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娯楽面でのネットサービスに感じた日米の微妙な違い

  • 米国在住ビジネスコンサルタント
  • 鶴亀 彰

七月は三週間日本で過ごした。いつもの訪日は一週間が殆どで、二週間も滞在すれば長い方である。その上に今回は、一週間はロサンゼルスに住む親しい友人が東京に持つマンションに一人で滞在させてもらった。

ホテルと違い、やはり日本の日常生活により近づける。毎日電車で通い、近所のコンビニや居酒屋、クリーニング店などと付き合い、マンションの住民と一緒に花火見物などにも行った。ゴミ選別の方法も教えて貰った。

あらためて日米の生活習慣の微妙な違いを実感した。ITの日々の生活への取り入れ方にも違いがある。携帯電話の使い勝手の良さなどはダントツ日本の方が進んでいる。地下鉄など交通機関も便利である。久し振りの出前も楽しかった。

しかし日々の生活の中でのITの利用のされ方と言う点で、特に娯楽の面では米国の方がこなれていると言うか、あまりうまく表現出来ないが、極めて日常的になっていると感じている。

例えば米国では野球と同じように映画が一般国民に人気の高い娯楽である。それだけにハリウッドなど制作面でのノウハウや感性が高く、世界中でヒットする映画を作り出している。最近では米国内よりは海外での収入が多い。

今週末も妻と一緒に近くの映画館に観に行った。今週封切になったマット・デイモン主演のBourne Ultimatumである。以前のBourne Identity, Bourne Supremacyに続く、記憶を消された元スーパーCIA工作員が獅子奮迅の活躍をする映画である。

映画の内容は別として、映画鑑賞までの一つの流れがうまく出来ている。まずは映画関連検索サイトへのアクセスである。米国では実にこれが充実している。上映中の映画の題名や新作映画の紹介を含め、ありとあらゆる情報が入手出来る。

日本の郵便番号にあたるこちらのZip Codeを打ち込むと希望の距離の半径にある映画館での上映映画や時間、料金などを教えて呉れる。こちらは殆どが自家用車での移動が基本であるので、自宅から映画館までの運転距離も判る。

そしてやはり極めつけはそれぞれの映画に対する評価コメントの充実である。専門の映画評論家によるもの、それから実際に映画を観たファンによる点数付けやコメントに加え、同映画の有名新聞の人気コラムでの評判も知る事が出来る。

ファンによる評価にはAからFまである。Aは燃えたぎる程良い、Bは極めてクールで、Fは料金返せなどとユニークなものである。ファンによるアカデミー賞なども生れつつある。Readers’ Pollと言い、昨年始まった。第一回のReaders’ Poll作品賞はLord of the Ringで、主演男優賞はジョニー・デップだった。

回を重ねるにつれて、プロが選ぶアカデミー賞やエミー賞と並ぶ権威あるものに育つのだろうか? その可能性は大いにある。ITはプロの独壇場だった分野を、ことごとく一般大衆も参加する状況に変えつつある。コンシューマーが影響力をを持つ時代の到来だ。

私達は切符を買うために長い列に並ぶのを避けて、オンライン上で購入し、上映開始の5分前に到着した。シニアの切符で8ドル50セントである。一般料金は2ドル高い。コストコやウォルマートなどでは7ドルのギフト用切符なども販売されている。

特に大げさに「ITと生活習慣」などと騒ぎ立てる程の事でもないが、実際に生活してみて、やはり日米の違いは確かにある。公共交通機関の発達した日本、人口集中度が高い日本、土地や住宅環境に余裕のある米国、その差異は、挙げればきりがない。

最近日本でも経済格差の問題が取り上げられるが、米国から見ればまだまだその差は大きくない。殆どの人々がある程度の基準の生活が出来、求めるものも共通するものが多い。極端な格差や人種の違い等から生じる好みの違いなどは、ほとんどない。

かなり日米の生活環境には似通ったものが多いのも事実であるが、やはりITの導入のされ方、使い勝手は異なる。

ましてやビジネス上の成功を勝ち取るためには、この日米の生活環境の違いを十分に考慮したうえで適応させる必要がある事を、映画鑑賞というありふれた一つの娯楽から、あらためて再認識している。

 


■関連情報

○GIGAZINE  2007/08/08
 「どうしてハリウッド映画は予算に何百億円もかけられるのか?」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070808_movie_money/


○ITmedia News
 「日本のドラマは論外」 希薄なテレビ業界の意識   2007/03/16
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0703/16/news090.html


○ITmedia News  2007/03/14
 「日本アニメの実写映画化」にハリウッドが興味を示す理由
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0703/14/news041.html


○CNET  2006/08/11
 「米映画産業がゴーサイン--ダウンロード映画の複製ディスク作製が可能に」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20198767,00.htm


○CNET  2006/07/11
 「ビットトレント、複数の独立系映画スタジオと提携」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20166308,00.htm


○CNET  2005/08/31
 ハリウッドに捧げる「DVD依存体質からの脱却のススメ」
http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000055923,20086845,00.htm


○CNET  2005/03/15
 「映画の新たな提供方法を模索する動き、米で活発化」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20081347,00.htm

 

○The Bourne Ultimatum Teaser Trailer(YouTube映像 01:21)
http://jp.youtube.com/watch?v=-fXIZmQ-Ijw


○THE BOURNE ULTIMATUM Trailer 2(YouTube映像 02:23)
http://jp.youtube.com/watch?v=DY7CnUY2EWk


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