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NO STYLE 広告論 勝手にCMしやがれ! 

YouTube上に、素人が作ったSONY「Bravia」のパロディ映像がたくさんアップされている現象をお伝えしたことがある(http://mediasabor.jp/2007/03/no_styleblaviayoutube.html)。

これだけ簡単に映像を公開できる時代になると、お節介にも個人で「勝手にCMをこしらえて流してやろう」なんて輩が出て来ても一向に不思議ではない。

もちろん、「企業をもうけさせてあげたい!」なんて殊勝な心がけでCMを作る者はいない。理由はただ「面白いから!」。モチベーションがピュアなため、かどうかは知らないが、なかにはマニアックに凝ったものもあり、国境を超えたヒットCMが生まれるケースまで出ている。

メディアサボールの読者ならすでにご存知の方も多いだろうが、例えば3年くらい前から人気を呼んでいる、iPodの裏CM。日本人ならだれもが知っている、サザエさんのオープニングのパロディ映像に、iPodのCMソングをあてたもの。

サザエさん初め、波平、フネ、タマなど漫画のキャラクターのシェイプをシルエット化し、全員にiPodを持たせた。意外に思える取り合わせだが、映像が音にしっかり同期しているため、妙にハマッていておかしい。

●ipodサザエさん

笑うに笑えないものもある。iPodと同じ頃流れていた、フォルクスワーゲンPoloのニセCM。Poloに乗り込んだアラブ系の男性。クルマをレストランの隣に停めると、彼は手元のスイッチをオン。

すると車内に閃光が走り爆発音が轟くが、その衝撃は車内に留まりクルマはビクともしない。そこに「Polo Small but tough」(小さいけどタフ)のコピー。

男はテロリストだったが、クルマが丈夫だから中で爆発しても周囲は無傷というオチである。Poloの名台詞を逆手にとったアイデアが秀逸だが、ネタとしてブラック過ぎたのか、のちに訴訟沙汰に発展したとの噂も聞く。

●フォルクスワーゲン- Suicide Bomber

パロディではないがこれはどうだろう? “ダイエットコークにメントス”。これを聞いてピンと来ない方は、後を読む前にとりあえず以下の映像を見てほしい。 

●Mentos


どうでしょう? なんてことないワイドショー風の実験とも言えるが、初めてみたときには驚きがある。「ホントなの?」とちょっと試してみたくもなる。

この映像がYouTubeにアップされたのは、2005年12月1日とされているが、もしこれが本当なら、その日はYouTubeが公式サービスを開始した当日。即座に載っているところをみると、すでに、かなりの人気があったようだ。ちなみに今日(5月29日)までのViewsは1,101,837人となっている。

すごいことはすごいが、もちろんこれだけではメントスやダイエットコークのCMとは言えない。強引を承知でテレビの視聴率(関東地方)に換算すると、3%いくかいかないか。自発的に見る見ないは別として、マス広告としてはたいしたことはない。

しかし、ここがネットの特長と言えるのだが、その後(波及効果)がすごいのだ。

容易に想像のつくことだが、メントスとダイエットコークさえあれば誰でもできる手軽さから、同様の試み(ダイエットコークほかの炭酸飲料にメントスを投入して、中身を吹き上がらせる)があとを断たず、いまではビックリするほど多くの類似映像がアップロードされている。
YouTubeにmentos、cokeと入れて一度検索してみて頂きたい。
http://www.youtube.com/results?search_query=mentos+coke&search=Search
試しに二、三ご覧頂けると、その熱狂ぶりもおわかり頂けると思う。

それだけではない。単なる素人の実験VTRなら大量に作られてもそれほど影響力はない(多くが自己満足的映像で見る気がしない)わけだが、やがてプロ(?)によるクオリティの高い作品が登場するに及んで、それは素人映像からCMに変わった。Eepybirdという二人組のパフォーマンスユニットが、メントスによるコークの噴出を一種の芸として披露する映像をお披露目したのだ。

例えば、この映像をご覧いただきたい。
●Coca Cola & Mentos (COKE ROCKET DOCUMENTAL)


白衣を着た二人の男が、机にズラリとダイエットコークのボトルを並べて、まるで水芸のように自由自在にコーラを天高く噴出させてみせる。

ダイエットコーク101本と523個のメントスを使ったこのショーは、二人のコメディアンじみた挙動がユーモラスで、BGMも凝っており、エンターテインメント作品として十分楽しめる作りだ。これがネット上で話題にならないわけがなく、続編も登場。そこでは“実験”もエスカレートし、彼らのwebサイトに行けば何パターンもの映像が楽しめる。(http://eepybird.com


サイトに書かれている最新情報によれば、今年5月、彼らは504本ものダイエットコーク噴水を成功させ、その記録はギネスに載るらしい。バカバカしいようにも思えるが、記録的一瞬を収めたドキュメント映像(サイトにアップされている)を見てみると、なんとステージにメントスのロゴが……。

もともとは個人の楽しみ(作品)として作られた映像が、その人気が高くなるにつれ、どこかで「広告」に変わったのであろう。この一連の騒動により、メントスの売上げは以前に比べて15%アップしたとも言われる。

専門家はこういった自主制作CMをunauthorized commercial(あるいはFake Ad)と呼んだりするようだ。Braviaの例を見てもわかるように、その大半は面白くない素人映像なのだが、まれにこういうヒット作が生まれると、CM以上に「CM」として機能することがおわかり頂けるだろう。その際決め手になるのは、アイデアの鮮やかさとクリエイティブの質の高さであることは言うまでもない。


※前々回ご紹介したTOYOTA「MEET篇」がYouTubeで見られるようになりました。
http://mediasabor.jp/2007/05/no_styletoyotacm.html

●Toyota Meet



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