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余った食を無駄にしない米国生まれの「フードバンク」(オリジナル映像含む)

  • 米国在住ジャーナリスト

消費期限は充分にあるにもかかわらず、ラベルの張り間違えや容器の傷などで、店頭には出すことができず、廃棄せざるをえない食品。実はそうした食品がメーカーには大量に発生しています。それらの食品を企業から提供してもらい、食べ物に困っている人たちに配るというシステムが「フードバンク」というものです。

アメリカで生まれ、かなり浸透しているシステムなのですが、これまで日本ではありませんでした。ようやく、いま日本でも「フードバンク」というシステムが動き出しています。台東区にある「セカンド・ハーベスト・ジャパン」というNPO団体。ここが日本初の「フードバンク」を始めたところです。

3月27日にテレビ東京「ガイアの夜明け」という番組で取り上げられましたので、ご覧になった方も多いでしょう。

アメリカで生まれ地域に根付いているシステムですので、メディアサボール・リレーブログ執筆陣の一人であるサンフランシスコ在住ジャーナリスト 形山 昌由氏に「アメリカのフードバンク」について執筆を依頼しました。形山氏は、今回の執筆にあたり、カリフォルニア州サンフランシスコにある「サンフランシスコ・フードバンク」に取材を行い、オリジナル映像を含んだ記事を寄稿されました。

読者の皆様におかれましても、メディアサボール執筆陣に取り上げてほしいテーマがありましたら、どんどんメールでお寄せください。過去記事の感想などもいただければ幸いです。
                                           ─MediaSabor編集部


巨大な倉庫の棚に積まれた有り余る食料品。ラジオから流れるBGMを聞きながら陽気に働くボランティア達。ここは、本当にフードバンクなのか? 新しく出来たスーパーマーケットではないだろうか? 倉庫に足を踏み入れた瞬間、そんな錯覚に襲われた。

カリフォルニア州サンフランシスコにある「サンフランシスコ・フードバンク」は、今年で丸20年を迎える非営利団体。サンフランシスコ地区の「飢え」をなくすことを目的に、コミュニティー内の必要な人々や団体に食糧支援を行っている。

サンフランシスコ・フードバンクの倉庫の模様は、取材時に撮影した以下の映像を見て欲しい。

食料の支援先団体は500を超える。高齢者センターやスープキッチンと呼ばれる貧困者のための無料食堂などを通じて、昨年は11万8000人を助けた。今年は5万5000の人々に対し、日々の食事を提供するという。

観光で有名なサンフランシスコだが、実態は米国の他の都市と同じよう貧困があふれている。低所得者、AIDS患者、ホームレス、生活保護を受給できない者、子供、高齢者など、飢えと隣りあわせの生活を強いられている人は15万人近くに上る。この数は、全米で3500万人に膨れ上がる。

そうした人たちを主に食糧支援の立場から救済するのがフードバンク。米国には、だいたい各郡に一つのフードバンクがあるといわれ、地域ごとの活動を行っている。全米のフードバンクネットワークとして「セカンド・ハーベスト」があり、サンフランシスコ・フードバンクも構成メンバーの1団体だ。

フードバンクの活動は寄付で成り立つ。政府、企業、団体、基金、個人などあらゆる機関から食料やお金の寄付を受け付け、それを貧困者に還元する。食料寄付というと、食べ残しのように感じるかもしれないが、倉庫を見学すればそうした意識は一瞬で吹っ飛ぶ。

新鮮な野菜、果物、肉、小麦粉、ミルク、アイスクリーム、パン、缶詰、調味料。我々が普段口にするほとんど全部の食べ物が、手付かずで大量に箱詰めにされたまま、ここにはある。食品商社の倉庫だといわれても、疑いようがない。

連邦政府の政策による食料寄付を初め、地元のスーパーマーケットや農家からも大量の生鮮食料品や保存食がまとまってこの倉庫へ届く。そして毎朝、トラックに積み込まれた食料品は、地区の食糧支援団体などへ配達され、おなかを空かせた人たちの胃袋に収まる仕組みになっている。

今年は12万トン弱の食料品がこの倉庫に集まる予定。それにしても、一つの市で年間10トントラック1万2000台分の食料がタダで集まるということは、この国の豊かさ、言い方を変えれば経済力の高さを示している。税金控除につながることも寄付に拍車をかける理由だが、やはり一番の要因はキリスト教を背景とした博愛精神だろう。

日本でも、セカンド・ハーベスト ジャパンが活動を行うなど、フードバンクが注目され始めている。根付くかどうかはこれからだ。
http://www.secondharvestjapan.org/index.php/jpn_home


ブッシュ大統領は、2008年度予算で食糧支援プログラムの削減を提案した。実施されれば全米で50万人が影響を受けるとされ、低所得者層には深刻な問題だ。予算削減の理由は、対イラク戦争の戦費捻出のため。長引く戦争は、自国民の首をもじわじわと絞め始めている。



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