人気ビデオブログ「Ask a Ninja:忍者に聞け」を使った広告キャンペーンの成功
- 米国在住ジャーナリスト
<記事要約>
ウェブ検索サイト「Ask.com」(アスクドットコム)が展開する、ユニークなウェブ広告キャンペーンが成功している。アスクドットコムが広告の媒体として選んだのは、ビデオブログ「アスク・ア・ニンジャ:忍者に聞け」(http://www.askaninja.com/)。 月間約185万ページビューの読者を抱え、2007年のYouTube最優秀シリーズ賞に輝いた人気サイトだ。ビデオブログ(Video Blog)を媒体にする、新しい形の広告キャンペーンが登場した。
(2007/6/20 ClickZnews)
<解説>
インターネット検索エンジン「Ask.com」(アスクドットコム)は、勢いのあるグーグル(Google)やヤフー(Yahoo)に比べれば今ひとつぱっとしないが、米国検索市場4位のシェアを占めるサイトである。
ITmedia Newsによると、6月時点で米国検索市場のシェア率は、1位グーグル(65.13%)、2位ヤフー(20.89%)3位MSN(8.4%)、そしてアスクドットコムは4位(3.92%)。
今回アスクドットコムが広告媒体に選んだのは、「Ask a Ninja:忍者に聞け」。Ask.comと名前が似ていることも、広告媒体として選んだポイントとなった。
媒体となった「Ask a Ninja:忍者に聞け」とは、ロサンゼルスを拠点に活動するコメディアン、ケント・ニコラス氏と、ダグラス・サリン氏によって制作されているビデオブログだ。
もともと二人は2000年にウエストハリウッドのコメディアン養成所で出会った。卒業後も二人は副業をしながら週末に短編フィルムを撮り続けてきたが、出来のいいフィルムをコンテストに応募するくらいで、残りのフィルムは行き場がない。
インターネット上でフィルムを利用できないかと考え始めていた。そんな頃、2005年にビデオ映像を共有できる、YouTubeのサービスが始まった。
かねてから行き場のないショートフィルムの使用方法を思案していた二人は、ショートコントをウェブに載せることを思いついた。忍者が視聴者の質問に答えながら笑いをとるというのがコントの内容だ。
一般の人達は、まだYouTubeの使い道さえ分からない、2005年11月が第一回目の映像投稿。ニコラス氏がプロット執筆、撮影、編集を勤め、サリン氏が忍者に扮し、毎回視聴者から送られてくる質問に次々と回答していく。サリン氏が忍者になりきった、とぼけた回答がとても笑えるのだ。
たとえば、「地球温暖化防止」については、下記のように回答しています。
「地球温暖化を防ぐには、リサイクルや、再利用が大事。例えばシャツなんかはさ、10回から11回は着れるよ。昔はさ、一回着て洗濯してたんだけど、今はシャツを着て、洗濯かごに入れて、またそこから取り出して着る。再利用が大事さ。」
○Ask a Ninja Special Delivery 16: Global Warming(YouTube映像)
http://www.youtube.com/watch?v=xVj1jRZaBZI 02:36
忍者のビデオブログは視聴者が次第に増え、CNNやABCニュースで特集されるようになる。無名だった彼らは、今やテレビやCMにまで出演する人気者になった。現在ビデオクリップを更新する度に、30万人の視聴者が訪れる大人気サイトである。
「Ask a Ninja:忍者に聞け」は、有力ブログに広告を配信するブログネットワークFederated Media
(参照:メディアサボール過去記事 http://mediasabor.jp/2007/05/federated_media.html)に今年から参加し、Federated Mediaの引き合わせで、検索エンジン「Ask.com(アスクドットコム)」からのキャンペーンオファーが実現したという訳だ。
アスクドットコムが「Ask a Ninja:忍者に聞け」を媒体に、今年9月までブログ上で行うキャンペーンは、バナー広告の他、忍者がビデオクリップ内でスポンサー名、アスクドットコムを読み上げるという方法も用いている。
「このエピソードは、アスクドットコムの提供でお送りしました。」というフレーズは、従来からテレビで用いられていたシンプルな方法だ。単純な宣伝方法だが、忍者のジョークを交えたスポンサー名の読み上げは、楽しく最後まで見逃せない。
さらに限定でボーナスクリップを視聴できるという仕掛けを用意しており、クリップを見るためにはキャンペーン用に忍者が作った「ニンジャイアンツ」や、「ミニジャ」などの造語をアスクドットコムから検索しなければならない。グーグル(Google)や、ヤフー(Yahoo)などの他社検索サイトからは検索できないようにしているため、視聴者にアスクドットコムの検索サイトを試してもらう機会を作れるという訳だ。
キャンペーン開始から2週間の時点で、視聴者の8.3%がアスクドットコム検索を使用してボーナスクリップを視聴しており、この結果は、アスクドットコムが期待した以上のものだと言う。
ClickZnewsにて、Federated Mediaのチャス・エドワード氏は、「これだけの成果をあげることのできる広告はない。」と話している。
「Ask a Ninja:忍者に聞け」とアスクドットコムが組んだ広告キャンペーンは、ビデオクリップやブログなどの新しいツールを駆使することで、反応率の高い仕組みを作り上げた。
斬新な発想や仕掛けがあれば、ギャラの高い著名人を起用しなくても、ネット(ブログ、ビデオクリップ)が良い広告媒体になる、という事例になったのではないか。広告手法よりもウェブツールが先行して発達しているのが現状だが、ビデオクリップやブログ、SNSなどを上手く利用したクリエイティブな広告が数多く生まれるのは、いよいよこれからかもしれない。
○中田英寿 Take Action! 7.29
今回のブログテーマとは関係ありませんが、サッカー元日本代表の中田英寿さんが、YouTubeで参院選の投票を促す「Take Action! 7.29」という動画を公開しています。引退後に続けている「自分探しの旅」の中で、世界が抱える貧困や障害者、病気などの問題に直面したことで、日本の多くの人にもっと政治に関心をもってほしいとの考えからうまれたものだそうです。 7月29日(日)には、投票に行きましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=hqKJ8tI_5JM 00:30
