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現代に生きるスーパーバンド:ザ・ポリス(The Police)、23年ぶりの世界ツアー

人気小説家、奥田英朗の短編集『家日和』(集英社)に、『レコード・コレクターズ』の名が出てくる一編があると聞いて、さっそく読んでみた。その一編「家においでよ」は、子供がいない三十代の夫婦の物語。

別居することになって妻が出ていって広くなってしまったマンションの部屋を持て余した主人公は、そこで結婚以降ずっと我慢していた、かつての趣味の世界をもう一度取り戻そうとするのだが、最初にやったことは本棚に「押入れにしまってあったミステリーの単行本と、『レコード・コレクターズ』のバックナンバー十年分を収納」することだったのだ。

極めて趣味性の強い『レココレ』は、そうした“男の隠れ家”には必携のアイテムということなのだろう。そんな登場の仕方が妙に嬉しくもあったのだが、その短編で興味深かったのはそこだけではない。

主人公はその後、“二人”で家を買うために貯めていた貯金で高価なオーディオ・セットを揃え、実家にしまってあったロックの古いアナログ・レコード約300枚を持ち込み、夜毎音楽に浸るようになるのだが、真新しいターン・テーブルに最初に載せたいと願ったのがザ・ポリス(The Police)のアルバム『シンクロニシティー』だったのだ。

『シンクロニシティー』は、83年の世界的大ヒット・アルバム。60年代生まれの僕にとっては結構最近のアルバムのような感覚があるのだが、この小説の中の38歳の主人公にとっては、中学生の頃に聞いた、非常に懐かしい一枚。それはそうだろう、もう24年も前のレコードなのだから。

そんなポリス(The Police)が復活、23年ぶりの世界ツアーに出て、大きな話題となっている。

5月28日にカナダのヴァンクーヴァーで行なわれたそのオープニング・コンサートの模様が、さっそくいろいろなサイトでリポートされているが、改めて驚くのは彼らの年齢構成だ。

80年代に活躍したバンドにしては、ドラムスのステュアート・コープランドが54歳、ベースのスティングが55歳。もともと一回り上だったギターのアンディ・サマーズに至っては、何ともう64歳なのだ。

パンクからニュー・ウェイヴ世代のバンドとして80年代に活躍したイメージが強い彼らだが、若い二人も他のパンク・バンドの連中よりは少し上、アンディ・サマーズは60年代デビューの伝説のバンドのメンバーたちとほとんど変わらない年齢なのである(具体的に言えば、ビートルズのポール・マッカートニーと同じ42年生まれで、ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のミック・ジャガー、キース・リチャーズの1歳年上!)。そう考えてみると、今回の再結成ツアーの「貴重さ」というものが実感されるだろう。

いろいろな情報を総合すると、ヴァンクーヴァーでの3人は、そんな年齢のことなども感じさせないほど元気一杯で、スティングは重いベースを下げたまま思いっきりジャンプして見せ、ステュアート・コープランドはかつてと同じようなスピード感溢れるドラミングを披露していたという。

写真を見る限りはアンディ・サマーズも、そんな二人と息の合ったステージ・アクションをキメている。コンサートは、79年発表のセカンド・アルバム『白いレガッタ』のオープニング・ナンバーだった「孤独のメッセージ」でスタート。

「シンクロニシティーII」「高校教師」「アラウンド・ユア・フィンガー」「ドゥ・ドゥ・ドゥ・デ・ダ・ダ・ダ」「ロクサーヌ」「見つめていたい」といったヒット・ナンバーも数多く折り込みながら二十数曲を自信たっぷりに演奏。ライヴらしく、曲によってはインストルメンタル・パートが大幅に強化されたり、「高校教師」のようにアレンジの変更でかなり印象が変わった曲もあったりで、「現代に生きるバンド」としてのポリスを強くアピールするものであったらしい。

ポリスのこの世界ツアーの最新情報はオフィシャル・サイト(http://www.thepolice.com/)で見られるが、8月アタマまでカナダ─アメリカの北米ツアー(日本にも生中継される7月7日のイヴェント「ライヴ・アース」コンサートへの出演を含む。コンサート映像は下記、関連情報リンク参照)を続けた後、8月末からポリスはヨーロッパに向かうようだ。そして、まだ正式発表はなされていないが、来年2月にはいよいよ27年ぶりの来日公演も実現しそうだ。


*冒頭で触れた、奥田英朗さんは、かつて『レココレ』の姉妹誌『ミュージック・マガジン』の増刊号『ジョン・レノンを抱きしめて─メモリアル・エディション』にも寄稿していただいたことがあります。ご興味のある方はこちらも是非どうぞ。


