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米FOX局がCMと番組の融合:プロダクト・インテグレーションを積極導入


●審査員にはスター・ウォーズのレイア姫でおなじみ、
 女優キャリー・フィッシャーも加わり、辛口コメント(?)を
 披露する。

(記事要約)

米国テレビ・ネットワークFOX局は、5月22日夜9時より新番組『On The Lot』の放送(6月4日以降は月曜、火曜8時)を開始する。映画監督スティーブン・スピルバーグとリアリティ番組制作に実績のあるマーク・バーネットが共同プロデュース。12000の応募から選ばれた50人の挑戦者が自作の映画で対決し、視聴者投票によって毎週何人かが落とされていく。優勝者はドリーム・ワークスで100万ドルの映画製作ができるというシステムだ。

番組のメイン・スポンサーは、車のFORD社、携帯電話のVERIZON社。同番組ではCMだけではなく、番組内外のコンテンツに商品が登場する「プロダクト・インテグレーション」が積極的に行われる。これによって、FORDの車やVERIZONの携帯電話は番組内や挑戦者が製作する映画の中で優先的に使用される。

「プロダクト・インテグレーション」は、スピルバーグの映画でも何度か行われてきた。番組の中で挑戦者たちは、課題を受けて何度も映画を製作する。そこにスポンサーの商品を絡めることで、これまでにない自然な「プロダクト・インテグレーション」が可能になると、製作陣は自負している。

2007/5/21/The Hollywood Reporter(1930年創刊、米国を代表するエンタテインメント業界紙)

番組のウェブサイト:
http://www.thelot.com/

(解説)

スピルバーグ監督と彼の創設した映画会社ドリーム・ワークスがバックアップ。『Survivor(アメリカ版)』『The Apprentice(ドナルド・トランプ主演)』など数々のリアリティ番組をヒットさせたマーク・バーネットがプロデュース。FOX局看板番組『American Idol』終了後の枠(など)で放送。以前にもケーブルHBO局で新人映画監督にチャンスを与える『Project Greenlight』というシリーズがあったが、新番組『On The Lot』の方は遥かにスケールがでかい。

ここで言う「プロダクト・インテグレーション」とは、よく言う「プロダクト・プレイスメント」とほぼ同義語。視聴者が録画してCMを飛ばしてしまうなら、番組内にスポンサーの商品を入れ込んでしまえという発想だ。スピルバーグ作品に限らず、ハリウッドの映画でも頻繁に行われている。映画の中にスターバックスやバーガーキングが登場したら、何らかの広告費が動いているのだ。

しかし「プレイスメント=配置」だけでは生温い。番組内に徹底して商品を融合させていく。それが「インテグレーション=統合」たる所以だ。番組プロデューサーのマーク・バーネットは『Survivor』の成功から、ブランド・インテグレーションのパイオニアと言われている。

『On The Lot』の場合、番外編などのコンテンツはVERIZON社の動画サイト「V CAST」に独占的に提供される。視聴者投票にはVERIZONのテキスト・メッセージ機能が利用される。VERIZON社は番組に連動した視聴者参加のビデオ・コンテストを開催する。FORD社に関して言えば、番組内の出演者の移動はもちろんFORDの車。挑戦者の作る映像はさながら新型ESCAPEのプロモーション・ビデオになるともささやかれている。

あまりやり過ぎると視聴者はうんざりするかもしれない。番組のエグゼクティブ・プロデューサー、ダリル・フランク氏(ドリーム・ワークス・テレビジョン)は、「しつこくならないよう、細心の注意を払っている」ため心配はないとコメントしている。

デジタル放送にデジタル・レコーダーが普及すれば、ますますテレビはオンデマンドになる。もはやCMを飛ばすことなど、70歳を過ぎた私の父でも簡単にできる操作となった。テレビがこれまでの広告効果を維持するために、「プロダクト・インテグレーション」の発想は重要な鍵となるはずだ。新番組『On The Lot』における番組製作陣のお手並を拝見したい。


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