■関連情報
◆「Ask a Ninja:忍者に聞け」
○「Rain City Studios」というウェブ制作会社のブログ上インタビュー
左がプロデューサーのニコラスさん、右が忍者のサリンさんです。
http://www.raincitystudios.com/thestandard/blogging/interview-with-douglas-sarine-and-kent-nichols-co-founders-of-ask-a-ninja
○Unmasking Ask-A-Ninja(Forbes インタビュー映像)
http://www.youtube.com/watch?v=Ra1RYLmLuuQ 06:45
○アメリカで大ヒットしたコメディ映画「Blades Of Glory」ですが、このプロモーションにビデオブログ「Ask a Ninja:忍者に聞け」が採用され、主演俳優2人と忍者との対談映像が公開されています。
<映画のストーリー>
フィギュア・スケート界のライバルだったチャズ(ウィル・フェレル)とジミー(ジョン・ヘダー)は、同時優勝した世界選手権で大乱闘を繰り広げた結果、金メダル剥奪、男子シングル部門からの永久追放という処分を受ける。それから3年半後、彼らが見つけた復帰のための抜け道とは、史上初の男2人組としてペア部門に出場することだった。2人はいさかいや互いの違いを乗り越えて勝つことができるのか?
Blades of glory公式サイト
http://www.bladesofglorymovie.com/
「Blades Of Glory」 Movie Trailer (YouTube映像)
http://www.youtube.com/watch?v=fM4yekiPo3w 02:22
※Ask A Ninja, Special Delivery 14 “Blades of Glory”(主演俳優との対談映像)
http://www.youtube.com/watch?v=XQM2VYaWzSs 04:08
○ポッドキャストジャーナル 「Ask a Ninja」 2006/03/10
http://podcast-j.net/archives/2006/03/ask_a_ninja_podcast_vodcast.php
○mmm_omonの日記 「Ask A Ninja: Question 9 “Ninja Love”」2007/02/10
YouTube人気ムービーの聞き取りに挑戦
http://d.hatena.ne.jp/mmm_omon/20070210/1171040555
◆オーストラリアの人気YouTube映像投稿者
○ケイトリン・ヒル
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
TheHill88を名乗る有名YouTubeユーザーである。オーストラリアのブリスベンの自宅からヴィデオを製作し、編集し、アップロードしている。YouTubeで相当数の視聴率を維持してきた結果、ヒルは2007年5月に「YouTubeパートナー」の最初の一人となった。この特権的な地位にはプロモーションの機会を得る利点と広告主からの収益分配をもたらす利点がある。
○Re: LonelyGirl: Lazydork is Better Than You(YouTube映像) 01:05
http://www.youtube.com/watch?v=CQO3K8BcyGM
○TheLONELYHill88 ─Leaving LA(YouTube映像) 02:31
http://www.youtube.com/watch?v=nsjuPX8C2lo
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◆ネットマーケティングのノウハウ、成功事例
○POP*POP 2006/11/26
「口コミマーケティングに欠かせない7つのテクニック」
http://www.popxpop.com/archives/2006/11/7.html
○CNET 2006/04/03
注目ブログの仕掛け人が語る「ブログプロモーション成功の鍵」
http://japan.cnet.com/event/story/0,2000055936,20099995,00.htm
○FPN 2006/05/24
山崎秀夫 SNS『YouTube』で突発した音楽のバイラルマーケティング成功事例
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=1443
○[mi] みたいもん! 2006/05/29
「涼宮ハルヒが起こしたYouTubeの憂鬱、ネットマーケティングの大成功例」
http://mitaimon.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/youtube_e773.html
◆YouTubeに関するコラム(ブログ)
○小飼弾 404 Blog Not Found 「YouTubeの本当の価値」2006/10/13
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50657238.html
○大西 宏のマーケティング・エッセンス 2006/10/14
「GoogleのYouTube買収は愚なのか?」
http://ohnishi.livedoor.biz/archives/50253311.html
○ふじたやすし CNETブログ エコノミー、マーケティング、そして IT
「Google が YouTube に求めるもの」 2006/10/08
http://rblog-media.japan.cnet.com/0002/2006/10/google_youtube__68e6.html
○ふじたやすし CNETブログ エコノミー、マーケティング、そして IT
「YouTube の広告モデルは成功するか?」 2006/07/04
http://rblog-media.japan.cnet.com/0002/2006/07/youtube__d8fd.html
◆話題を呼んだオンライン映像集
○今日のご主人 「YouTube風アイデア広告」 2007/07/12
