日本でも放送と通信の融合が議論されている。しかし、米国ではすでにそれは現実のものとなりつつあり、しかも急速に広がりつつある。ネット配信プラットフォームを提供するJoost社の動きが面白い。P2Pビジネスの世界的先駆者であるSkype（スカイプ）創業者の二人が立ち上げたベンチャーである。

Skype（スカイプ）をeBayに高額で売った後、彼らは今度は音声ではなく動画の分野での試みに挑戦した。すでに米国の大手企業との提携のニュースが続いている。それらの一つはパラマウント映画やＭＴＶなどを擁するViacom（バイアコム）との提携である。Viacom（バイアコム）はコンテンツを提供し、Joostは広告収入を折半する。

現在Joostはベータ版を披露し、モニターを募集している。私も今年の初めに申し込んだが、順番待ちでウェイトリストに載せられていた。最近ベータ版のソフトを入手出来、早速試してみたが、凄い。本当にまるでテレビ局である。それも２４時間、自分の好きな時間に、好きな場所で見られる放送である。

また、米国四大テレビ局の一つであるCBSもビデオクリップや映画全編を無料配信する、映像配信ネットワーク「CBS Interactive Audience Network」を発表した。同テレビ局はJoostの他にもBrightcove、Veoh Networks、Sling Media、AOL、Microsoft、CNET Networksなどのネット配信会社とも提携を結んでいる。

同社の看板番組であるアクション・ドラマやトーク・ショー、更にはニュースやスポーツ番組などがネット経由で楽しめる。ネット配信でも広告収入を配信業者と折半する事により、ネット視聴者にも無料で番組を提供出来る。放送と通信の融合への確かな第一歩への動きである。

タイムスケジュールが決まっている従来のテレビ放送に比べ、通信を活かしたネット配信には事実上時間の制約がない。視聴者が好きな時間に好きなスケジュールで、そして好きな場所で楽しめる。番組構成選択権が放送局ではなく、視聴者の手に渡ることになる。

現在のネット配信はパソコンのモニターで視聴するために、画面の大きさが限られる。しかしその問題の解決も近い。アップル社のITVや日本のGyao(ギャオ)のギャオプラスなど、ネットの映像を通常の大型テレビ画面で楽しむ事はすでに始まっている。ただし、それは個別の企業が保有する映像だけに限られている。

しかし、アップル社やGyao(ギャオ)の番組だけにこだわらず、ありとあらゆるネット上の動画配信を、ソファに座ってのんびりと居間のホームシアターで楽しむ方法が生まれつつある。

それはカリフォルニアにあるクァルティクス（http://www.quartics.com）が開発した最新技術である。パソコンに取り入れた動画がワイヤレスで大型テレビ画面に映し出される。

同社はどのテレビやパソコンにも対応した汎用の半導体を開発した。

その半導体が世界中のテレビに組み込まれる事によって、将来は、一般家庭で通信と放送が融合する状況が生まれる。世界中からの映像や情報が外部との交流頭脳センターとなった大型テレビを通じて家庭の居間や職場の会議室などで活用される日も遠くない。

●Quartics at CONVERGE event during NAB

NAB（National Association of Broadcast）とは、全米放送事業者協会という団体が
毎年主催している、テレビ局やラジオ局向けの放送機器メーカーなどが一堂に集まる
世界最大の放送機器展のこと。
米ネバダ州ラスベガス（LV）のラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)で
開催される。今年度のNAB2007は、14日※から19日（展示会は16日より）まで開催された。