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リッツ・カールトン東京─驚きと感動のサービスが生まれる裏側

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5月1日放送のテレビ東京「ガイアの夜明け」という番組で、「究極のサービスを目指せ─ザ・リッツ・カールトンのサービス戦略とは?」と題し、これまでカメラがほとんど入ることのなかったリッツ・カールトンの裏側が紹介されていた。その概要をお伝えする。

宿泊料が最低の部屋でも68,000円のラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン東京」。今年3月30日、東京・六本木に誕生した複合商業施設「東京ミッドタウン」の45階から上がリッツ・カールトンになっていて、数ある施設の中でも最も注目度が高い。

リッツ・カールトンは、ホテル王 セザール・リッツが北米に一流のサービスを提供するホテルを展開するために1905年設立。全世界で63のホテルを展開する高級ホテルチェーンで今回誕生したホテルは、大阪についで日本で2番目になる。

リッツ・カールトンは、雑誌などで特集されるホテルランキングでたびたび1位に輝いている。また、マルコム・ボルドリッジ賞(米国商務省から優れた功績と経営品質の向上を果たした企業だけに与えられる国家賞)、全米ベストホテルチェーン賞など、多数の栄誉を受けてきた。その要因で大きな比重を占めるのが、愛情のこもった質の高い顧客サービスと、それを実行するスタッフの存在である。

リッツ・カールトンでは従業員がお客様にとって感動的なサービスを行うと「ワオ・ストーリー」と呼ばれ全世界に紹介される。

たとえば、こんな逸話だ。
「盗難にあって財布もカードも所持品(薬)もすべて失ってしまったお客様にカードの使用停止手続きをしたり、薬を買ってきてあげたり、気が沈んでいるお客様にルームサービスを提供」

「ガールフレンドにプロポーズするお客様に頼まれたこと以上の驚きと感動を与えるために、部屋を100本の薔薇で飾った」

「パスポートをホテルに置き忘れたお客様を追いかけて、大阪から東京まで新幹線に乗って届けた」

「プールでなくしてしまったお客様のコンタクトレンズを探しあてた」


顧客の精神的満足度が企業経営を左右するサービス業の世界。リッツ・カールトンのサービス戦略を知ることは、ホテル業界のみならず、サービス業界全般にとっての指針になるはずだ。

お客様の心に残るような期待以上のサービスを提供することで、もう一度、利用したいと思わせる、─そこにリッツ・カールトンの神髄があり、そのために様々な工夫が凝らされている。

中でも、従業員の精神的な支柱となっているのが、「クレド:credo」(ラテン語で信条を意味する言葉)という小さなカード。これには、リッツ・カールトンのサービス哲学が書かれてあり、全世界の従業員が常に身につけ、お客様へのサービスの指針としている。

書かれている内容の一端を紹介する。

● 紳士淑女をおもてなしする我々も、紳士淑女です。

● 心のこもったおもてなしと快適さを提供する。

● お客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みして、お応えする。


言葉そのものは、簡潔でわかりやすいものが多いが、その一つ一つに奥の深さと重みがある。

しかし、ビジョンを掲げていて、それを従業員が頭で理解しているからといって、サービスで実践できるとは限らない。なぜ、リッツ・カールトンからマニュアルにはない伝説のサービスが生まれるのか?

その鍵を握るのが、「クレド」の理念を実現させるために経営に内包されているいくつかの仕組みである。

●現場への権限委譲
すべての従業員が、お客様のサービスに関して、1日につき20万円まで、上司の決裁なく、お客様をも てなすことができる。

●CLASSと呼ばれる顧客情報システム
接客で知ったお客様の情報(愛読新聞、記念日、好きなお酒の銘柄、枕の素材や固さの好みなど)を 漏らさずメモし、それが、専門の部署に集められ、従業員が情報を共有する。

●部署ごとに毎日実施されるラインナップと呼ばれるミーティング
「クレド」に書かれている行動指針について、従業員が自分の経験や考えを発表する。

●QPS(Quality Selection Process)という人材採用プログラム
 リッツ・カールトンにふさわしい性格や才能を持った人材を見分けるプログラムで、行動心理学に基づ  いて、入念な面接試験が行われている。経験や経歴などを重視せず、素質を重視するのが特徴。 

●5スターと呼ばれる従業員の賞賛の仕組み

●サービスのクォリティを測るSQI(Sservice Quality Indicator)という指標

そして、これに加えて、従業員に自分で考える、考えさせる実践的な教育を行っている。


このような仕組みが有機的に結実することによって、リッツ・カールトンの驚きと感動に満ちたサービスが実現されている。



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