曲の一部を楽器レッスンに使っても著作権侵害 ─YouTube動画削除
- 米国在住ジャーナリスト
(記事要約)
ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は7月6日、YouTubeで最も人気の高かったデビット・タブさんのギター・レッスン・ビデオが削除されたと伝えた。
サンディエゴに住むタブさんは、基本的なコードからポピュラー・ソングまで、何百ものレッスンビデオをYouTubeで公開するとともに、自ら運営する有料ギターレッスン・ウェブサイトのマーケティングの一環として活用していた。
しかし多くは著作権がある曲であり、法専門家は著作権侵害で削除されるのは時間の問題とみていた。
タブさんが使っていた曲の一つに関し、音楽会社が著作権侵害であると苦情を申し立てたことから、YouTubeは使用ガイドラインの違反として、タブさんの投稿を削除した。
YouTubeでは、ロンドンのギタリスト、ジャスティン・サンダーコアさんも多数のレッスン・ビデオを公開している。サンダーコアさんのビデオには今のところ苦情は来ていないが、自主的にYouTubeから削除している。
//////////////////////////////////////////////////////
ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR):米国の公共財源とプライベート・セクターや一般視聴者からの寄付金により運営される公共ラジオ放送ネットワーク。
http://www.npr.org
ギターレッスン削除に関する7月6日のNPRの放送内容:
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=11778602
//////////////////////////////////////////////////////
(解説)
ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は今年4月にも、デビット・タブさんとジャスティン・サンダーコアさんのギターレッスンがYouTubeで人気を呼んでいると伝えた。これらのビデオは世界中から、合計350万回以上も視聴されたという。
デビット・タブさんもサンダーコアさんも、ビデオでは指の動きがわかるようにクローズアップでゆっくりと弾く。それでもわからなければ、何度でも再生できるので、気兼ねなくレッスンを受けることができる。
また「What’s up, good people!」という呼びかけで始まるタブさんのレッスンや、Tシャツにジーンズ姿で床に座って「Hi, I’m Justin」に始まり、「コードが難しくても心配しないで。皆、難しいと思っているんだから」と語りかけるサンダーコアさんのカジュアルな雰囲気も、人気の要因となっていた。
ハーバード・ロースクールのジョン・パフルレー氏によれば、教師が良く知られたコードを無断使用するのは、たとえほんの一部であっても著作権侵害に該当するという。
タブさんがレッスンビデオで使ったローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のブラウン・シュガーについて、著作権侵害の苦情が音楽会社から寄せられたことから、YouTubeはタブさんのレッスン・ビデオを削除し、アカウントを停止した。
興味深いのは、サンダーコアさんのレッスン・ビデオには苦情がきていないことだ。NPRによれば、サンダーコアさんは自分のウェブサイト(http://www.justinguitar.com/justin/)でもレッスンやビデオを公開している。
サンダーコアさんは、自分がタスマニアで育ったときには良いギターの先生を捜すのが大変だったという経験から、スリランカやインドなど、ギターを習う機会が少ない子供たちにもギターを教えたいという思いでレッスン・ビデオを公開したという。
このためサイトの維持管理料として自主的な寄付は受け付けるが、すべて無料。サンダーコアさんはNPRの取材に対し、「無料だから公共サービスと解釈してもらえたのかもしれない」と話していたが、YouTubeからレッスンビデオを自主的に削除した。
一方、タブさんはYouTubeで人気曲のレッスンをする際に、さわりだけ演奏し、「もっと学びたかったら、私のレッスンサイトに来てください」と、自ら運営する有料のウェブサイト(http://www.nextlevelguitar.com/)へ誘導し、マーケティングの一環としても使っていた。
YouTubeでは、タブさんのビジネス・パートナーであるティム・ギルバーグさんが自作の曲で「コードや曲の説明をするのがなぜ悪いのか、わからない。教えて欲しいよ。再開するからね」と歌うビデオを投稿した。
ビデオの最後で、「Rock on, Good people! 戦いつづけようぜ」と、呼びかけている。このビデオは7月3日に投稿されてから4日間で、2万回以上、視聴された。タブさんとギルバーグさんは将来的に、オリジナル曲を使ってのレッスン・ビデオを再開したい考えのようだ。
<YouTubeでのティム・ギルバーグさんの反論歌ビデオ:01:12>
●If you want the TRUTH Click the link in the info box
http://www.youtube.com/watch?v=Yf4iy9uIO34
■関連情報
○keikomamaの部屋 なんとなくすっきりとしない「著作権侵害」2004/09/30
http://keikomama.seesaa.net/article/702216.html
○KANWA KYUDAI
音楽CDでレッスンのダンス教室「著作権侵害」 2004/09/29
http://guitar.jp/MT2/2004/09/post_230.php
○へたっぴセロ弾きの雑記帳 「YouTube動画削除」 2006/10/22
http://cello.weblogs.jp/goshu/2006/10/youtube_bb77.html
○ITmedia News 2007/06/18
「著作権問題はカネ次第? YouTubeや2次創作を考える」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/18/news057.html
○神田敏晶KNNエンパワーメントコラム
「YouTubeに対する著作権侵害防止策」 2006/12/09
http://rblog-media.japan.cnet.com/knn/2006/12/youtube_3c5b.html
○音極道茶室
「YouTubeを白く塗れ!常識が変われば景色も変わる」2006/07/15
http://www.virtual-pop.com/tearoom/archives/000161.html
○デジモノに埋もれる日々 2006/07/18
「YouTubeと著作権 - ルール改変を迫るための社会的影響力」
http://c-kom.homeip.net/review/blog/archives/2006/07/youtube_1.html
○CNET 2007/03/19
「YouTubeは著作権侵害に気付いている」--バイアコム弁護士が主張
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20345402,00.htm
○CNET 2006/07/19
「デジタルミレニアム著作権法を遵守している」--YouTube、著作権侵害訴訟でコメント
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20174387,00.htm
○メディア・パブ
「著作権侵害で渦中のYouTube,今度は何とMTVと提携へ」 2006/03/04
http://zen.seesaa.net/article/14147849.html
- いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。 - 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
- 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
- トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。