http://don-house.com/mt-diary/archives/2007/07/post_190.php
○アキバ経済新聞 2007/07/02
新感覚映像「アキバちゃん」をYouTubeで公開 ─ビルドアップ
http://akiba.keizai.biz/headline/529/index.html
○maclalalaweblog 「YouTube を有名にした10のビデオ」2007/05/29
http://randomnotes.weblogs.jp/maclalalaweblog/2007/05/youtube_9ad9.html
○メディア・パブ 2006/10/06
「クチコミマーケティングのために,Tシャツ155枚を重ね着した男」
http://zen.seesaa.net/article/24881475.html
○もっと学ぼうニッポン:ブログ時代の日本語学習 2007/02/22
「You tubeマーケティングの例、David Choiデービッド・チョイの歌」
http://nihon.at.webry.info/200702/article_5.html
○ブランドって何だぁ? 「YouTubeで広告テスト」 2006/07/02
http://yoichi.typepad.jp/blog/2006/07/post_4390.html
○とんち情報局 「YouTubeとblogで認知されたアイドル」 2006/06/06
http://tonchi.jugem.jp/?eid=77
◆動画を軸にしたオンラインマーケティングの動向
○リッチコンテンツ・マーケティング情報局 2007/07/19
「動画共有サイトの新たなビジネスモデルとなるか_ソニー・ピクチャーズ、クリエイター支援型の動画共有サイトを開設」
http://www.richcontent.jp/businessnews/bn173-01.html
○WEBマーケティングブログ 2007/07/04
「YouTubeの広告表示はこうなる!?」
http://web-marketing.zako.org/google/youtube-advertising-in-video.html
○Webマーケティングガイド 2007/06/29
「MySpaceTV ─YouTube対抗動画サイト発表(ITmedia)」
http://www.e-research.biz/statistics/staweb20/001685.html
○Webマーケティングガイド 2007/06/21
【自主リサーチ調査結果】インターネット動画広告に関する調査(中) ─今後、動画広告をきっかけに商品の購入に影響があると回答したユーザーは50%以上
http://www.e-research.biz/profile/pro_9/001589.html
○ITmedia News 2007/05/05
「YouTube、人気コンテンツ投稿者に広告収入の道」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0705/05/news004.html
○ネットPR.JP 「脚光を浴びるオンライン動画広告」 2007/04/19
http://netpr.jp/uspr/001041.php
○CNET 2006/12/12
「サイバーエージェントなど、動画とクチコミマーケを組み合わせた広告商品開発」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20338493,00.htm
○SNS.ソーシャルネットワーキング.jp 2006/09/12
「YouTubeの物議を醸すマーケティングの成否」
http://www.socialnetworking.jp/archives/2006/09/youtube_15.html
○SNS.ソーシャルネットワーキング.jp 2006/07/11
「SNS(ソーシャルネットワーク)YouTubeの影響でコカコーラがバイラル・ビデオ・マーケティングへ」
http://www.socialnetworking.jp/archives/2006/07/youtube_7.html
○テレビとネットの近未来 ブロードバンド・ニュースセンター
「ロジクール YouTubeと共同マーケティング契約」 2006/07/14
http://www.tvblog.jp/tvnet/archives/2006/07/youtube_071410390001.html
◆動画編集、制作
○CNET 2006/09/05
「変わるYouTube映像、ポストプロダクションを意識し始めたクリエーターたち」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20223047,00.htm
○Webマーケティングのネタ帖 2007/06/25
Adobe製オンライン動画編集ツール「YouTube Remixer」がYoutubeに登場
http://www.webmarketingdata.jp/article/45879639.html
○GIGAZINE 2007/06/21
「動画をすぐにプロっぽくするYouTubeからのテクニックいろいろ」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070621_youtube_video_toolbox/
○YouTube ─動画をうまく撮る方法 2007/06/19
http://jp.youtube.com/t/video_toolbox
○デジタルARENA 2007/05/08
プロが教えるビデオ編集“虎の穴” ハイビジョン時代のホームビデオ編集ワザ!
http://arena.nikkeibp.co.jp/article/tokushu/gen/20070326/121365/
○気になる! itemズ 2006/11/29
ムービーカメラとお手軽編集ソフトで動画共有サイトに挑戦しよう!
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/items/16341.html
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