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Napster(ナップスター)は「自宅に膨大な楽曲が入っている試聴機が来るようなもの」

  • レコード・コレクターズ 編集部
  • 祢屋 康

最近、遅ればせながらナップスター(Napster)を利用し始めた。ナップスタージャパンが
2006年10月3日から開始したこの音楽配信サービスは、日本初の定額制が売りものだ。

定額制とはサブスクリプション制とも呼ばれるが、月ごとに一定の金額を払うことで、提供されている音源であれば聴き放題になるサービスのこと。登録されている楽曲は、現在は350万曲とされている。昨年10月のサービス開始時では洋楽148万曲、邦楽2万曲とされていたから、その時点からしても倍以上になっている。

コースはパソコン上に無制限にダウンロードして聞き放題の「Napster Basic」(月額1280円)、それに加え携帯プレイヤーに楽曲を転送して外出先でも聞ける「Napster To Go」(月額1980円)の二つ(それ以外に購入ももちろんできる)。

携帯プレイヤーはナップスター(Napster)のファイル形式に対応したプレイヤーのみ使用可能なので、メーカーや機種など選択肢はかなり限られるのが残念だが、ドコモの携帯電話でも一部の機種は対応している。

これが高いか安いかは利用頻度や個人の感覚によってなかなか一概には言えないとは思うが、一つのIDでパソコン、携帯プレイヤーとも3台まで登録することが可能となっている。

米本国のナップスター(Napster)の発表によれば今年の3月に、有料会員数は世界で83万人を突破したということで、「オンデマンド型音楽配信サービス」のシェア1位となるそうだ。

とりあえず、実際に自分で使ってみたところ、かなり使いでのあるサービスだということを実感しているが、配信されているミュージシャンやアルバムの数には、ばらつきがあるのはいたしかたない。

どのくらいの音源が配信されているのか、実際に調べてみると、ローリング・ストーンズはアルバム数にして31枚、これにはベスト盤もいくつか含まれているが、60年代のデッカ・レコード時代のものはオリジナル・アルバムの形で12枚、代表作とされる『レット・イット・ブリード』や『ベガーズ・バンケット』も含まれている。とはいえ70年代以降のオリジナル・アルバムは2枚ほどしかないので、これはまずまずという感じだろうか。

エリック・クラプトンは全部で39枚のアルバムが登録されている。名盤『461オーシャン・ブールバード』『スロウハンド』から90年代のヒット作『アンプラグド』まで、ソロ名義の有名なアルバムはだいたい聞ける上、クリームやデレク&ザ・ドミノスの『いとしのレイラ』も提供されているのはすごい。

一方で、ビートルズ本体は当然なし(というのは、今のところ音楽配信には1曲も提供されていないため)、ポール・マッカートニーも最新作と80─90年代の4枚のみである。

ついつい上記のようにアルバム検索でいろいろと試すように探してしまったが、普段はもっとザッピング感覚で楽しんでもいる。

例えば、特集記事の準備をしていて、ポリスの何かが聞きたいなと思って検索したところ、自分が中学生のときに流行っていた「マジック」という曲があって、それをとりあえず聞いていたら、当時のことが思い出されてきて、じゃあ、マドンナだ、ティナ・ターナーだ…と何年も聞いていなかったものをまとめてざっと聞いてしまう、というようなこともある。

自分が聞いたことのないアーティストの楽曲を聞いてみたり、聞いたことのないジャンルの音楽を聞き進むにはもってこいだとはいえる。

このサービスがこれから広がっていくかどうかは、よく言われるように邦楽の配信音源がどれだけ増えるかによるだろう。日本の音楽配信で最も売れているものは携帯電話の「着うた」であるという現状を考えても、一般の邦楽ファンの需要に応えることでユーザーが爆発的に広がる可能性は高い。

ナップスタージャパン社長の「Napsterは自宅にものすごく膨大な量の楽曲が入っている試聴機が来るようなもの」という発言があったが、このまま配信可能な音源が増え、「試聴機」ではなく「データベース」的に使えるようになれば、配信されている音源については、自分の手元にあるCDを処分してもかまわないかなという気にもなる。

そうなった場合、ミュージシャンがこのようなサービスからどのように利益を得るのか、レコード会社はどうそれに関与するのか、音楽産業の構造自体が大きく変わる可能性も、サブスクリプション制(定額制)は含んでいる。

もちろん非常に長期的な意味でということではあるが、どこに向かっていくのか、ユーザーとしても注目していたい。

Napster Japan=http://www.napster.jp/

 

■関連情報

○GIGAZINE 2007/01/06
 「iTunesなどが大手レコード会社のほとんどの曲の歌詞検索に対応か」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070106_itunes_lyrics/

○iPod情報局 2006/10/30
 打倒iTunes Store? 聴き放題「ナップスター」の実力を検証【後編】
http://blog.nikkeibp.co.jp/arena/ipod/archives/2006/10/itunes_store.html

○Japan.Internet.com  2006/10/05
 約7割がパソコンで音楽を聴くが、「購入した CD」がやっぱり主流
http://japan.internet.com/research/20061005/1.html

○ITmedia News
 「水道の蛇口のように音楽を」──Napsterが定額制で目指すもの 2006/10/03
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0610/03/news102.html

○ITmedia D+LifeStyle 小寺信良 「定額制音楽サービスはアリか」2006/09/25
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0609/25/news021.html

○CNET 「定額制音楽サービスがあぶりだすコンテンツ配信の課題」 2006/06/05
http://japan.cnet.com/column/mori/story/0,2000055916,20130267,00.htm

○CNET  2005/09/16
 「100万曲を聴き放題に--タワーレコードがナップスターと組んだ理由」
http://japan.cnet.com/interview/story/0,2000055954,20087093,00.htm

○FPN 徳力基彦 2006/10/04
 「ナップスタージャパンの定額聴き放題は音楽産業にとって損か得か」
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=1747

○藤本健のDigital Audio Laboratory
 「定額配信サービスの疑問点をNapsterに聞く」 2006/10/17
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20061017/dal254.htm

○エンタメLIFEHACKERS
 「NapsterをiPod・ケータイに転送する方法」 2006/11/17
http://d.hatena.ne.jp/MikyE/20061117/1163749896


◆ナップスターCM集(YouTube映像)

○Sexy Napster Commercial 00:58
http://www.youtube.com/watch?v=ByU-LMYSMvE

○Napster Stripper Ad - TV CENSORED ! ! ! 01:18
http://www.youtube.com/watch?v=2JH4PpzArpE

○Napster – Blues 01:10
http://www.youtube.com/watch?v=jn9KLKrynak

○Napster - Hip Hop 00:44
http://www.youtube.com/watch?v=bh5l6tyQRlQ

 


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