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ドイツ改革の柱 失業保険ハルツの問題点

(記事概要)

社会福祉が行き届いていると言われるドイツで、2003年に導入されたHarz(ハルツ)を巡る論争はいまだ続いている。フォルクスワーゲン幹部、そしてドイツ社会民主党議員でもあるハルツ氏にちなんで名づけられたこの失業保険ハルツは、当時40万人にも上る失業者数を4年間で半数にするために行われた改革の重要な柱である。

このハルツを巡る子供の教育費用援助の法律が2007年から変わり、今まで24ヶ月だった支給が、12ヶ月になり、更に父親が育休をとる場合は、2ヶ月おまけに支給される。さらに、収入によって支援額が違うので、収入が少なければ少ないほど支給額も少ない。つまり、高収入である高学歴者の家庭の出産率を高めるための戦略であるのだ。

FAZ(フランクルフター・アルゲマイン新聞)http://www.faz.net/s/RubCD175863466D41BB9A6A93D460B81174/Doc~E14413D92474F4814A658CC21C82860B3~ATpl~Ecommon~Scontent.html

 



(解説)

それまで2年間もらっていた教育費用援助が1年間になってしまい、低学歴層が占める貧困層の両親には、仕事もすぐには見つからないため、かなり生活が厳しくなる。

しかし、国家としては、失業保険で長年生活する貧しい夫婦が、今までのように子供をたくさん生むことで、国家予算を食いつぶすのは困るというわけらしい。

今年8月には、生活保護を受けている家庭の15歳以下の子供の数が、なんと26万人となり、今までの最高記録に達してしまった。首都ベルリンでは、3人に1人は貧困層であると言われており、旧東ドイツに位置する街ではもっと比率が上がる。

もちろん食べるものがなくなり、子供たちが路頭に迷うことがないのがドイツの社会保障制度の良さであるが、このハルツ制度では、ドイツ統一後物価が高騰したこともあり、ギリギリの生活しかできない上、失業者である親が、職を見つけて新しい生活をスタートするには厳しい。

ハルツには1から4までのタイプがあるが、問題となっているのは今までの生活保障にあたるハルツ4。これの受給者の子供は、月に208ユーロ(3万円相当)の援助を手にするが、その金額は子供が何歳であっても関係がない。つまりそのうち62.05ユーロ(1万円相当)が食費に当てられているが、13歳になった子供には少ないであろう。

貧しい層の家庭をサポートする国家の予算が絞られる一方、昔は誰もが安く利用できた公共施設の料金、交通費、さらには子供たちのクラブ活動の入会金も高くなっているため、中流以下の家庭の生活は大変厳しい状況と言えるようだ。

 

【関連情報】

○日本とヨーロッパの交流を促進させる為に 「ドイツの失業率」  2006/02/10
http://dblog.dreamgate.gr.jp/user/hayashi/germany/21399.html


○リクルートワークス研究所  2006/10/20
 欧米諸国における雇用保険制度と日本型雇用保険の将来像
http://www.works-i.com/flow/lm/university/university13_3.html

 

 


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