Entry

投票率8割を超える統一地方選挙2007─中米編─

(記事要約)

統一地方選挙の3週目にあたる4月1日、ベリーズ唯一の国際空港がある村、レイディビルにて村議会議員選挙が行なわれ、野党UDP(統一民主党)が全議席を制した。

野党のプレスリリースによれば、これまで選挙を終えた全国38村議会のうち、21を野党が占め、さらに4つの議会が同党寄りであるという。

ところが、与党PUP(人民統一党)は、野党とは異なった見解を示し、38村議会の内訳が、与党19対野党19のタイ、さらに4つの議会が与党寄りだと主張しているのだ。

いずれにしても、レイディビル村では、野党が与党に3倍の得票差を付けて大勝したのは間違いない。地方選挙は今後も3週間にわたって続く予定だ。

関連記事リンク:2007/04/02 Channel 5 Belizeより(中米ベリーズの全国ネットTV局)
http://www.channel5belize.com/archive_detail_story.php?story_id=18266

(解説)

日本では、長崎市長銃撃事件が大きなニュースになったが、ここベリーズでも、来年(2008年)の国政選挙の前哨戦として、地方選挙が注目を集めている。

ベリーズでの選挙の読み方はいたってシンプルだ。大まかにいえば二大政党制で、2つの政党に注目すればよい。
・PUP 与党、人民統一党。シンボルカラーは青。
・UDP 野党、統一民主党。シンボルカラーは赤。

どちらの政党も政策に大きな違いは感じられず、片方が政権をとれば、片方が批判勢力に回る、といったところ。現在の国政は青い政党が多数派で、したがってPUPが与党ということになる。国務大臣や総理大臣は、全員PUPの議員が占めている。

国政ではPUPが多数派だが、最近の地方選挙では、レイディビル村のように与野党が逆転するという「ねじれ現象」が起きている。現在のPUP政権も、2期10年目に入り、そろそろ国民の不満もたまってきたというところだろうか。

選挙戦は簡単にいえば、青 vs. 赤の戦いだから、候補者の着ているシャツを見るだけで違いがわかる。なんともわかりやすい選挙ではないか。なおベリーズの国旗の色、青と赤も、この二大政党のカラーに基づいている。

選挙時期になると、テレビでも大々的に政党のコマーシャルが流れる。日本ではちょっと考えられないが、相手の政党の「ネガティブ・キャンペーン」まで流れる。

青いシャツ(与党カラー)を着た人物が出ているので、これは与党のCMだろうと思って見ていると、与党が増税をした、その結果ストを招いた、国民が大きな仕打ちを受けた、などといかに彼らの政策がひどいものだったかが報道され、最後に赤い色でUDP(野党)に投票しよう、と締めくくられる。

また、与党(青)候補の顔写真入り看板に、赤いペンキ(野党カラー)がぶちまけられているのもよく見かける。とにかく、熱狂的な政治ファン(?)のこんなやり方に唖然とさせられることが多い。

ベリーズは人口わずか30万人ほどの小さな国で、政治が生活に直結するため国民の政治への関心が高く、投票率も8割を越す。しかし、それにしてもこの雰囲気は政治というより、むしろ阪神ファン vs. 巨人ファンの世界に近い。政策云々ではなく「赤だから赤」「好きだから好きなんだ」という感じがどうしても否めない。

投票日当日、投票所前はアイスクリームの出店なども出て、さながらお祭り気分。候補者たちは投票所入り口に勢ぞろいし、「私に投票してね!」と最後の呼びかけに精を出す。投票者は、そんな人々にもみくちゃにされながら投票所に足を運ぶのだが、日本であれば公職選挙法違反であるこんな光景が何となく微笑ましい。

また、対立候補どうしでも、小さなこの国ではお互いに友達や親戚だったりするから、そんな相手を見つけると笑顔で握手を交わしている。そんな彼らの様子をカメラに収めようとすると、「おっと。こいつと一緒の写真は撮らないでくれよ。オレの政治経歴にキズがつく。わはは」と冗談を飛ばしては仲良く一枚の写真に写っている。
 
即日開票され、選挙結果が判明した翌朝。

地方選挙で負けた与党候補者は、「あーら、負けちゃったわ。こんどはUDP(野党)から出ようかしら」とあっけらかんとしていた。政治でさえもお祭り気分で楽しんでしまう国民性。投票率が下がる一方という日本のみなさんも、見習ってみては?


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/179