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インフルエンザ、地元スイスでは飲まない≪タミフル≫

<記事要約>

タミフル安全情報 
日本では、2001年以来、子どもと大人合わせて2450万人が、タミフルを服用しています。
タミフルを服用した子どもは1160万人で、2006年6月5日の時点で、1から16歳の16人が死亡しています。

2005年11月に、このうち12ケースについて調査したFDA(米国食品医薬品局。Food and Drug Administraionの略。日本の厚生労働省に該当する。)によると、タミフル服用の因果関係は認められていません。少なくとも亡くなった8人は、腎臓障害、先天性中枢神経システム障害、ぜん息などの疾患、または肺炎や肺水腫、心筋炎、膵炎などのインフルエンザの合併症にかかっていました。 

2006年11月17日付『Factsheet Tamiflu』より (スイスに本拠地を置く、製薬・医療機器会社ロシュ・ホームページで閲覧可 http://www.roche.com)


<解説>

2001年2月から日本で発売になったインフルエンザ治療薬、タミフル。先日4月25日、日本の厚生労働省はタミフルの副作用について報告した。今年4月17日までに副作用があったのは1268人で、異常行動が見られたのは186人にも上っている。死者は70人いるという。

現在、日本では10代のタミフル服用は禁止され、厚生労働省は、タミフルと異常行動の因果関係を調べる会議を5月より始めた。

死者が相次ぐのだから、大騒ぎになるのは当然だ。タミフルの製造元ロシュ社でも、上のように、昨秋の『タミフル報告書』の中で日本のタミフル状況に触れている。しかし、あくまでもタミフルは死因でないという姿勢だ。販売側からすれば当然の言だが、「日本では、これほど多くの人がタミフルを服用していますよ。安全ですよ」という宣伝にも聞こえる。

タミフルの本当の安全性については、もう少し調査を待ちたい。が、私が驚かされるのは、非常に多くの日本人がタミフルを服用していることだ。日本のタミフル消費は、全体の7?8割を占めるという。

タミフルの地元スイスでは、こんな騒ぎは起こっていない。日本とスイスでは人口の差が大きいから、インフルエンザにかかる人数はスイスの方が低いだろう。だから、タミフル服用後の死亡例も少なく、ひょっとしたら報道されないだけなのかもしれない。でも、タミフルがそんなに危険だとはこちらでは聞かない。

私の理解では、「タミフルは鳥インフルエンザ用」だ。ロシュ社は最新調査でも、「24時間以内のタミフル服用は、鳥インフルエンザウィルス(H5N1)の感染による死亡を防ぐのに効果的だ」と公表している(2007年4月3日)。スイス政府も、“鳥インフルエンザ大流行時”の第一次策として、全国民へのタミフル確保を保証している。

スイスで、通常のインフルエンザでタミフルを服用する人は稀だろう。大体、皆すぐには医者に行かない。私は2年半前にインフルエンザにかかった。一応医師の診断を仰いだが「普通のインフルエンザでしょう。解熱鎮痛薬を飲んで数日寝ていてください」とだけ言われた。また、子どもが39度以上の高熱を出したときも、薬は飲ませず、5分おきの手足の温湿布で熱が下がった――これで本当に熱が下がるのかとかなり不安ではあったが。

こういう対応は、スイスだけではないと思う。イギリス在住時も、風邪で医師が薬を出すことはなかった。

日本のタミフル騒動は、投薬の過大信奉によるのではないか。「病気⇒投薬⇒早い完治」という図式を、医師や人々が持っている。誰だって病気は嫌だし、医者に行くのは早く治したいからなのだが、日本は薬に頼りすぎている気がする。

たとえば2003年の一時帰国のとき。私は風邪を引いてしまい、周りがせかすので医者に行った。その医師は「風邪ですね。抗生物質を出しておきます」と涼しい顔。あとでスイス人の夫は「日本の医者は、ただの風邪にどうして抗生物質を出すのだ」と電話口で怒っていた。

「全面的な医者任せ、薬任せ」の考え方を、今こそ変える必要があるのでは。


【関連ブログ】
●タミフル問題を考える ─薬の専門家とは誰か
 http://mediasabor.jp/2007/04/post_69.html

●人の免疫力を低下させる抗生物質の乱用
 http://mediasabor.jp/2007/03/post_38.html



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