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サエキけんぞうと高橋まことが書いた『さよなら!セブンティーズ』と『スネア』にハマった

サエキけんぞうと高橋まこと。80年代の同じ時期にパール兄弟、BOØWYと、それぞれ別のバンドで活躍した、現在も現役のミュージシャンである二人が、それぞれ自伝的な本を出版しました。

サエキけんぞう著『さよなら!セブンティーズ』は、70年代が小学生の終わりから大学生の半ば(6年制の医学部なので)にあたる、自身のプロ・デビュー前の話が中心。

高橋まこと著『スネア』は、プロとして活動するようになってからの話がメインと、それぞれの視点およびテーマは微妙に異なるのですが、2冊ともとにかく面白い!

僕自身が学生時代にパール兄弟とBOØWYを聴いていたときには、ファン層が重なっているという印象はありませんでしたが、新宿ロフトとデイヴィッド・ボウイという共通項をこの2冊の中に見つけたことで、両バンドを違和感なく聴けていた理由がわかったような気がしました。

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958年生まれのサエキと1954年生まれの高橋。二人の年齢にはさほどの開きがないように思えますが、音楽の世界では「4年」の差というのがもの凄く大きいことも、この2冊を読み比べればわかります。

1966年6月にビートルズが来日します。『スネア』では、地元・福島からなんとかして武道館公演を観に行こうと画策するものの、念願叶わずTV中継されたビートルズの姿を食い入るように見つめていた高橋少年の姿が描かれています。

一方、『さよなら!セブンティーズ』では、その2年後の68年に『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』を初めてリアル・タイムで購入し、ビートルズが解散するまでの、続く『アビー・ロード』『レット・イット・ビー』の2枚に間に合ったことを、切実に「良かった!」と感じている、現在のサエキ氏の心境が綴られています。

わずか4年の差がこれだけの大きな開きとなって出てくる。「ビートルズの来日公演を見たか見ないかの差でしょ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは些細なことのようで、とても大きな差なんです。『さよなら!セブンティーズ』には、当時のサエキ青年が、74年末に新宿でシュガー・ベイブを観て衝撃を受けた話が出てきますが、『スネア』には、そのシュガー・ベイブが出演した同年8月のワン・ステップ・フェスティバルに、GRAPE JAM(モビー・グレイプから付けたバンド名)のドラマーとして高橋まことが出演していたことが書かれています(厳密にはシュガー・ベイブの出演は8月8日で、GRAPE JAMの出演は翌9日)。

僕が高橋まことの存在を知ったのはBOØWYを通じてだったので、BOØWYがブレイクする10年以上前に、すでにドラマーとしてのキャリアが始まっていたことを知ったのは驚きでしたが、BOØWYで成功するまでの苦難の道のりは、さらに衝撃的、かつ初めて知ることばかりで、勉強にもなりました。

『スネア』には、自身のキャリアに関することだけでなく、これまでに高橋本人が深く関わってきた人達の話も随所に出てきます。

やはりBOØWYの元メンバーについての話は読み応えがあり、寡黙なベーシストとして知られる松井常松が、実際はそういうキャラクターではないのにバンドのイメージ作りに徹していたことや、布袋寅泰がお薦めテープを作ってくれた際に曲目をきちんとタイプで打っていたことなど、メンバーのウラ()の姿までよくわかります()

とりわけ、氷室京介に関する記述は、意外な面、と書くと失礼ですが、クールなイメージをもつ氷室の、実は温かい人柄が随所に描かれていて、じっくりと読ませてくれました。

『さよなら!セブンティーズ』に関しては、ユーモアあふれる文体がとにかく魅力的なのですが、そこに描かれている風景を、ちょうどサエキ氏の一回り下にあたる自分が、12年後に追体験していたというのもハマってしまった大きな要因だと思います。

物語の舞台としてたびたび登場する御茶ノ水は、僕自身も小/中学生の頃に通っていた進学塾があった関係で、やはり行き帰りにディスクユニオンを覗いていましたし、当時とは厳密に言えば場所は異なりますが、明治大学の生協でCDを購入したことも一度や二度ではありません(お世話になりました!)。

『さよなら!セブンティーズ』に描かれている御茶ノ水の風景は、現在のように楽器店などのお店が並ぶ以前の姿ですが、70年代後半には目にしていた当時の風景を必死に思い出しながら読んで、楽しくも懐かしい気持ちでいっぱいになりました。

 


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