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悪質業者が跋扈するスイスのオンラインショップはヨーロッパで最悪?

<記事要約>

スイスでは、オンラインショップの客は愚か者だ。たとえば、ネットで、5万円のステレオを購入した57歳男性。その男性は、そのステレオを今まで見たことがなく、注文を決めた。が、一向に届く気配がない。お客さまホットラインに電話すると、「もうしばらくお待ちください」との返事。

とうとう2ヶ月が経ち、購入契約を破棄したいと申し出たら、一転して「会社が経営破綻しました」と言われた。無論、金は戻って来なかった。

スイスのオンラインショップには悪質業者がまだ多い。理由は、法による規定がないこと。そのため、悪質業者たちは、客に信頼感を持たせて購入ボタンを押させる≪偽りの購入規約≫作りに勤しんでいる。購入側は、それを甘受せざるを得ない状況なのだ。

2007/3/30号  Beobachterより  <スイス国内のホットな情報を、消費者の立場で提供する雑誌。リンク(書籍、セミナー、ウェッブサイト)の付いた記事が多い。労働・住居・金銭など、様々な電話相談もある。隔週刊で、読者は約100万人>

<解説> 

こんな野放し状態のスイスのオンラインショップを恐れて、私の友人の中にも、オンラインショッピングはしないと決めている人もいる。


スイスでは、数年前、議会で消費者保護法制定の話は持ち上がった。しかし連邦評議会(7名の閣僚で構成。この中から、大統領が1年毎に交代で任命される)では討論されず、実現には至らなかった。


一方、スイスが未だ加盟していないEU (欧州連合)では、オンラインショップは、法により情報義務が強化されている。そして、各ショップの購入規約に何が書かれていても、いわゆるクーリングオフで7日間以内であれば解約ができる。保障期間は、どんな場合も2年間と定めている。EUは、今年2月にも、消費者の権利をさらに守るために、オンラインショップの配達期間や返却権などが消費者に親切になるように規定すると決定した。


このように法の規定がなく、オンラインショップに金をだまし取られる話もよく聞くとはいえ、スイスでも、オンラインショップの人気はかなり高まっている。スイス北東部にあるザンクトガレン大学の調査によると、スイスのオンラインショップの2006年の売上は、42億4000万フラン(約4240億円)だった。5年前から毎年実施している本調査で、最高の記録だ。


スイスの人たちが、インターネットで購入するのは何だろう。飛行機のチケットは全体の40%がオンラインで購入され、イベントなどの入場券は全体の29%をオンラインが占めた。しかし、食品に関してはたった2%。他方、銀行の取引は35%、情報の入手は34%と、「サービスの利用」が目立つ。これを見ると、インターネットでの買い物は、まだ「特定の商品や領域に限られている」といえる。


ところで、BBCの報道によれば、イギリスでは国民の27%がインターネットで買い物をしていて、そのほかのヨーロッパの国々のオンラインショッピング利用率16%を大きく上回っている。しかもオンラインショッピングの売り上げは、2009年までに、800億ポンド(約18兆4千億円)になると予測されている。


2000年から続いている「世界のeビジネスランキング」では、イギリスは、2005年も2006年も第5位で、たしかに健闘している。しかし、実を言うと、スイスは2005年第4位、2006年は第3位と、イギリス以上に、国のIT化が進んでいると評価されているのだ。

英国エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)社による
「eビジネスランキング」
(2006 年度は、3カ国が新たに加わって68カ国の比較)
順位

2005年の順位
1
デンマーク
1
2
アメリカ
2
3
スイス
4
4
スウェーデン
3
5
イギリス
5
6
オランダ
8
7
フィンランド
6
8
オーストラリア
10
9
カナダ
12
10
香港
6
21
日本
21

 

スイスでも消費者保護法が整えば、さらにオンラインショッピングの利用率は増えるだろう。スイスの議会ではいま、EUと同じレベルでのインターネット消費者保護案が出されている。


私自身は、気をつけながらスイスでオンラインショッピングをしている。しかし、失敗もある。ドイツのショップで、安い!と飛びついたソフトウェア。それが、小包が届いてみたら税金がかかっていて、結局、スイスの市販価格と同じになった。EUと同等の法ができれば、そんなこともなくなるだろうか。


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