■関連情報


◆ザ・ポリス(The Police)

●アップル ─Trailers─ ポリス インサイド・アウト 
活動休止から20年以上を経て、今だから明かすことの出来る、ポリス解散の真実!70年代後半、80年代初頭 と、ポリスが駆け抜けた時代をシャープに描き出すスチュアート渾身 のプライベート・ロック・ドキュメンタリー!
http://www.apple.com/jp/quicktime/trailers/sjam/policeinsideout/

●ザ・ポリス連載コラム 「バンド仲間と過ごした80’s」佐藤タイジ(ミュージシャン)
http://thepolice.jp/column/2007/02/001.html

●Live Earth コンサート映像(2007年7月7日、世界9都市で同時開催された地球温暖化防止を訴える世界規模コンサート。再生リストの選択により、国別、アーティスト別のライブ映像が視聴できます。ポリスは、アメリカ ニューヨークでのライブに参加しています。)
http://liveearth.jp.msn.com/videos

●AFP BB News 「ロックバンド「ポリス」 1984年以来のツアー開始」 2007/05/30
http://www.afpbb.com/article/entertainment/music/2232098/1636140

●Paint It Green × カリフォルニアGreen便り 2007/06/15
 「The Police reunion tour @ McAfee Coliseun, Oakland」
http://brendiary.exblog.jp/6980900

●【One Wild Night】Blog --RockNews-- 2007/06/08
  「ザ・ポリス 久々のライブに四苦八苦」
http://blog.livedoor.jp/rock_roll/archives/50721551.html

●Marty Life! 「Marty Review 020 ザ・ポリスのやろー」 2007/03/18
http://martylife.seesaa.net/article/36312799.html


◆レコード・コレクターズ

●内田樹の研究室「無人島レコード」 2006/12/13
http://blog.tatsuru.com/2006/12/13_1002.php

●無頼横町 「THE PENTANGLE」 2007/06/25
http://littlewing2007.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/the_pentangle.html

●薬剤師が経済を勉強したら… 2007/06/30
  ロックはやっぱり70年代─『レコード・コレクターズ6月号』
http://himachan2000.jugem.jp/?eid=38

●ミュージックコロン 「80年代ロック・アルバム・ベスト25」 2007/06/28
http://music.typepad.com/jackie/2007/06/8025.html

●ポジティブサプライズ 「80年代ロック100」 2007/06/25
http://gyogyo.seesaa.net/article/45905303.html

●航海日誌 「1位はトーキング・ヘッズ」 2007/06/22
http://echoroom.txt-nifty.com/log/2007/06/post_5d9d.html

●指令!GOGO作戦 「レコード・コレクターズ7月号」 2007/06/15
http://jack72.blog61.fc2.com/blog-entry-288.html

●3度のメシよりCD 2007/06/13
 「レコード・コレクターズ7月号 80年代ロックアルバムベスト100」
http://cddaisuki.exblog.jp/6973864/

●Rock & Movie Reviews : The Wild & The Innocent 2007/05/20
 「レコード・コレクターズ 70年代ロック・アルバム・ベスト100 / 僕が好きな70年代
ロック・アルバム25枚」
http://onomichi.exblog.jp/5614462/

●言葉と物「レコード・コレクターズ 2007年5月号」 2007/04/22
http://foucault.exblog.jp/5548965/


◆奥田英朗

●梅田望夫 My Life Between Silicon Valley and Japan 2007/05/13
 「家日和(奥田英朗著)」
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070513/p1

●映画な日々。読書な日々。奥田英朗 『家日和』 2007/06/22
http://ameblo.jp/4rusmasako/entry-10036259188.html

●ナナメメモ 『家日和』奥田英朗 2007/06/07
http://nanamemo.jugem.jp/?eid=799

●music diary  奥田英朗「家日和」 2007/05/26
http://blog.goo.ne.jp/saturdayrose/e/cdb69c1ddf12d95f924097a107c6b969

●arukakatの活字中毒記 『家日和』奥田英朗 2007/05/22
http://arukakat.typepad.jp/books/2007/05/post_755b.html

●ぞうの耳 ─本に埋もれて暮らしたい─ 『家日和』奥田英朗 2007/05/07
http://blogs.yahoo.co.jp/zo_no_mimi/19295911.html

●粋な提案 『家日和』奥田英朗 2007/04/22
http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-225.html

●ブログ・ヘッドライン(Blog-headline)
 「家日和 (集英社)奥田英朗」 2007/04/28
http://www.blog-headline.jp/book/archives/2007/04/post_17.html

 


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