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経営者のコンプライアンス(法令遵守)軽視が招く経営破綻

ミートホープ、不二家、コムスン…
これらの企業名を聞いて、企業のモラルや良心を疑うような事件を連想する人は多いだろう。

意図的な虚偽原材料の使用製品の出荷や期限切れ原材料使用製品の出荷、大規模な介護報酬の不正請求など、あってはならない、信じられないような行為で消費者を裏切り、法的にも社会的にも制裁を受ける企業が後を絶たない。

企業の苛烈なコストカット追求の結果、顧客の安全や健康などを無視した商品・サービス提供や会計の不正処理の横行を招いているともいえる。 事が公になれば、間違いなく社会的な制裁を受けることは、常識的な生活者であれば、法律に詳しくなくても容易に理解できるだろう。にもかかわらず一部の企業がこのような暴挙にでる背景には、それほどまでに逼迫した内部事情があるのかもしれない。

しかし一方で、企業の内部事情についても以前に比べて公になりやすい時代になってきている。それは、終身雇用の崩壊、正社員の割合を減らし、契約社員や派遣社員で人員を補う人事政策などにより、社員の組織に対する忠誠心が低下したこと、国内外の垣根を越えたビジネスパートナーへの業務アウトソース増加などにより、内部情報が外に漏れやすくなってきていることが要因である。

これらのことは、企業の高度な技術ノウハウを外部(海外)に流出させ、国内の技術力の低下を招く原因ともなっている。

同時に、情報化社会の発展に伴うインターネットの普及により、個人の不特定多数に対する情報発信が容易になったことで、時として一社員、一消費者の声が企業を脅かすほどの事態に発展するケースが散見されるようになった。

さらに、社内の人間が、所属組織の不正・悪事(法令違反など)を公に暴露する内部告発者を、保護する目的で「公益通報者保護法」という法律が2004年に成立した。以前は、企業内の機密情報などを公にする行為は、企業からすれば裏切り行為とみなされ、就業規則になくてもタブーとされるケースが多かったためだ。

有名なのは、1974年にトラック業界の闇カルテルを告発した事件だ。社員の告発が匿名ではなかった為に、雇用主のトナミ運輸の報復措置により、告発した社員には32年間も閑職しか与えられなかったという。このように、これまでは組織の報復を恐れるあまり、不正や悪事を含むセンシティブな情報を告発することは、大きなリスクがあったのである。

現在の企業活動は、社内外から厳しい目を向けられている状況にある。そこで企業に強く求められるのが、コンプライアンスである。法令遵守と訳されることが多いこの言葉は、企業も社会の構成員の一人として商法(会社法)だけでなく民法や刑法などをきちんと遵守し、従業員全体にもそれを徹底させる必要性があることを意味している。

このように、企業にとってのコンプライアンスは、企業活動の透明性を高める役割を果たす。企業の透明性を高めることで、株主をはじめ取引先や従業員など、その企業と関わりを持とうとする人が、客観的に情報を精査し、リスクを判断するための材料が増えるというメリットが生まれるのだ。

仕事の進め方が、長年に渡る伝統的なやり方であったり、業界の習慣であったりしても、それが法令違反であれば、やがて明るみに出て、結果企業の存続を問われかねない事態に発展することもある。

それを防ぐために企業は従業員に対し、コンプライアンス教育を徹底する必要があるだろう。浸透させた上で、情報をオープンにすれば、企業の内部統制は有効に機能すると考えられる。なぜなら、コンプライアンスを軽視した従業員が責任を負わされるリスクも理解されるからである。

前提として“信頼関係”が大事と思われる人も多いかもしれないが、そういった形にならないものでは、最悪の事態を想定したときに責任の所在を明らかにすることができない。

米国の経営手法や商慣習に倣いすぎという批判も一部あるようだが、いい意味でも悪い意味でもグローバル化が加速していく中では、問題や責任の所在を追及しやすい仕組みを作っておかなければ、サスティーナブルな経営は望めない時代なのだ。


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