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カナダの脱京都議定書宣言で、ついに逮捕者! 

<概要>

カナダ保守党政権が脱京都議定書表明をしてから2週間、逮捕者が現れる事態となった。

逮捕されたのは、政府関係機関Environment Canadaに勤務していたジェフ・モナガンさん(27)。政府機密文書漏洩の疑いが持たれている。その政府機密文書というのが、先月発表された『新温室効果ガス排出削減プラン』だ。

モナガンさんは、政府未発表の新プランを、地元メディア、環境保護活動家に知らせたとして、連邦警察(RCMP)に5月9日政府事務所内で手錠をかけられ連行された。

結局は罪に問われることなく、翌日には釈放された。これに対しモナガンさんは「政府の『魔女狩り』的行為だ」と10日の記者会見で不快感を顕わにしたが、漏洩した事実については肯定も否定もしなかった。

(2007年5月10日CTV http://www.ctv.ca
CTV:カナダ3大ネットワークのひとつ。マルチメディア会社CTVglobemediaの主要メディアのひとつで、グループには全国紙The Globe and Mailがある。


<解説>

この問題がメディアで大きく取り扱われた背景には、機密文書が京都議定書断念という国際的に注目を浴びる政策に直接関わっていることが大きな理由である。

政府が新プランを発表したのは4月26日。しかし4月17日にはカナディアン・プレス(CP)がすでに内容を掲載していた。政府の慌てぶりはその間の報道でよくわかった。

掲載された内容と発表された内容は微妙に目標数値などが違うようだが、カナダ保守党政権が、このプラン発表によって京都議定書断念を表明したことは事実。国内よりも国際社会の反応が大きかったことに、メディアも改めて目標断念のニュースをことあるごとに大きく扱っているようだ。

しかし、連邦政府を始め、州政府、企業、メディア、個人などカナダの温室効果ガス排出削減に対する意識はそれほど高くないように感じる。少なくとも日本と比較するとかなり低い。

カナダといえば、環境問題に真摯に取り組み、個人の意識もかなり高いというイメージがあるが、実際住んでみるとそうでもないことに気づく。

まず、連邦政府は早々と脱京都議定書宣言をし、2020年までに温室効果ガスを2006年比の20%削減というかなり国際社会から遅れた独自案を発表した。

現在の状況は2012年までに1996年比6%減という京都議定書目標とは程遠い、同年比30%増。ちなみに日本は8%増だという。

州政府の試みをBC州に限って言えば、環境問題に対する今年の予算はかなり低い。ようやく代替エネルギーなどに興味を示し始め、関連するビジネスチャンスが広がり始めたところだ。日本の技術が大いに注目されているとは関係者から聞く話である。

2010年開催のバンクーバー冬季オリンピックを『グリーンオリンピック』と位置づけている州政府は、そろそろ本腰を入れて取り組まないと間に合わないのではないかと思える。

企業の取り組みでは、『アイドリングストップ』や『クールビズ』など官民一体で目標を掲げて努力する日本と違い、そうした掛け声もほとんど聞かれない。 

個々の意識もそれほど高くない。リサイクルのシステムは確立されているが、買い物袋の不使用、公共交通機関の利用、ゴミ分別の徹底など誰にでもできることを積極的に実践するといった姿勢があまり見られない。

メディアも、声高に環境問題を提起するような報道は少ないように思う。今回の政府発表に対しても、日本のメディアのようなこぞって政府を非難するという姿勢は見られなかった。絶対的なメディア数が少ないことも理由の1つだが、それでもその静観ぶりはちょっと信じられないくらいだった。

こうした小さなことの積み重ねが現在の結果に繋がっていると思う。

そう言う自分を振り返ってみると、やっぱり周りのいい加減なエコロジー環境に流されて、できる努力を怠っていると反省する。帰国する度に目に見える日本の努力にその思いは一層強くなる。

近頃は、経済発展と環境保護を正比例させることのできる、エコロジー先進国日本の試みをバンクーバーに紹介するのも悪くないと考えているところである。



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