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診療費をWEB上で公開した米国の医療機関─。病院競争時代の処方箋となるか

患者の診察に必要な費用を一覧表にして、ウェブサイト上で公開する米国の医療機関が現れた。医療費の高騰が続くなかで、患者に安心感を与えようとの狙いだ。斬新な取り組みと評価される一方、保守的な医療関係者の間からは、「個々の診察内容に値札をつけるのは医療の安売り」との批判もでている。

診療費の公開に踏み切ったのは南カリフォルニアの医療グループ、ヘルスケア・パートナーズ・メディカルグループ。(http://www.healthcarepartners.com/index.asp

このグループは、ロサンゼルスやその近郊の39カ所の病院とそこに勤務する400人以上の医師との間でパートナーシップを結び、同一グループの医療機関として運営されている。いままでに診察してきた患者数は50万人に上るという。

診療費は5月からウェブサイト上で公開され、誰でも見ることができる。約60項目に渡る一覧表には基本的な診療内容とその値段が年齢別や男女別に記され、一目瞭然で分かるようになっている。

例えば40歳男性が胸部から腹部にかけて不調を訴えて診察を受けた場合。

まず医師による問診料金が140ドルから160ドル。胸部レントゲン撮影が61ドル。そして大腸内視鏡検査を行った際には424ドル(設備利用料は別途)が請求される。

この他、スポーツ医療や海外旅行時の予防接種などのケースも、それぞれ料金が明示されている。料金は医療保険に加入していない人に適用される料金なので、患者が保険を持っている場合、そのカバー範囲によって、ここから一定の額が免責となる。カスタマー・サポートへ電話をして、詳細なアドバイスを受けることも可能だ。

実際には、病状によって複合的な診察を行う場合もでてくるだろうから、考えていたのとは違う額になることも予想される。だが、医者にかかる前にだいたいの目安が分かるだけでも安心できるはずだ。

米国の病院では、請求書が後日郵便で自宅に送られてくるので、診察が終わってすぐに病院窓口で費用を支払う必要はない。しかし、日本人の感覚からすると医療費は相当に高く、ちょっとした診察でも500ドル程度の請求が送られてくるのはザラ。盲腸の手術で数千ドル、ちょっとこじらせると1万ドルもの出費を覚悟しなければならない。

日本の国民健康保険に相当する制度がないために、民間の医療保険が個人の医療費をカバーしているが、通常は患者も相応の免責料金を支払わされる。病院によって診察料金は違うので、事前に料金が分かると患者にとっては大きなメリットだ。

カリフォルニアは全米でも病院同士の競争が激しい場所といわれ、ヘルスケア・パートナーズ・メディカルグループに追随し、診療料金を明示する病院が今後現れてくるのではないかと予想されている。

いままで患者に分かりづらかった診療費を開示し出した背景には、いくつかの理由がある。

一つは、ドラッグストアチェーンやウォルマートといった大手小売店が店舗内に簡易診療所を設置して、予防注射や血圧測定などの医療サービスを始めたことだ。わざわざ病院へ行かずとも、近所のこうした店で買い物のついでにインフルエンザの注射を受けられるのは何より便利。病院側が患者を奪われないかと危機感を持った。

また、ブッシュ政権などが医療機関に対して、情報開示を求めていることにも関係している。それぞれの診療料金が明らかになることで患者側の意識も高まり、不必要な治療を減らす効果が期待される。結果として医療費の高騰を抑える狙いだ。

だが、全ての病院や医者が診療料金の開示に賛成しているわけではない。医療保険会社のなかには、特定の地域で診療メニューの個別料金を公開しているところもあるが、医師が協力的ではないという。小売品のように値段をつけてリストで公開するのは、医者という専門職の品位を落とすとの考えからだ。

医療分野を安っぽくさせるだけとの声もある。確かに品物と人間の体は違うため、値段だけを見てその病院の良し悪しを判断するのは難しい。

だが、そうした事情を考慮しても、診療費を事前に患者へ伝えることには意味があると思える。医療費がGDPの16%を占めるまでに跳ね上がってしまっている現状では、「治療の値段」は病院を選ぶ際の大きな選択肢の一つだからだ。


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