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メジャーリーグ(MLB)は中年投手が花盛り

  • 米国在住ジャーナリスト

ある日のスポーツニュースを見ていたら、面白いことに気がついた。メジャーリーグの試合でこの日、40代のピッチャーが次から次へとでてくるのだ。登板日が重なったのは偶然だが、それでも結局先発したのは全部で6人。うち3人が勝ち星を挙げた。日本では工藤公康投手(43歳 横浜)が中年の星と呼ばれているそうだが、アメリカで40代現役投手はそう珍しくない。

この日(6月27日)に先発した40代投手は、ロジャー・クレメンス(44歳 ニューヨーク・ヤンキース)、グレッグ・マダックス(41歳 サンディエゴ・パドレス)、トム・グラビン(41歳 ニューヨーク・メッツ)、ジョン・スモルツ(40歳 アトランタ・ブレーブス)、ジミー・モイヤー(44歳 フィラデルフィア・フィリーズ)、ウッディー・ウイリアムス(40歳 ヒューストン・アストロズ)。

平均年齢41.6歳、6人の合計は250歳という超ベテラン先発投手組み。うち、グラビン、スモルツ、マダックスの3人に勝ち星がつき、2人が勝ち負けなし。負け投手となったのはクレメンスの一人だけだった。40代とはいえ、先発ローテーションに組み込まれて登板しているのだから、たいしたものだ。

これらの投手にロートルの悲壮感はまったくない。打者に向かって90マイル前後の速球を堂々と投げ込み、巧みな変化球を交えた制球力でパワーヒッターを次々に打ち取っていく。今年の成績はスモルツの9勝4敗を筆頭に、マダックスが7勝4敗、グラビン、モイヤーがともに7勝5敗とチームの大黒柱。ちなみに100億円プレーヤーの松坂大輔投手(27歳)の成績が9勝5敗。中年先発陣がどれだけ頑張っているかがわかるだろう。

これらの投手は通算成績も素晴らしい。349勝のクレメンス、340勝のマダックス、297勝のグラビン、223勝のモイヤー、202勝のスモルツと綺羅星のように勝ち星が並び、127勝のウイリアムスを含めると何と1538勝。

ちなみに、この日は登板しなかったが、メジャーリーグを代表する左腕のランディー・ジョンソン(43歳 アリゾナ・ダイヤモンドバックス)は288勝、デビッド・ウエルズ(44歳 サンディエゴ・パドレス)は236勝、カート・シリング(40歳 ボストン・レッドソックス)は219勝をあげている。

この40代9人組みの合計勝ち星2281勝は、イチロー選手が所属するシアトル・マリナーズの球団通算勝利数の2227勝(2006年当時)より多い。このほかにも40代の現役投手としてマイク・スタントン(40歳 シンシナティ・レッズ)などがおり、野手も含めたメジャーリーグ全体での40代現役選手は25人になるという。中年先発陣の奮闘ぶりを称えて、スポーツニュース局でも「素晴らしき40代」とする内容で焦点を当てて報道するほどだ。

メジャーリーグの歴史をたどってみると、40代で活躍した偉大な現役投手を見つけることは難しくない。最高齢登板記録は1965年にサチェル・ペイジ(カンザスシティー・アスレチックス)が記録した59歳。

史上初の黒人メジャーリーガーとしてジャッキー・ロビンソンがロサンゼルス・ドジャースに入団した翌年、ペイジはクリーブランド・インディアンズに42歳で入団した。ニグロリーグで2000勝以上をあげたとの伝説が残るペイジは、59歳のときにアスレチックスと1試合だけの契約を結び、その試合で3回を無失点に抑えている。

ナックルボールの使い手として318勝をあげたフィル・ニークロは48歳、324勝を上げたノーラン・ライアンは46歳、史上最多の511勝をあげたサイ・ヤングは45歳までそれぞれ現役を貫いた。

ピッツバーグ・パイレーツの桑田真澄投手が、盛りを過ぎてからのメジャーリーグ挑戦などといわれているが、こうしてみると39歳の桑田選手はまだまだ現役で活躍できる可能性のあることがわかる。

日本のプロ野球では40歳を過ぎて先発ローテーションに食い込むのは至難の業だ。そもそも現役を続けている選手がほとんどいない。それなのにどうしてメジャーリーグでは、堂々と中4日の間隔で1年を投げきれるのだろうか。

ひとつには投球制限がある。先発投手は一試合100球を目安として降板する。だいたい試合の7回ぐらいが責任回数であり、それ以降は中継ぎ、抑えにつなぐシステムが確立されている。日本のように、この球数を大きく超えて完投することはめったにない。長い目で見ると、これが肩の消耗を防いでいる。

また、科学的なトレーニング法や食事法が普及していることも大きい。選手はスポーツ科学を積極的に採用して最適な肉体管理を行う。ノーラン・ライアンの執筆した「ピッチャーズ・バイブル」など、投手に必要なウエイト・トレーニングや節制法が記され、多くの投手から文字通りバイブルとされているほど。こうしたことが、選手寿命を延ばすことにつながっているようだ。

同じ40代としてこうした中年選手の活躍は嬉しい。古田選手や清原選手にも、引退報道を吹き飛ばすぐらいの活躍をまだまだして欲しいと願っている。

■関連情報

●スポーツナビ+ 来日外国人マニア 
 「祝・メジャー最年長本塁打記録!」 2007/05/08
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/bbsano/article/2


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