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月額料金制でメンテナンスフリーのパソコン「Zonbu」 ─携帯電話を模したビジネスモデルとは

小型・省エネタイプの据え置き型パソコンが米国で発売された。価格は99ドル。これに、オンラインストレージの利用料とソフト・ハードウエアのメンテナンス料が月額12ドルちょっとかかる。グリーンエナジー、メンテナンスフリーをうたい文句に、月額料金制を採用するビジネスモデルは成功するだろうか。

99ドルの小型パソコンを発売したのはシリコンバレーのスタートアップ企業Zonbu(ゾンブー)。オープンソースのLinux をベースにしたOSを搭載したパソコンを、購入後の各種サービス料金とセットで売り出した。

本体の大きさは、縦17.1センチ、横12.1センチ、厚さ5.7センチ。手のひらに載るワイヤレスルーターほどのサイズ。背面パネルと表面パネルの一部に各種の接続ポートが用意され、ディスプレイ、マウス、キーボード、USB、LANなど一通りのものが接続できる。1.2 ギガヘルツのVIA製プロセッサに512メガバイトのRAMを搭載。ブロードバンドは10/100Mbpsベースだ。

また、ハードディスクを内蔵する代わりに、4ギガバイトのCFカードを搭載している。背面パネルからデジタルカメラのようにカードを抜き差しすることができる。



インストール済みのアプリケーションも豊富。ブラウザにはFirefoxを使い、メーラーにはOutlookに似たインターフェースを持つEvolutionが用意されている。Word、Excel、Power Pointを始めとするOfficeソフトウエアのオープンソフト版もある。音楽、動画再生ソフト、写真加工ソフト、ウェブ作成ソフト、ゲーム、Skypeなどもインストールされ、通常の使い方をする限りWindowsやMacを使用するのとほとんど変わらない。

このパソコンの売りでもある省エネルギーに関しては、200ワット出力のパソコンと比べて月額で最大10ドルの電気代が節約できるという。非営利団体のグリーン・エレクトロニクス・カウンセルから、省エネ対応製品としてのお墨付きをもらった。

Zonbuパソコンの興味深い点は、端末の売り切りではなく月額利用料制を採用したところ。Amazon S3と呼ばれるAmazon社が運営するオンラインストレージの利用料に加え、ソフト・ハード両面に関するメンテナンス料金を含んだサービス設定とし、月額12.95ドルからのプランを組んでいる。メンテナンスはソフトウエアの自動アップグレードや、故障時のハードウエア無料交換などが行われる。

パソコンが99ドルというのは、2年間のサービス利用契約をした際に適用される価格。これが1カ月の利用契約だと本体の値段は249ドルとなる。現在はセット価格しか用意されていないが、Linux開発者向けにパソコン本体だけを250ドルで販売する計画もあるという。

ローカルマシンに大容量のハードディスクを持たせない代わり、オンラインストレージ上へバックアップファイルなどを収納し、パソコンとの間でやり取りする。この際、ファイルは暗号化される。作業はすべて自動で行われるため、ユーザーの手を煩わすことはない。

また、サーバ上のデータは一般のパソコンにダウンロードすることも出来る。このストレージ利用料と、ハード・ソフトに関するメンテナンス料金をZonbuの収益にあてる。

Zonbu創業は2006年。Appleの役員を務めた経験を持つアライン・ロスマン氏と、スタンフォード大学卒業のコンピューターエンジニア、グレゴリー・ゲンティル氏によってスタートした。

二人が考えたのは「携帯電話のようなビジネスモデルをパソコンに導入すること」。端末を安く売る代わりに、月々の利用料金で収益を上げる考え方だ。この背景には、パソコンに詳しくない人でも簡単に使え、何かトラブルが起きても困らないようなサービスを提供したいとの思いがあった。

ソフトウエアの自動アップグレード機能やハードウエアの完全保障などもその表れ。さらにもう一段強い商品特性を打ち出すために、小型・省エネ対応型を採用した。同社では、家庭などで2台目のパソコンとして使われることを想定している。

ユニークなビジネスモデルとして注目されているZonbuだが、普及にはいくつか課題があるように思える。

第一に、米国の一般家庭では据え置き型パソコンを置くためのスペースに困ることがほとんどないため、小型であることが、あまりアピールポイントにならない。

第二に、小型パソコンを持つなら、ディスプレイ、キーボード、バッテリーなどが内蔵されているラップトップ型を買うほうが持ち運びもできて圧倒的に便利だ。

第三に、低価格化が進む据え置き型パソコン市場で競合するために、月額利用料制が魅力的な提案になるとは考えづらい。

バックアップファイルを自動的に作成してオンラインストレージに保管してくれる機能は便利だが、それだけでは弱い。

従って、現時点では月額料金を払ってまで小型化・メンテナンスフリーにするメリットがあまり見えてこない。もちろん、一部の新し物好きの人たちやLinux愛好者には新コンセプトのパソコンとして受けるだろう。

ただし、これがラップトップ型になった場合には話が変わってくる。小型、低価格、メンテナンスフリーは大きな強みになる。ありがちな、ハードディスクのクラッシュに伴うデータ損失の悪夢からも解放される。そこに、月額利用料を払う価値が生まれてくるはずだ。もし、将来的にそうした商品が発売されたときには、私も購入を検討しようと思う。

 

■関連情報

○GIZMODO  2007/05/25
 本邦初公開!99ドルのリナックス対応「Zonbu」で知っておきたい22のこと
http://www.gizmodo.jp/2007/05/99zonbu22_1.html


○関心空間 「Zonbu(ゾンブー)」 2007/05/26
http://www.kanshin.com/keyword/1147909


○IT-PLUS  2007/04/17
 「ウェブ2.0時代のインフラサービスを強化・アマゾンのベゾス氏が講演
  ─ウェブ2.0エキスポ(米サンフランシスコ)」
http://it.nikkei.co.jp/expo/special/web2expo.aspx?n=MMIT1l002017042007


○CNET    Amazonのホスティングサービス「S3」で障害  2007/01/07
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20340304,00.htm


○TechCrunch Japanese  2006/07/13
 「Amazon S3ストレージ、アーリーステージの情報を公開」
http://jp.techcrunch.com/archives/amazon-releases-early-info-on-s3-storage-use/


○Casual Thoughts  「Amazonの次の一手は何をもたらす?」 2006/12/10
http://d.hatena.ne.jp/ktdisk/20061210/1165730915


○たたみラボ 「Amazonはサーバ環境もWebサービス化」 2006/09/19
http://www.tatamilab.jp/rnd/archives/000280.html


○秋元@サイボウズ研究所プログラマーBlog  2006/03/15
 「Amazon S3 ストレージサービス」
http://labs.cybozu.co.jp/blog/akky/archives/2006/03/amazon_s3.html

 

 


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