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NO STYLE 広告論 Cannes Lions 2007(カンヌ広告祭)現地取材 Vol.1

CANNES LIONS 2007(カンヌ広告祭)を取材してきた(6月23日まで)。現地まで足を運ぶのは個人的には初めてなので新鮮な体験だった。

例年新聞、テレビが詰めかける映画祭と違ってカンヌ広告祭の場合、ごく少数の専門誌等をのぞいて日本のメディアはあまり取材に入っていないため、フェスティバルではどのようなことが行われているのか、一般には知られているとは言えないのが実情と言えるだろう(今年は読売新聞グループの渡辺恒雄氏が「メディア・パーソン・オブ・ザ・イヤー」を受賞したため、日本の大メディアの取材も入ったそうだが)。

受賞結果だけでなく現地の様子を2回に分けてリポートしたい。(受賞作はすべて以下のアドレスでご覧頂けますが、約1ヶ月で見られなくなってしまうのでお早めに)

http://www.canneslions.com


私がカンヌに入ったのは6月17日の昼過ぎ。この日9時から広告祭は始まっている。本当は16日夜に入るはずだったのだが、パリでの乗り継ぎがうまくいかず1日遅れになってしまった。不審物が発見されたかなにかの理由で、乗り継ぎ客用の入国審査のゲートが1時間半ほどクローズし、乗る予定だったニース行きの飛行機が先に行ってしまったのだ。

荷物を置くと、食事も早々にメイン会場「パレ・ロイヤル」へ向かう。映画祭でもおなじみの赤絨毯の建物だ。

参加者(広告関係者とプレス)は、まず地下で手続きをする。名前など記入事項を確認の上、写真を撮られ会期中有効のパスを発行してもらう。これを提示すると会場に入れて、世界中からエントリーされるCMを見まくったり、世界中の広告代理店等が主催するセミナーに出たりできるのだ。

ちなみに広告祭の参加料は約30万円(プレスを除く)。ここに交通費、滞在費を加えると決して安い値段ではない。ユーロ高の影響もあって物価は日本の約2倍だ。

プログラムやエントリー作品のリスト、参加者の名前が記されたハンドブックなどがぎっしり詰まった重いバッグを受け取った。初日は特にインタビュー取材も入ってなかったので、とりあえずCMを観ることにする。

会場内にある4つの上映ホールで、今年は世界64カ国から集まった4474本のCMが、アルコール飲料、家庭用品、旅行、娯楽、公共広告など29のカテゴリー別に、ひたすら流れ続けるのである。

受賞式も行われる大ホール(Grand Audi)では、人気の自動車カテゴリーの上映が始まっていた。フルに見ると自動車だけで約5時間! 途方もない数ということがおわかり頂けるであろう。

初日ということもあって、場内を埋めている人の数はまだ半分くらい。話には聞いていたが驚いたのは、流れているCMに対して、見ている側がかなり明快なリアクションを示すこと。面白いものに対しては笑いか拍手、つまらないものには容赦ないブーイングの口笛、よくわからないものは黙殺(意図した上での無視)と、大まかには3タイプの反応があったように思う。

会場を沸かせていたし、私も好きだったのが「Smart」のCM。残念ながら受賞は逃したのだが、とにかくわかりやすい。

●Smart car


結果ゴールドを受賞したフォルクスワーゲンの「safe happens」シリーズも好評のようだった。

●VW─Safe Happens─Jetta


●Volkswagen

普通クルマに乗っていて「happen」するものは、「accident」であるところを「safe」に置き換えた逆転の発想が面白いわけだが、相当のスピードで衝突してるのに、ほんとにあんな風に無傷でいられるのだろうか。

いや、それよりぶつけたほうはどうなったのだろうか。あまりにアメリカンライクで楽観的な描き方に、ちょっと疑問も感じたが、実際ゴールド受賞が発表されたときも少なからぬブーイングが起きていた(企画はマイアミのクリスピン・ポーター&ボガスキーhttp://www.cpbgroup.com/。いま世界で最もクールなクリエイティブエージェンシーとされている)。

日本からの受賞が期待されたTOYOTA「Meet」は残念ながら黙殺なムード。一回見ただけでは意味がわからないようだ。結局ショートリスト(一次通過)には入ったが受賞には至らなかった。

やはり人気のコスメカテゴリーでは、ユニリーバ「IMPULSE」シリーズがウケていた(YouTubeで見つからなかったので、公式サイトのアドレスにてご覧ください) http://www.canneslionslive.com/film/win_3_1_01072.htm


走り出した列車を飛び降り、一夜をともにした女のもとへ一目散に走っていく男。まるで70年代の青春映画のノリ。彼女が働くダイナーで再会すると、「言っておきたいことがあるんだ。僕たちの関係はただの週末のお遊びじゃない……もう一回くらいの値打ちはあるんじゃないか?」。

そして「ロマンチズムなんてあり得ない時代。だから我々は変わることにした」のコピーに続いて、新しくなったオーディコロンが紹介される、というものだ。

ものすごく大雑把に言ってしまえば、かくのごとく約1週間、ひたすらCMを見続けるのがカンヌ広告祭だ。(もちろん、最終日に行われるフィルム部門の発表に先立って、サイバーやアウトドア、プレス&ポスターといったそれ以外の部門の発表が毎日のように行われるわけだが、それについては次回触れたい。特にインターネット広告では日本勢の活躍が目立った)。

CMの上映は18時頃終わり、その後その日決まった部門の受賞式が終わるともう21時近いが、あたりはまだ明るい。つまり、これで一日が終わるというムードではないのだ。

その後は世界中の広告会社や制作会社によるパーティーが、ホテルやビーチなど複数箇所で開催され、参加者は大抵どこかに足を運ぶことになる。パーティをはしごする人も多く、終わるのは深夜2時。最終日までこれが連日続く。

カンヌは世界の広告人が集う“フェスティバル”ということがお分かりいただけるだろう。


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