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放送開始から18年。ポップカルチャーの王様「シンプソンズ」パワー衰えず

(記事要約)

5月20日(日)、400回目のエピソードを迎えたアニメシリーズ「シンプソンズ」(http://www.thesimpsons.com)。

「今日、放映し続けることがどれほど大変なことか」と語るのは、同番組のエグゼクティブ・プロデューサーの一人、アル・ジーン。「うぬぼれなのは分かっている。でも我々がやってきたことはどれほどすごいことか!」1989年の放送開始以来、ホーマー、妻のマージ、子供たちであるバート、リサ、マギー他数百のキャストはあらゆる人を魅了し、番組は人気を博してきた。

これまでにも「GUNSMOKE(http://en.wikipedia.org/wiki/Gunsmoke)」や「BONANZA(http://en.wikipedia.org/wiki/Bonanza)」をはじめ、400回を越える放送を達成していた60年代の番組はある。

だがテレビ&ラジオ博物館のキュレーター、ロン・シモンは、近頃はケーブルテレビやインターネットにより、視聴者を一つの番組につなぎとめるのが本当に難しくなったと指摘する。

23回のエミー賞に輝き、今やFOXにとってもっとも高視聴率を稼げる番組ではなくなったものの、未だにヤング・アダルトに人気の番組であることに変わりない。(18シーズンの平均視聴者数は870万人)

またDVDのセールスや、ライセンスグッズの売れ行きは思いがけず大当たりで、10億円の市場とも言われている。プロデューサーのジーンは、近年イラク突入に関する決断や、それにまつわる因果関係などを描いたが、「この番組では、いつも誰が力を持っているのかを描いている」と語っている。

同番組は「GUNSMOKE」の20シリーズに追いつけ追い越せを狙っているようだが、この番組の成り行きは、次シーズン(19シリーズ)で契約が切れる声優たちの辞任に左右される。

しかし、7月27日にはじめての映画が公開になる。また年末までにビデオゲームも販売される予定で、テーマパーク建設の話しもある。クリエーターのマット・グローニングは、ホーマーの人生に焦点を当てた、スピンオフ番組を制作することも考えているとのこと。そして「もしバートが居なくなった場合にどうすればいいか、色々考えているところ」だそうだ。

5月20日(日)USA TODAY テレビ・メディアより http://www.usatoday.com/life/television/news/2007-05-17-simpsons-main_N.htm?csp=34

(記事解説)

私にとって、30代前半の米国人男性である自分の恋人とその友人が、日曜日の8時頃にアニメを見るのを楽しみにしていることを知ったときの驚きは、「彼らはなんて幼稚なのだろうか」と思ってしまったほどだ。

だが実際に一緒に番組を見てみると、ホーマーやマージが抱える夫婦間の問題や、バートやリサが巻き込まれるトラブルは、いじめの問題、友情とは何かなどなど、10代の子供達が楽しめるものというより、むしろ成人した大人に投げかけるような内容がほとんど。

なんとも奥が深い。これはもしかしたら、私はこの番組について、勘違いしていたかもしれない、と思うようになった。

ちなみに「シンプソンズ」といえば、私が米国にはじめて足を踏み入れた90年代前半に最初のブームが起こったアニメ。あらゆるショップで、Tシャツやら雑貨やらキャラクター商品が売られ、ティーンたちは番組のストーリーについて、笑いながら語っていたことを記憶している。

あれから15年以上。新世代の視聴者を取り込みつつも、30代に差し掛かった当時のティーンが、未だに同番組を支える大切な視聴者となった。

長寿アニメというと、日本には「サザエさん」や「ドラえもん」があるのだが、これらの番組と「シンプソンズ」が大きく異なる特徴としては、「コメディー性」と「社会風刺性」にあると思う。(ただし、書籍マンガのサザエさんやドラえもんには、ギャグやオチもあるし、社会風刺を描いてもいる。)

アメリカを知りたければ、シンプソンズを見ろ、という人もいるくらいで、登場する架空の街スプリングフィールドには、ブッシュ大統領も登場するし、人気バンド、グリーンデーも出てくる。イラク戦争に対するメッセージも描かれているし、ジャネット・ジャクソン事件もブラックユーモアとして取り上げられた。人気テレビドラマ「24」だって、番組の話題に上るのだ。

ヒューストンにあるライス大学では、アラステア・ノークロス教授による「シンプソンズ」という講義があるほどで、その社会性は研究に値すると認知されているようだ。

ところでこのノークロス教授は、シンプソンズの人気はメッセージ性よりも、単純に「ジョークがおもしろい」と指摘。確かにコメディーである限り、その点は重要で、ジョークが飛んでないと、番組の人気は衰えるに違いない。

そんな状況の中、番組制作の裏ではこの「時代にあった最高のジョーク」を生み出すために、類まれなる努力がされてきた。シナリオ制作ルームにはこれまでに90人以上のライターたちが出入りし、常に新鮮で、時代に適したジョークを生み出してきたのだ。

ちなみに最近入ったシナリオライターは、1980年以後生まれで、まさに長男バートの誕生設定時期と同じ頃の生まれとのこと。こういう若いシナリオライターたちは、生まれた頃からシンプソンズとともに育ってきた世代。番組を作り続けてきたトップのメンバーにとっては、若手クリエーターのジョークやアイデアは、ある意味新鮮で、歴代のシンプソンズ番組で取り上げられたジョークやユーモアが、自然に身についていることに気づき、驚くこともあるらしい。

このような社会風刺コメディーの番組制作は、常に時代に敏感であることが求められ、毎週放送されるエピソード制作には集中力と発想力を要する。そして、何よりも番組制作に対しての意欲や熱意がない限りは、長く続けることはできないはずだ。まもなく19シリーズに入ろうとする同番組には、これからもアメリカン・ジョークを飛ばし続けてほしい。

ちなみに、時期は未定だが、映画版の日本公開も決定しているようである。

●The Simpsons Movie Trailer

●The Simpsons Movie : Trailer 2

●The Simpsons Movie Trailer #3


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