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靴を寄付するために起業したデザイナー「ブレーク・ミコスキー」

(記事要約)

2年前に一人の米国人デザイナーがアルゼンチンを訪れ、靴を買えない子供達を目にして決心した。靴を作って、一足売るたびに一足寄付しよう。

アルゼンチンで人々が履いていた「アルパガータス」と呼ばれるサンダルをヒントにして生まれたTOMsの靴が、米国で静かなブームを呼んでいる。

カラフルな色使いでファション性が高く、Vogue やElleなどの高級女性誌でも必須アイティムとして紹介された。Shoes for Tomorrow (明日への靴)という思いが込められたTOMsの靴を生み出した30歳のブレーク・ミコスキーさんは、昨年、約束通りアルゼンチンに戻り、8千足以上の靴をアルゼンチンの村の子供達に配って歩いた。

その時のビデオがさらに話題を呼び今年は8万足を売って、50人のボランティアとともに南アフリカの子供達に靴を届ける予定だ。

Vogueは1892年にニューヨークで創刊された高級ファッション誌。Elleはフランスで1945年に創刊された高級ファッション誌。どちらも日本を含む各国版を編集し、世界各国で出版している。

 

(解説)

多くの企業が慈善活動を行っているが、自分の消費行動と慈善行動とのつながりを感じるのは難しい。それに対して、TOMsの「1足お買い上げいただく度に、靴を買えない子供に1足寄付します」というメッセージは直接的で力強い。

TOMsを起こしたミコスキーさんは、ナショナル・パブリック・ラジオのインタビューの中で、「一人で慈善活動をしたら、靴を寄付するたびに資金集めをしなければならない。でもビジネスにして消費者が気に入る商品をつくれば、毎年、自動的に消費者がスポンサーになってくれる」と話している。 

もちろん、TOMsは非営利団体ではない。そして慈善活動を続けるためにも、消費者をひき付けて事業を拡大していく必要がある。TOMsの成功を支えているのは、むしろ消費者に求められる製品を作り、直接消費者にアピールしようとするビジネスの基本なのかもしれない。

TOMsの靴はデザイナーが作っただけに、商品性が高い。アルパガータスは麻やジュードを編んで作った底に、キャンバス地のトップをつけただけのサンダルだが、丈夫で軽く、吸湿性がある。ヨーロッパや南米では何百年も前から親しまれている履物だ。

日本でも20年程前にエスパードリュというフランス語の呼び名で女性向けに売り出された。私も昔エスパードリュを試したことがあるが、履き心地がいま一つで、雨にぬれて色落ちした思い出がある。

ミコスキーさんはアルパガータの特性を生かしながら、ゴム底に変えるなど履き心地を工夫している。またElleやVogueなど有名女性誌が目をつけるのも当然といえるほどキュートなデザインだ。価格も平均38ドルと手頃だ。

利益率は高くないが、1足売ったら、1足寄付するというポリシーが話題をよび、女性誌や業界紙だけでなくTIME誌、ナショナル・パブリック・ラジオなど様々なメディアに取り上げられた。

2006年6月に、7人の正社員と6人の販売員、8人のインターンで始めたTOMsは、オンラインと40店舗で秋までに1万足近くを売り上げ、約束通りアルゼンチンに靴を配りに行った。

その様子を映画制作者のケニス・コーキン氏がドキュメンタリーにしたり、現代抽象画家のテイラー・ラムジー氏のハンド・ペイントによる限定版を売り出したりと、話題には事欠かない。これまでのところ広告には一切、費用をかけていないという。

それでも今や全米の有名デパートからの注文に加え、ヨーロッパやカナダ、オーストラリアでも販売を開始し、今年は8万足、来年には17万5000足を売り上げる見通しだ。次は南アフリカ、そしてアジアの子供達にも靴を届けたいと、インターンを組織して大学をまわり、靴配布に向けてボランティア部隊を準備している。

