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ポール・マッカートニーのソロ音源がいっせいに配信スタート


●『追憶の彼方に─メモリー・オールモスト・フル』

「ぐっさん」こと山口智充がホストを務める音楽TV番組『MusiG』に「佐野Rock」というコーナーがあります。

ミュージシャンの佐野元春が視聴者からハガキで送られてくるお題に対し、それが“ロック”か“ロックじゃない”かを答えるというユニークなものでしたが、現在は“ポールorジョン”にリニューアルされています。

ここでの“ポール”はポール・マッカートニー、“ジョン”はジョン・レノンのこと。

つまり、視聴者が出してくるお題に対して、当てはまるのはポールなのかジョンなのかを佐野が理由を説明して答えるわけですね。

ここで面白いのは佐野の解釈で、たとえば、「飴玉を最後までなめずに噛んで食べてしまうのはポールでしょうか、ジョンでしょうか?」という質問(だいたいこんな感じで、シリアスな内容ではありません)に対し、正解を「ポール」としたうえで、「ポールはわりとせっかちなんです」といったようなもの(記憶に頼って書いているので、正確ではないかもしれません。ご容赦ください)。

短いコーナーではありますが、佐野の解釈は不思議な説得力と面白みがあり、僕は毎週楽しみにしています。

その“せっかちな”ポール・マッカートニーが、新作『追憶の彼方に─ メモリー・オールモスト・フル』を今月6日にリリースしました。

ポールにとってはヒア・ミュージック(コーヒーのチェーン店として有名なスターバックスとジャズ・レーベルとして有名なコンコードが新たに設立したレーベル)へ移籍しての初となる作品で、ヒア・ミュージックにとっても記念すべき最初のリリースになります。

ネット配信のiTunes Storeでも、先月15日からアルバム13曲の予約が開始され、米国では予約特典として、予約時にシングル「エヴァー・プレゼント・パスト」のダウンロード、また、配信時にシングル「ダンス・トゥナイト」のPV映像がダウンロード可になります。

一方、日本では「ダンス・トゥナイト」の限定アコースティック・ヴァージョンが、予約購入者の特典として、ダウンロード可能になります。

ちなみに、「ダンス・トゥナイト」の映像監督は、ビョークやケミカル・ブラザーズで有名な、音楽PV界の革命児ともいえるあのミシェル・ゴンドリー。

「えー、だったらアメリカの特典のほうがいいよー」とお嘆きのあなた、ご安心を。先月の23日から「ダンス・トゥナイト」のPVはYou Tube上で公開されているのです。

●OFFICIAL - PAUL MCCARTNEY- DANCE TONIGHT



なお、同じ23日にポールのソロ作品(ウイングス時代を含む)のカタログが、まとめて配信可能になりました。パッケージ・ビジネスを応援する立場としては喜んでばかりもいられませんが、まあ、時代の流れですね…。

ポールの膨大なカタログを前に、「なにから聴けばいいのかわからないよー」という声もあるかと思いますので、僕からのお薦めを。

僕が編集に携わっている『レコード・コレクターズ』については、現在「80年代・ロック・アルバム・ベスト100」という特集号が店頭に並んでいますが、僕の推薦盤はここで58位にランクインした『タッグ・オブ・ウォー』。


●『タッグ・オブ・ウォー』

「なんだよ、お薦めにしては順位低いな」とがっかりされた方、申し訳ありません。でも、もっと上位に入っていてもおかしくない内容なんです!! なんで、こんな微妙な順位になってしまったかというと、僕の分析はこうです。

前後のアルバムは、YMOとの関連で語られたり、マイケル・ジャクソンとデュエットしたりと、内容が『タッグ・オブ・ウォー』に比べて劣る(私見です。念のため)にも関わらず、80年代という時代にはマッチしていた。『タッグ・オブ・ウォー』にはスティーヴィ・ワンダーとの「エボニー&アイボリー」がありますが、やはり80年代はスティーヴィよりもマイコーの時代だったんですね。

しかし、時代に風化していないという意味では明らかに『タッグ・オブ・ウォー』のほうが上。ジョージ・マーティンが久々にプロデュースを手がけていることもあって、ビートルズ時代のポールを思わせる曲がたくさん入っています。ビートルズ・テイストを期待される方には、ソロ・アルバムの中では本作がベストと言えるでしょう。

そして、タイトル曲の歌詞。これに関しては、米国/ソ連の対立がテーマだとか、白人と黒人の関係がテーマだとかいろいろ言われてきましたが、僕はジョン・レノンとの関係をストレートに歌ったものだと思っています。

『タッグ・オブ・ウォー』はジョンの死後、初めて発表されたアルバムになるわけですが、ヘッドフォンを耳にあて、まるで自分の世界にこもっているかのようなポールのジャケには、グッとくるものがありますね。

さて、これが掲載される6月18日は、ポールにとって記念すべき65回目の誕生日。そして、僕にとっても37回目の誕生日になります。

 

■関連ブログ

●つれづれなるままにメモリー・オールモスト・フル
「1980年代ロック・アルバム・ベスト100」
http://wingsfan.blog64.fc2.com/blog-entry-1550.html

●One Way To The Heaven 2007/06/09
「ポール・マッカートニー 『追憶の彼方に─メモリー・オールモスト・フル』」
http://d.hatena.ne.jp/huraibou/20070609/p1

●バックシートに座って 2007/06/05
「ポール・マッカートニー 『追憶の彼方に─メモリー・オールモスト・フル』」
http://eggs-up.blogzine.jp/backseat/2007/06/post_123c.html

 


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