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ゲイ擁護団体が認めたアダム・サンドラーの新作コメディ映画


Chuck And Larry Poster

(記事要約)

7月20日全米公開となる人気コメディアン、アダム・サンドラーの新作映画『I Now Pronounce You Chuck & Larry』は、二人の異性愛の消防士が、子供の社会保障を獲得するために同性愛カップルを偽装して結婚するという話。コメディとしてゲイ・カップルのありがちな生活ぶりを茶化すことで笑いをとる場面も多い。

しかし、製作陣は事前にゲイ、レズビアン擁護団体GLAAD(Gay & Lesbian Alliance Against Defamation)に作品を見せたところ、「人を威厳と尊敬を持って扱い、家族の重要性を訴えている」(GLAADエンターテインメント・メディア責任者デイモン・ロマイン談)と、事実上、映画の正当性を認めるリアクションを得た。

映画の公式ウェブサイト
http://www.chuckandlarry.com/index.php

2007/07/11 BOSTON HERALD(1846年創刊、BOSTON GLOBEとともにボストンを代表する新聞)

 

(解説)

アメリカでは主演(ただしコメディに限り)映画をほぼ確実にヒットさせる超売れっ子コメディアンのアダム・サンドラー。「世界をコントロールするリモコン(もしも昨日が選べたら)」「記憶喪失の女性に恋する男(50回目のファースト・キス)」など毎回おかしな設定で笑わせてくれる。

今回はゲイ・カップルを装って公的保障を獲得しようとする消防士のお話。今でも全米各地で同性婚の是非が議論されているだけに、いかにも世相を反映した作品だ。

「結婚相手」役はウィル・スミス主演『最後の恋の始め方』で全くモテないデブ男を演じたケヴィン・ジェームズ。ジェームズ演じるラリーには亡くなった妻との間に子供がいて、結婚しないと子供のための社会保障が認められない。しかしモテないラリーに再婚は難しいという設定だ。

チャックにはラリーに命を助けられた借りがあったため、お返しにと偽装結婚に応じた。しかし消防士ゲイ・カップルということが新聞沙汰になり、次第に偽装が破綻していく・・・という展開を面白可笑しく描いている。

アメリカで実際に同性婚が州法で認められているのは、現時点でマサチューセッツ州だけである。しかし異性同性を問わず同棲相手や内縁者に、結婚と同等の法制度を認める動きは、さらに多くの州や都市で見られる。

つまり結婚しなくても、ドメスティック・パートナー・シップあるいはシビル・ユニオンという名のもとに、遺産相続の権利、相互扶助の義務など夫婦と同等の扱いを受けることができるのだ。同性カップルはそこに望みを託している。

アダム・サンドラーの映画が、大真面目に社会問題に取り組んでいるわけではない。しかしGLAAD(ゲイ、レズビアン擁護団体)が認めたように、映画は最終的に、家族の重要性や人々の尊厳についてポジティブなメッセージを打ち出している。それがいい意味でゲイ問題への人々の意識を高めることになるのは間違いない。

同時に、GLAADのある種の公認に安心したゲイ・レズビアン層が『I Now Pronounce You Chuck & Larry』を好意的に受け止めることになろう。ゲイ・レズビアン人口は推定1500万人。これを味方につければ興行収入も大きく伸びる。

「同性婚」という政治的にデリケートな問題を真っ向からコメディにしてしまった製作側(ユニバーサル映画他)の賭けは、今のところいい方向に向かっている。またしても売れっ子アダム・サンドラーの勲章が増えそうだ。


■関連情報

○I Now Pronounce You Chuck and Larry(YouTube映像)02:30
http://www.youtube.com/watch?v=K98eT6j3XUw


○ステップマザー奮闘記 2007/06/26
 「ゲイパレードに行ってきましたよー」
http://blog.livedoor.jp/dclarke798/archives/51281801.html


○ゲイジャパンニュース 2007
 「各国の同性愛者の法律と権利」
http://www.gayjapannews.com/countrypenalty1.htm


○ゲイジャパンニュース 2007/05/16
 「同性カップルも異性カップルと変わりなく子育てをしている」 カナダの研究機関が発表
http://gayjapannews.com/news2007/news88.htm


○Nikkei BPnet 2007/03/27
 「ゲイ擁護団体からのクレームでオンエア中止」
http://www.nikkeibp.co.jp/netmarketing/column/wom/070327_superbowl02/index1.html


○どう過ごすか、これからの10年。 2006/06/14
 「同性婚」の問題は「人権教育・啓発活動」とは切り離して考えるべき
http://d.hatena.ne.jp/syujisumeragi/20060614/1150272801


○SuRVivAL LoG @ hATenA 2006/06/02
 「同性婚が感情の問題だと思われている点について」
http://d.hatena.ne.jp/kleinbottle526/20060602/1149219887


○“俺オンナ”の取り乱し 2006/04/10
 《突撃調査》生命保険会社はどこまで同性パートナーを受け入れるか?
http://blog.livedoor.jp/mameta69/archives/50730576.html


○TransNews Annex 2006/03/16
 「フォード製品のボイコット宣言、同性愛反対の宗教団体」
http://transnews.exblog.jp/2833672/


○なんでも評点  2005/08/08
 「同性愛者でない男二人が税金対策のために同性婚@カナダ」
http://rate.livedoor.biz/archives/50021531.html


○CNET 2005/04/27
 「MSに同性愛者団体からの非難集中--あるロビイストとの関係をめぐり」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20083228,00.htm


○不可視の学院 「レゲエ今昔」 2004/11/16
http://black.ap.teacup.com/applet/fukashinogakuin/20041116/archive


○版元ドットコム
 「同性婚 ゲイの権利をめぐるアメリカ現代史」
http://www.hanmoto.com/bd/ISBN4-7503-2336-5.html

 


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