ビジネスと同じウェイトで慈善活動を重視し、商品とアイディア、消費者のサポートで成長する新しいビジネスモデルといえそうだ。


TOMsのウェブサイト http://www.tomsshoes.com/Default.aspx


TOMs アルゼンチンでの寄付活動(YouTube映像 02:10)





TOMsに関するナショナル・パブリック・ラジオ(米国で公的資金と民間寄付で運営されているラジオネットワーク)7月25日付け放送内容(英語)
http://marketplace.publicradio.org/shows/2007/07/25/PM200707257.html


TIME誌 2007年2月5日号掲載記事(英語)
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1582305,00.html

 


■社会起業関連情報(日本語)

○社会起業家フォーラム
http://www.jsef.jp/


○実践型インターンシップ・起業支援 NPO法人 ETIC(エティック)
http://www.etic.or.jp/index.php


○CAC-社会起業家研究ネットワーク
http://cacnet.org/


○ソーシャルベンチャー・インターンシップフォーラム1
http://youtube.com/watch?v=XYVl2ARCPKU(YouTube映像) 09:20


○MY LOHAS.net 世界を変えるフェアトレード 2007/02/16
  「ピープル・ツリー 代表 サフィア・ミニーさん」
http://www.mylohas.net/blog/archives/2007/02/special0216.php


○社長TVブログ  2006/12/29
フェアトレードカンパニー株式会社の代表取締役サフィア・ミニー氏が「社長TV」に登場しました!
 http://blog.shachotv.jp/archives/2006/12/tv_89.html


○Business Media 誠:山口揚平の時事日想 2007/07/10
 「性善説は貧困を救えるのか——グラミン銀行の5つの考え」

  貧困層に小口融資する銀行事業を成功させ、ノーベル経済学賞を受賞した
  ハマド・ユヌス氏。今では“乞食”にも貸し付けを行っているという。
  「慈善より事業」「大切なのは、システムではなく目的」――ユヌス氏の
  一風変わった行動に1本筋を通しているのは、強い信念と大きなビジョンだ。

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0707/10/news031.html


○桐谷晃司のデジパ社長ブログ 2007/06/02
 「社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)」
http://digiper.com/kirilog/archives/2007/06/post_250.html


○livedoorニュース 「台頭する日本の社会起業家」2007/01/24
http://news.livedoor.com/article/detail/2994663/


○livedoorニュース 「お金は大切なツール 社会起業家」2007/01/26
http://news.livedoor.com/article/detail/2998163/


○Days like thankful monologue
 病児保育のNPO法人フローレンスを運営している駒崎弘樹のblog   2007/05/23
 「皆様からの若干のありがたくない反響と、多くのありがたく、かつ考えさせられる叫びについて」
    (ガイアの夜明け放送後) 
http://komazaki.seesaa.net/article/42682126.html#more


○ZDNet Japan  2007/03/08
  ソーシャルベンチャーの「ユナイテッドピープル」と「セレス」,共同で携帯電話向けのクリック募金開始
http://japan.zdnet.com/release/story/0,3800075480,00016451p,00.htm


○ソーシャル・イノベーション Social Innovation 2007/05/07
【巻頭言】ソーシャル・イノベーションに欠かせない複眼的思考
http://cac-journal.seesaa.net/article/46106976.html


○ソーシャル・イノベーションを起すWILLとSKILL 2007/08/06
 「“他人(ヒト)の思いに便乗型”ソーシャルイノベーション」
http://blog.canpan.info/przaidan/archive/129


○“介護バカがこっそり目指す”ソーシャルアントレプレナー ─社会起業家─への道
 「その笑顔に出会えるまで」2007/08/08
http://blog.livedoor.jp/kawajun1980/


○waxing crescent  「ソーシャルベンチャー事例」 2007/05/07
http://plaza.rakuten.co.jp/waxingcrescent/diary/200705070000/


○Elly's blog 「ソーシャルベンチャー」 2007/02/11
http://www.mother-house.jp/ceo/2007/02/post_31.html


○超常識的日記 「社会起業家」を調べる 2006/11/01
http://mmyy.synapse-blog.jp/mmyy/2006/11/post_3ae3.html 

 

 


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