Entry

「食べた分だけ払います!」進化し続ける量り売りレストラン:『ポルキロ』

定食のみでは足りなかったり、多すぎたり、食べ放題ではもとが取れなかったり、そんな思いをしたことはないだろうか。

「食べた分だけ支払う」というスタイルのレストランが、ブラジルで会社員を中心に大ヒットを続けている。

働くブラジル人のランチタイムの定番、「ポルキロ・レストラン」、通称「ポルキロ(Por Kilo)」。「ポルキロ」とは、「キログラム単位で」という意味で、その名の通り、食べたものの重さによって値段を払うレストランのことだ。

90年代初頭、牛肉の値段の上昇に困り果てた焼肉専門店が、ビュッフェを導入したのが始まり。ビュッフェとは日本でいう食べ放題のことだ。野菜やその他の食べ物を提供し、肉を少しでも少なく食べさせようとしたのが狙いだ。その後、バイキングスタイルが独立し、「キログラム単位」が導入された。

レストランの一角に設置されている料理コーナーで、好きなものを好きなだけお皿に盛る。陳列されている料理には、熱が逃げにくい容器を使用し、温かく保つ工夫もされている。といっても、人の出入りが激しいランチタイムは、空になった容器に次々と新しい料理が追加されるので、できたてをお皿に盛ることができる。

なによりも見てから料理を選ぶことができ、注文して待つ必要もない。好きなメニューを少しずつ、つまみ食いできるのも人気の秘密だ。好きなだけお皿に盛ったら、量りへ進む。入店する時に渡される伝票に、値段を記入してもらったらテーブルへ。会計は食事の後。デザートと飲み物の追加分と一緒に、出口付近のレジで支払う。

ブラジルでは果物、チーズ、肉などはグラム単位で購入するのが一般的だ。また、ブラジルは大皿文化の国で、日本のように小鉢や小皿に一品一品盛り付けられることはなく、大きなお皿一枚に、ご飯、豆、野菜、肉料理など何でものせる。グラム単位での購入と、大皿文化が、「ポルキロ」が抵抗なく受け入れられ、ヒットした背景といえるだろう。

お皿とお皿にのったすべての料理の重さを計るため、にんじんでもお肉でも、重さが同じなら結果的には同じ値段になる。一般にビジネスマンが利用する「ポルキロ」では、0.1キロあたり約1.5レアル(約88円)、高級食材を使用している所では、約4レアル(約230円)と様々だ。

増加傾向にある「ポルキロ」市場の客獲得競争は激しくなっている。寿司コーナーやバーベキューコーナー、クレープコーナーは、もはや一般的で、変化をつけるため、中国料理やアラブ料理、イタリア料理専門のポルキロが増えている。また、おしゃれなビストロや有名レストランもランチ専用の「ポルキロ」を導入。忙しいビジネスマンがかけ込むインスタントレストランというイメージは崩れつつある。

常連客を獲得するため、月曜日はブラジル料理、火曜日はイタリア料理というように趣向を変えたり、献立表を入り口付近に掲示する「ポルキロ」もある。レジでもらえる割引カード、無料で提供される食後のコーヒーやリキュール、「ポルキロ」業界の進化は続く。

日本にもポルキロができたら、と、日本に帰国するたびにいつも思う。日本にあるブラジル料理レストランなどで取り入れているところもあるが、ブラジルのポルキロの清潔さ、新鮮さには程遠かった。


「ポルキロ」は、業態として様々な利点がある。

●食べ放題のような客の食べ残しが少ない。

●人件費が少なくて済む。

●曜日によって、料理の種類を変えるなど、客が毎日来店しても飽きさせないようにできる。

●料理のトレンド、流行を柔軟に取り入れることができる。

●メニューが読めない旅行者や外国人にとって、見て料理を選ぶことができる。

●少食の人や、ダイエットに気を遣っている人にとって、リーズナブルに食事ができる。

●丼や定食では量的にモノ足りない人にとって、好みの分量の食事ができる。

●好き嫌いの激しい人にとって、好みの料理だけを食べることができる。

●有機食材など特徴のある食材使用を標榜することによって、健康への意識が高い人に向けたものにするなど、ターゲティングができる。


世界中の料理が受け入れられている日本。料理を盛るのに仕切りのあるプレートを使用するなど、日本人向けにローカライズすれば、事業として成り立つのではないか。

ブラジルの有名ポルキロや、次々に開店しているポルキロチェーンには、専門のマーケティング担当が存在するはずであり、緻密な戦略に基づいているように思われる。

ポルキロを運営することによって、料理に関するきめ細かいマーケティングが可能になり、これで得られた情報をもとに、別途、専門店を展開するようなやり方も考えられる。

また、本部が、司令塔として食材調達機能、レシピ開発機能、映像などによる調理技術伝達機能、従業員教育機能等を備えることによって、フランチャイズ・チェーン(FC) のような広がりのあるビジネスにしていくことも可能だ。

飲食業界に携わる事業家および起業家は、ご一考を。

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/191