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ロサンゼルスを覆う高級コンドミニアム建設ラッシュ

<記事概要>

コンドミニアム建設ラッシュが続くロサンゼルス。2009年までに、中心街に数本の“トロフィービルディング(トップクラスの価格、質を誇るビル)”が完成予定だ。

これらのビルディングは、ショッピングモールやレストランの併設など、今までのコンドミニアムの概念を破るアメニティーで注目を集めているが、更に驚くべきはその価格。普通の間取りの部屋で億を切る部屋はなく、上層階の部屋は5億から10億円のプライスタグがぶら下がっている。

さらに、最上階の特別ルーム、いわゆるペントハウスは、なんと30億円という超弩級の価格。それでも、発売前から問い合わせが引きもきらないという。高級住宅のトレンドは、一戸建てからコンドミニアムにシフトしている。

(ロサンゼルス・ビジネス・ジャーナル)


<記事解説>

サブプライムローンの破綻で下げ傾向が際立つ米国不動産だが、ハイエンド市場は逆に大盛況となっている。経済二極化の兆候は、不動産市場で最も顕著なようだ。

高級物件の中でコンドミニアムが占める割合が多い事も最近の特徴だ。一時期は百万ドル(約1億2千万円)にも達していたミドルクラスの一戸建て物件(3ベッドルーム程度)が7千から8千万円程度にまで落ち着いている現在においてさえ、上記のような超高級コンドミニアムの市場は更に加熱している。一体これはどういう現象なのか。

幾つかの分析の中から主だった意見を拾ってみよう。まずロサンゼルスの地域経済の好調が上げられる。ハイテク企業を中心とした地場産業の良好な業績は、この数年間でニューミリオネアーとも言うべき層を登場させた。

ダウ・ジョーンズが一万三千ドルを越えた株式市場も追い風になっている。以前にも書いたが、カリフォルニアでは中流階級からミリオネア(億万長者)へのシフトが起こり、さらにその上のビリオネアが多く登場した。

サブプライムローンの破綻にあえぐ貧困層を尻目に、住宅環境において金に糸目をつけない層は確実に増殖している。これらのニューリッチ層は郊外での生活よりも、都市型のライフスタイルを好む。高級コンドミニアム市場を支えているのは主にこの人たちだ。

これらの層に、21世紀に入ってリタイアが始まった団塊の世代が加わる。米国人の住宅に関する考え方はここ20年で大きく変化した。特に団塊世代は、住宅に関しては徹底して合理的な思考を貫く。子供が手を離れて妻と二人になったら、それまで住んでいた一戸建て住宅を手放してメインテナンスなどの面で手のかからない手頃なコンドミニアムに移る ─こういう合理性は、特に都市部ではかなり一般化している。

ダメ押しに、ロサンゼルスの交通状況の加速度的な悪化がある。10年ほど前、筆者がロサンゼルスに居を移した当時、朝夕のラッシュ時でさえ渋滞とは無縁の道路状況に驚かされたものである。

それが現在、片側7車線を誇るフリーウェイがノロノロ運転状態になってしまう事も少なくなく、首都高速もかくやというほどひどい状態。郊外の瀟洒な住宅から、スイスイと流れる高速道路に乗って通勤という図式は、少なくともロサンゼルスでは過去の幻想となりつつある。車への依存度が低い、すべての施設が徒歩の距離にある都市生活は、今やもっとも理想的なライフスタイルなのだ。

かつて不動産業界を支配していた「一戸建て住宅を超える値段のコンドミニアムなど売れる訳はない」というテーゼは完全に崩壊している。

30億円といえば、今でもビバリーヒルズに小ぶりの城のような住宅が買える値段。それを差し置いて、都市部のビルの最上階に居を構えるというのはちょっと信じられない価値の転換だ。

しかし、都市型の生活が持てはやされるにつれ、この傾向はますます加速するだろう。この伝で行くと、近い将来日本にも10億を超える超高級ペントハウスが登場するかもしれない。


■関連情報

○MediaSabor
 「ミリオネアからビリオネアへ─ 富の二極化が加速するアメリカ」 2007/06/07
http://mediasabor.jp/2007/06/post_119.html


○MediaSabor
 「米国経済を襲うサブプライムローン爆弾」 2007/04/29
http://mediasabor.jp/2007/04/post_83.html


○MediaSabor
 「マネーゲームが生んだサブプライムローン危機」 2007/04/29
http://mediasabor.jp/2007/04/post_82.html


○松藤民輔の部屋  
 「The Housing Starts(米国住宅着工件数の推移)」 2007/07/24
http://blog.ushinomiya.co.jp/economics/2007/07/the_housing_starts.html#more


○ニューイングランド通信 
 「アメリカ住宅バブル 、そしてドミノは倒れ始めた。」 2007/06/29
http://blogs.yahoo.co.jp/giantchee2/33770068.html


○FIFTH EDITION 「ああアメリカ経済が心配だ」 2007/03/29
http://blogpal.seesaa.net/article/37132606.html


○Garbagenews
 「アメリカのミリオネラー、過去最高の890万世帯に」 2006/03/30
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2006/03/890.html


○ウォールストリート日記  「住宅価格上昇のなぞ」 2006/03/18
http://wallstny.exblog.jp/3015230/


○ウォールストリート日記 持ち家の「Affordability」 2006/02/22
http://wallstny.exblog.jp/2819225/


○中岡望の目からウロコのアメリカ
 「アメリカの住宅バブル再論」 2006/04/11
http://www.redcruise.com/nakaoka/index.php?p=170#more-170


○中岡望の目からウロコのアメリカ
 アメリカの住宅バブル問題を論ずる ─「金融ビジネス」への寄稿記事 2005/12/29
http://www.redcruise.com/nakaoka/?p=159


○貞子ちゃんの連れ連れ日記 
 「前回のITバブルの崩壊と 今回のアメリカの住宅バブル」 2006/04/14
http://diary.jp.aol.com/uvsmfn2xc/387.html


○PDSアメリカ建築都市研究所 
 「San Diego ダウンタウンのコンドミニアム」 2006/01/14
http://pdsi.cocolog-nifty.com/american/2006/01/post_bb99.html


○永井俊哉ドットコム 「バブルはなぜ生まれるのか」
http://www.nagaitosiya.com/a/bubble.html

 


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