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維持継続困難に直面するドイツの健康保険制度

<記事概要>

ドイツのメルケル首相が抱える大きな内政面の課題は、健康保険制度改革である。福祉国家として有名なドイツの社会制度は、日本の保険制度のモデルにもなっているが、その福祉制度が今や、維持継続できない状態であり、福祉政策自体の見直しをせざるを得なくなっている。

今回メルケル率いるキリスト教民主党と社会民主党連立政権が目標としている改革の特徴は、

1)国民皆保険化、2)国庫補助の拡大、3)医療基金の導入である。

ドイツの保険には、公的保険と、民間医療保険の二種があり、被雇用者は自動的に公的医療保険の加入義務があるため、約14%の保険率を、雇用者と折半する。失業者や社会扶助受給者は、公的な保証を得られ、月給が3,975ユーロを超える高所得者は、公的保険加入が免除されるため、大半は民間医療保険に加入している。

(2007年6月4日付Der Tagesspiegelより)

<解説>

保険加入義務がある場合、つまり社会扶助が必要な場合は、公的保障を受けられるし、被雇用者の場合は、雇用者が折半してくれるため、まったく問題がない。しかし、経営者、フリーランスは、被雇用者でも、被扶養者でもないため、任意加入となり国からの援助を受けられないどころか、折半する雇用者もないため、割高の保険料を自分で負担しなければならない。

こうした金額に関する問題、また健康に問題を持つ場合、民間保険の加入を拒否されることがあったため、保険加入していないドイツ人の数も多かった。今回の改革では、こうした非加入者をなくし、皆加入を目標としている。しかしながら加入義務が実際行使されるのは2009年1月からであり、現在のような移行期間中は、まだまだ不透明な点もあるのが実状である。

公的保険の加入者を増やすには、今まであった規定を変更する必要もでてきた。ドイツでは、民間保険に一旦加入すると、公的保険に再加入をすることが難しかったのだが、今回の改革では一旦加入義務を失った人も、再加入しやすくなった。

ところが、大手の公的保険会社をみると、過去2ヶ月でたったの1000人程度しか公的保険に再加入してなく、予定していた30万人に比較すると、かなり低い数値に留まっていることがわかる。

健康省では、公的保険に再加入しない者は、4月から保険料を後から払い込む必要があること、また5%の追加料金が課せられるということを理由に、再加入しない国民に警告をしているが、効果は見られないということだ。

今回の改革では、高所得者を公的保険に加入させることで、保険料収入をあげ、保険料アップを抑えようという財政側の考えがあっただけに、政府は少し焦り気味であるが、フリーランスや収入の低い個人経営者にとって、保険料は、いまだ高く、支払いが難しい状態であるといえる。


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