のお笑いブームが、今年も続きそうだ。しかし、テレビに出演するお笑い芸人のほとんどは、吉本興業所属である。ただし、この寡占状態が、ブームの終焉を早めるのではないかと指摘する声もある。

その証拠として4月28日-30日まで千葉県の幕張メッセで行われる『ライブスタンド07』のチケットは、3月下旬の時点で多くが売れ残っている。このチケットを売るために、吉本興業は、所属タレントの中堅クラス(次長課長、タカアンドトシなど)が出演する番組で、ライブの宣伝を強制的に行わせているらしい。

また、テレビだけに頼らず、「ルミネtheよしもと」、「ヨシモト∞ホール」や、インターネット番組配信「ファンダンゴ」の設立などを積極的に行っているが、設備投資などの資金負担が大きいため、投資金額を効率的に回収しなければ、経営の足かせになりかねない。

一つの芸能プロダクションが、ブームを牽引することは危険だとテレビ局は認識していても、所属タレント約800人の吉本興業重視の方針は崩せないのが現状だ。つまり、芸人の使い捨てが容易なのである。 

そんな中、意外に健闘しているのがサンミュージックである。音楽プロダクションのお笑い部門は歴史が浅いが、ダンディ坂野、ヒロシを一発屋で終わらせたことを教訓に、カンニング竹山を見事にブレイクさせた。

相方の中島は、昨年12月に逝去したが、竹山はピンでも孤軍奮闘し、キレ芸から本を出版するなどして文化人芸人の領域まで幅を広げた。

他にも北陽、おぎやはぎ、アンジャッシュなどを率いる人力舎もあるが、この群雄割拠の中では、4月からのテレビ露出がどのタレントも少なくなってしまった。

お笑いブームの火付け役として、日本テレビの「エンタの神様」が挙げられる。吉本興業もこの番組がなければ、オリエンタルラジオなど多くの若手を売り出すことができなかった。

しかし、この番組は、人気が出ると毎週出演させられるために、ネタ切れが起きる可能性が常にある。そこで、放送作家が作ったネタを芸人がコントなどで使うことが多く、お笑い芸人の底の浅さがすぐに露呈してしまう原因ともなっている。

吉本興業が行っているM-1グランプリやR-1グランプリの優勝者であっても、自動的に売れる時代は終わった。ますだおかだ、アンタッチャブルは、吉本興業以外の優勝者で奮闘しているが、吉本興業所属のフットボールアワーなどは東京での露出は減ってきているし、ブラックマヨネーズも関東のノリに馴染むのに時間が掛かりそうで、露出が増えない。

チュートリアルは、イケメンの徳井に負けじとブサ男の福田がM-1のために歯を矯正し、ホワイトニングまでして、その涙ぐましい努力の甲斐あって、優勝し、評価も過去のM-1の中で一番高かった。それでも、福田がテレビ慣れしておらず、大ブレイクの予感はない。

一方で、オリエンタルラジオが、芸歴わずか3年目にして冠番組をゴールデンタイムで持った。が、底の浅さを露呈すれば、秋の番組改編期には消えていくだろう。

このようなお笑い戦国時代において、太田プロは、タレントを薄利多売せず、劇団ひとりや土田晃之などを、ひな壇芸人として売り出し、メインにはなれないが、日本テレビの「踊るさんま御殿」など、大御所芸人の番組で、欠かせない芸人としての地位を確立させた。

やはり、お笑いブーム以後に残る芸人は、本当に面白い芸を見せ続けられる芸人か、大御所とのコネクションが強く、主役を立てるトークができる芸人である。吉本興業という巨大企業に正面から立ち向かおうとせず、二番目のポジション取りを狙うのが、一過性のブームにおいて芸人を殺さないための一番の生き残り戦術ではないだろうか。


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