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痛みの性質を知って病気を予防する(その3)─診察前の7つのチェックポイント

「痛み」を捉えるということは、自分の体に耳を傾けることに他ならない。いま自分の体の中で何が起こっているのか、痛みが何を訴えようとしているのかを探るのである。それにはコツがある。

以下の7つのチェックポイントは医師に相談する際に、とても重要なことなので診察の前にメモをしておくことをおすすめする。

まず、
1)
どこが痛いのか。…痛みは場所を示してくれるサインである。もちろん、ココだとはっきりした痛みから、何となくこのあたりという漠然としたもの、からだの奥の方という場合もあるので、出来るだけ自分の体を指し示して医師に伝えるとよい。
また、胃や腎臓が悪いのに背中や腰のあたりが痛く感じることがある。これは関連痛といって、本来の臓器の異常が関連する皮膚の上に投影される現象である。心臓や胆嚢、肝臓や虫垂などの内臓の異常を、脳に伝える内臓求心性神経という神経が興奮したときに特定の場所に現れるので、診断の上で重要である。

2)
何時から。…これは最初に痛み出した時のことで、繰り返される痛みの場合にも一番最初に異常を感じた時を伝える。

3)
じっとしていても痛いか。…何かをしたときに痛いのと、何もしなくても痛いのでは痛みを判断するうえで大切である。何もしていないのに痛い(自発痛)、押すと痛い(圧痛)というように説明する。

4)
痛みの性質。…ズキズキ、ピリピリ、チクチク、ジンジン、鋭い、鈍い、焼けるようなという具合に表現されることが多い。針を束ねたもので刺されるような…というようにいろいろと工夫して表現しよう。

5)
どうすると痛みが強くなるか、和らぐか。…肩を動かしたり腰を伸ばしたり、横になるという動作や食事の前後など。暑さ寒さ。入浴やクーラーなどの環境因子も重要だ。

6)
痛みが放散するか、場所は移動するか。…叩くと別の場所に響くなどの特徴を伝える。

7)
痛みと一緒に他の症状が起こるか。…痛みが出ると痙攣が起きる、熱が出るなどの随伴症状。そして、最後に痛みの強さを伝える。眠れないほどの痛みであるとか、長く続く痛みや日毎に痛みが増してくるなどの痛みは要注意である。仕事や日常生活に差し支えるかなどもチェックして医師の診断を仰ぐと良い。医師の方でも短い時間で正確な診断を下せることだろうし、短い診察時間を有効に使うという意味でも賢い患者と言える。


【首や肩の痛み】

首や肩に痛みを感じている人は実に多い。いわゆる肩こりは小学生にも増え、加齢現象と簡単に片づけるわけには行かなくなってきている。とくに慢性の首、肩の痛みを放っておくのは良くない。最近では首の筋肉痛を根本的に治すと、うつなどの精神症状やメマイ、吐き気、全身倦怠感など自律神経障害も改善されると指摘する専門家も出てきている。

まず、首を回してみる、左右どちらも同じように廻るだろうか。途中でコキッといってつかえたり、痛みやシビレが走ったりしないだろうか。パソコンやデスクワークを長時間するときは最低でも2時間に一度、30分以上の休みを入れて首や肩を回したほうが良い。


【肩甲間部、背中の痛み】

昔から「薬石効無く、病(やまい)膏肓(こうこう)に入る」(治る見込みのない病にかかること)といわれるほど、肩甲骨と背骨の間には病気のサインが出やすい。膏肓(こうこう)とは心臓の下から横隔膜の上の部分を示すことばで、古来より重病との関連性が指摘されている場所である。

最初は比較的強い肩こりも放っておくとだんだんと麻痺してきて、それほど痛みを感じなくなってしまうことがある。背中に虫が這っているようなムズムズした違和感を覚えたら早めに医師の診察を受けた方がよい。CTにも写らない初期のパンコスト腫瘍が見つかった例もある。


【腰の痛み】

腰の痛みは中高年ばかりでなく意外にも若いスポーツ選手に多い。ある実業団チームのスポーツドクターは、競技スポーツをしている人は腰に何らかの異常を抱えながらも試合に向けて過激なトレーニングを積んでいると証言する。健康のためにするスポーツならば十分なストレッチを欠かさないことが重要だ。

筆者も経験したが、腎結石が尿管を通過する際の痛みは尋常ではなかった。いわゆる尿管結石の痛みだが、はじめは腰のベルトのあたりに重苦しい鈍痛があらわれ、徐々に脇腹を通る移動性の激痛となってゆく。額には脂汗がにじみ、まさに七転八倒の苦しみとはこのことかと思った。それでも結石の痛みだろうということを思い浮かべる余裕が生まれると、電話でタクシーを呼び一人で病院に向かうことが出来た。


【自分の体に関心をもつ】

人が「死」を恐れるのは死んだ事が無いからだという話しを聴いたことがある。確かに、生きている人間にとって死は全く未知の世界である。相手がどんな存在かわからないとき、人は「不安」を抱く。

もしもその相手が自分に危害を加えようとするならば不安は一転して「恐怖」へと変わり、冷静な判断どころか思考までも恐怖に支配されてしまうかも知れない。

少し話を飛躍させると、長い人間の歴史の中で繰り広げられてきた多くの争いも、そもそもの発端はこうした「不安」や「恐怖」がお互いの根本にあった。民族同士の習慣や文化、イデオロギーに対する無知・無関心によって引き起こされてきた悲劇と言えるだろう。

さて、「痛み」についても同じことが言えるのではないだろうか。突然やってくる身に覚えのない痛み。この痛みの性質を知るということは、痛みへの不安や恐怖を和らげることに繋がるのではないかと思うのである。

ひょっとしたら痛みの感じ方が和らいだり、少し余裕を持って対処できるようになるかも知れない。その痛みがどうせ避けて通れないものならば「知恵」をもってこちらから接近し、不安や恐怖を克服できるのではないかと思うのである。


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