Entry

国民的「悪童」ロマーリオの1000ゴールにブラジル全土が沸いた!

<記事要約>

「999のゴールが走馬灯のように浮かんだ。1000ゴール目はペレをリピートしたんだ。」
41歳、ロマーリオはPK戦でこれほどナーバスになったことはないと語った。

同じ舞台での達成はかなわなかった。しかし、同じ形でその時はやってきた。

王者、ペレの時がそうだったように、ロマーリオもPK戦で1000ゴール目を決めたのだ。マラカナン・スタジアムでの1000ゴール目にこだわり、ひと悶着あったが、結果的に彼がサッカー選手として知名度を上げたサン・ジャヌアリオ・スタジアムで、背番号11番は歴史に記録を残した。


グローボ紙2007年5月21日(O Globo ブラジルの日刊紙)

<解説>

ロマーリオ・デ・ソウザ・ファリアのポジションはフォワード、ブラジルを代表するストライカーの一人である。90年、94年とワールドカップに出場。国内外のチームでの活躍後、2007年からデビューチームである、ヴァスコ・ダ・ガマに復帰していた。

欧州のメディアから「マジック」と評されたボール・テクニック、足に吸い付くようなドリブル、そして美しいシュート。ブラジルが生んだ天才と賞賛された大スターだ。86年には、ブラジルの得点王のタイトルを獲得、PSVアイントホーフェン、バルセロナ所属時にも得点王に輝いている。 

サッカー選手の仲たがいは、ロマーリオに限ったことではない。しかし、ロマーリオはミューレルとは犬猿の仲で知られるし、2002年のワールドカップで代表をはずされた際には、ルイス・フェリペ・スコラーリ監督との仲たがいが報じられた。98年ワールドカップで最後にメンバーから外した、当時のザガロ監督、ジーコ、エジムンド、ロナウド、ロベカルなど、監督や同僚、サポーターとのトラブルが「悪童」と呼ばれるゆえんだ。

練習中、サポーターから鶏を投げつけられた話は有名だし、試合中でミスした同僚を殴ったこともある。悪ふざけが原因で、ジーコに訴えられたこともあるし、ホテルの窓から小便をしたり、野次を飛ばしたサポーターに殴りかかったりと、ゴシップ雑誌を飾ったことも数知れず。

しかし夜遊び好きでチームのトラブルメーカー、ロマーリオを愛し続けてきたブラジル。94年のワールドカップ南米予選では、「ミューレルとは一緒にプレーをしたくない」と公言し、代表の座を外された。しかし、チームは苦戦を強いられた。「俺を出せば、次の試合で必ず2点取る」との宣言どおりに、ウルグアイ戦で2点を決め、ブラジルを予選突破に導いたロマーリオにブラジル中が熱狂した。

2002年のワールドカップの代表を外された際には、ロマーリオの涙が茶の間に流れた。代表監督との確執が報道されており、誰が見てもいいわけが通用しない状況に追い込まれたロマーリオ。しかし、全く恥じるそぶりをみせない彼を、ブラジル国民は、あまりに馬鹿で無神経な「われらの息子」と愛したのだ。

父親が誘拐され、身代金が要求された際にも、「父が解放されなければ、ワールドカップには出ない。」と記者会見。その後無事に彼の父親は解放されている。

現在41歳。引退しない理由は、「下手な選手ばかりだから、まだ辞められない。」

94年以降ワールドカップには出場できていない。「選ばれなければ引退する」と発言しながら、進退はまだ不明だ。はっきりしない態度に苦言を発したペレには「彼は口に靴でも入れておくべきだ。自分のことだけ心配していろ」と発言。

今年、3月に999ゴールを達成した後は、栄光を取り戻す1000ゴール目をめぐって、メディアを沸かしてきた。ブラジル中が息を止めて彼の「あと1ゴール」を見守ってきた。王者ペレと同じく1000ゴール目をマラカナン・スタジアムで祝うため、マラカナン・スタジオで行われない試合を欠席したり、試合会場の変更申請をしたあげく、ロマーリオの勝手に付き合ってきた監督は解雇されている。

そして、5月20日、ついにロマーリオは、スポルチ・レシフェ戦で1000ゴール目を達成した。ペレが1000ゴールを決めたマラカナン・スタジアムでの夢はかなわなかったが、王者とおなじくPKでの達成だった。

ブラジル全土が、この愛すべき「悪童」の1000本目のゴールを祝った。街中、花火や爆竹の音が響き渡り、彼の所属するヴァスコ・ダ・ガマのファンも、そうでないブラジル人もロマーリオ・コールに声をからした。ロマーリオの家族や報道陣がピッチに殺到し、試合は16分間中断。ペレ以来のこの快挙に、ブラジル現大統領もお祝いの電話をしている。憎みきれない、このブラジルの大スターの存在を思い知らせるゴールだったといえよう。

ロマーリオの1000得点は、アマ時代からの得点を記録したものだという。つまり、自称「1000ゴール」なのだ。記録を疑問視する根強い声を無視して、ロマーリオは「人生でとても感動的な特別な時」に祝杯を挙げ続けている。が、翌日の記者会見は「体調が悪い」との理由であっさりキャンセル。

その後、友人とサッカーをする姿が批判されるものの、本人は悪びれていないようだ。ロマーリオの母の提言する引退説にもノー・サイン。6月後半から行われるアメリカ杯には、ブラジル代表チームのエースである、カカ、ロナウジーニョ・ガウーショが、休暇名目で出場しない。もしかしたら、ロマーリオがまたブラジル代表として活躍できる場面を見ることができるかも?


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/222