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竹内まりや 6年ぶりのアルバム『Denim』が初登場1位

  • レコード・コレクターズ 編集部

  • 祢屋 康


●アルバム『Denim』

竹内まりやが6年ぶりのオリジナル・アルバム『Denim』を5月23日にリリースした。チャートでも堂々、初登場1位だそうである。

竹内まりやは78年にデビュー、当時はアイドル的な存在として売り出された。といってもいわゆるアイドルとは一線を画していたような感じはあったかもしれない。

個人的には整髪料のCMに出ていた綺麗なお姉さん、という印象が強い(当時はまだ小学生─中学生でしたから)。バック・アップしていたミュージシャンや作/編曲家たちも、加藤和彦や林哲司、後に結婚することになる山下達郎、細野晴臣といった実力派が中心だったこともあるだろう。

79年の「SEPTEMBER」、80年の「不思議なピーチパイ」でヒットを出し、お茶の間にも知られる存在となり、前述のようにCMにも登場した。

しかし、81年に竹内まりやは歌手としての活動を休止、82年にミュージシャンの山下達郎と結婚することになる。2年後の84年にアルバム『VARIETY』を発表するが、これが“シンガー・ソングライター”としての竹内まりやの実質的なデビューということになった。

自作曲ということでは活動休止前の“アイドル時代”にもいくつかあったが、書き溜めた曲を聞いた山下達郎(『VARIETY』以降の彼女のすべての作品のプロデュース/アレンジを手がける)は、作品の質の高さに驚いたらしい。

以前のように作曲家から曲を集めてアルバムを作るという計画を中止し、全曲彼女の自作
でいくことに決めた、という話をラジオで聞いた記憶がある。

『VARIETY』が出た84年頃、僕自身は高校生で、山下達郎のFMラジオの番組をよく聞くようなファンだったこともあり、このアルバムは何度も繰り返し聞いた。1曲目の冒頭から山下達郎の十八番の多重録音によるコーラスが飛び出し、二人の共同作業の成果にわくわくしたものだ。

87年には他の歌手に提供した作品を自ら歌う『REQUEST』を発表。前後して「駅」(87年)も大ヒットするなど、前作からのブランクをものともせず、というよりもさらに大きな成功を収めた。

それからも音楽業界の常識からは外れたゆったりとした活動のペースが変わることはなかったが、ミリオン・セラーが頻繁に出るようになった音楽業界の状況も追い風になったのか、『家に帰ろう』(92年)、『IMPRESSIONS』(94年)と90年代の前半に発表したアルバムがミリオン・セラーに。特にベスト・アルバムの『IMPRESSIONS』の売り上げは350万枚を超えたという。

00年には18年ぶりというライヴを日本武道館で行なった。そのライヴをまとめたアルバムに続き、01年に『BON APPETIT!』、03年には全曲洋楽カヴァーの『LONGTIME FAVORITES』とペースはくずさす、着実な人気をキープしてきた。

6年ぶりの新作『Denim』も曲のバラエティの豊かさ、作りの丁寧さは今までのアルバムと変わらないが、僕自身が一番気に入ったのは「Never Cry Butterfly」という曲だ(もともとはシングル「スロー・ラヴ」のカップリング)。

これは珍しく竹内まりやの自作ではなく、彼女の大学のサークルの先輩でもあるミュージシャンの杉真理や、松尾清憲、伊豆田洋之らがやっているグループ、ピカデリー・サーカスの曲を取り上げたもの。

ゴスペル風味と杉真理らの得意なビートルズ・テイストも盛り込まれた力強いバラードで、アレンジと演奏もピカデリー・サーカスが担当している。竹内まりやの力のこもった、しかしさわやかな歌が歌詞のイメージにあってとてもいい。

タイトルのフレーズが折り込まれた話題の「人生の扉」は、初めて聞いたときに“五十路を越えた…”という歌詞に仰天して、若輩ものの私はまだ素直に受け止められない…。

しかし、久々にセンチメンタル・シティ・ロマンスが参加したカントリー・バラード風の演奏は風通しよく心地よいので、これを敷衍した、竹内まりや版カントリー風アンプラグド・アルバムなんかも聞いてみたいと思ったりもする。ともあれ、山下達郎の活動共々、どこまでいけるか、これからも楽しみにしたい。


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