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資格を取得してもメリットのない介護士を取り巻く問題点

介護士とは、「ホームヘルパーの資格を持った人」という認識しか一般的にはないだろう。

求人情報誌などを見れば分かるとおり、実際には、資格が無くとも介護職に就くことができる。
 
しかし、厳密にはヘルパー資格2級以上でないと身体に触れることができない。

それでも、実際には人手不足により、資格がなくとも食事介護や入浴介助などを介護施設の職員が行っているケースは後を絶たない。

要するに、無資格でも有資格者としての仕事をしている現状がある。

有資格者は、お金をかけ、そして資格を取ったにも拘わらず、無資格の人間と同じ職場で、同じ内容の仕事をしていると、何のための資格なのか分からなくなってしまう。

さらに、給料などの待遇も変わらないのでは、資格取得の意味がないと思うのは当然である。

だが、有資格者は、無資格の人間が身体介護を行っているというのは、非常に危険な事であることを知っている。

例えば看護士や医師などは無資格ではできない仕事である。

しかし、介護職は無資格でも仕事に就く事ができる。つまり、認定資格であって、国家資格ではない。

そんな現状の中でも、介護保険制度の導入により、爆発的に要介護認定を受ける人が増えた結果、急激な人手不足に陥り、ホームヘルパーの資格がきちんと保証されないまま、需要のみが増えたのである。

以上のことから考えると、まず雇用者に求められているものは、有資格者と無資格者との待遇の差別化をはっきりさせることだろう。また、仕事内容も、身体介助を無資格者に行わせないようにしなければならない。

では、どうすればこのような現状を変えられるのだろうか。

まず、2006年に決まった、フィリピン人介護士の導入である。日本・フィリピン経済連携協定(EPA)では、日本で急速に介護労働力が不足する可能性を考慮し、経済界や政界では何とかしようという動きがあった。

そこで、世界中に介護労働者を送り出している実績のあるフィリピンが、介護市場として日本に魅力を感じているところに着目し、高齢化社会の日本の介護ビジネスに参入させることになった。

ただし、フィリピンから無制限に介護士を受け入れるわけではない。2年間で600人を上限、入国後6か月間の日本語研修、日本の介護福祉士の資格取得の3つが条件として提示された。

これは、在宅介護において、外国人が家に入ってくることを拒む老人がいることを考慮してのことである。

このように外国人労働力に頼らなければならないのは、介護の現場の人手不足が深刻で、公的資格である介護計画などを立てるケアマネージャーの役目を、無資格者に負わせている介護施設も少なくない事情が背景としてある。

実際、ある取材のときに何人かの介護士が、「無資格で、勉強もしていないのに、介護プランなどを作成したり、窓口での相談にも応じたりすることに、もの凄くストレスを感じる。」と答えた。

介護ビジネスは、人間が人間をサポートする仕事であることを再認識し、行政サイドが絶えず介護施設のチェックを行わなければ、日本人介護士のレベルは下がる一方だろう。 待遇などの問題を含めて、民間に任せきりにするのではなく、行政がどんどん指導していかなければ、安心してホームヘルパーに介護を頼めない。

つまり、行政の指導強化が、安心感のある介護ビジネスにつながるのであって、この分野における規制緩和は毒にしかならないのである。


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