ベテラン有名ミュージシャンにベンチャー・キャピタル(音楽ファンド)が出資
- 米国在住ジャーナリスト
(記事要約)
メディアへの投資を専門とするロンドンの投資銀行Ingenious Mediaは、レコード会社と契約の切れたベテラン・ミュージシャンへの投資に取り組んでいる。同銀行は3年前に音楽専門のファンドを立ち上げ、これまでに7900万ドル(約93億円)の資金を集めた。
同銀行は7月、1988年の全米No.1ヒット『レッド・レッド・ワイン』で知られるレゲエ・バンドUB40の最新アルバムへの投資を発表。制作、販売、宣伝に200万ドルを支給し、利益を受け取ることになる。
同銀行はこれまでに15のアルバムに投資し、さらに7作への投資に合意している。アーティストにはピーター・ガブリエル、プロディジーらが含まれる。アルバム1枚への投資額はおおむね40万ドルから200万ドルに設定されている。
(2007年8月24日WALL STREET JOURNALより)
Ingenious Mediaウェブサイト:http://www.ingeniousmedia.co.uk
UB40ウェブサイト:http://www.ub40.co.uk/
(解説)
レコード会社でリストラの対象になりがちなベテラン・ミュージシャン。固定ファンはいてもビッグ・ヒットは望めない。過去のヒット曲を演奏すればコンサートは盛り上がるが、新作の売り上げは伸び悩む。
しかしアルバムを出せばある程度のクオリティーは保証され、固定ファンの間で確実に売れる安心感がある。誰もが名前を知っているという強みもある。そこに英国のベンチャー・キャピタルが着目した。
Ingenious社の設定したファンドは、まだ利益を上げるに至っていない。しかし、レコード・ビジネスは全リリースの5%が儲かればいいという説もある。結論を急いではいけない。
音楽ダウンロードとそれにともなう違法コピーの横行で、レコード産業の再編が迫られている。折り合いがつかなくなったアーティストは、新たな道を探さなくてはならない。
最近では、元ビートルズ、ポール・マッカートニーが40年来付き合いのあったEMIと袂を分かち、スターバックス傘下のヒアー・ミュージックからアルバムをリリースした例がある。
ポール・マッカートニーの新作は全米1万のスターバックスを通じて販売され、8月までに約50万枚を売り上げた(ニールセン・サウンドスキャン調査)。これは成功と言えよう。
UB40のマネージャー、ランヴァル・ストロッド氏は、記事の中で「レコード会社が若いバンドも20年選手も一緒くたに売ろうとするのは、大きな問題」と、ベテラン・ミュージシャンに見合ったマーケティングの必要性を指摘する。
実力あるミュージシャンが、売り上げが落ちたからと過小評価されるのは寂しい限り。ベンチャー・キャピタルが彼らの中に新たなバリューを見出し「捨てる神あれば拾う神あり」の好例を示すことに期待したい。
【関連情報】
○ITmedia News 2005/06/14
「ネット×音楽×投資=SNS あるファンドの挑戦」
(ミュージックセキュリティーズという音楽ファンドについて)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0506/14/news030.html
○いかんともしがたい 「海外の音楽ファンド Sell A Band」2006/11/12
http://music.cocolog-nifty.com/001/2006/11/sellaband.html
○CNET 2006/08/25
「オンラインポイントで音楽ファンドへの投資ができる--ライフマイル」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20212727,00.htm
○作家 内藤みかのメインブログ 「音楽ファンドの時代」 2006/08/15
http://plaza.rakuten.co.jp/micanaitoh/diary/200608150000/
○TAMESOU.NET 「米スターバックス 音楽レーベルを設立」 2007/03/13
http://www.tamesou.net/modules/wordpress/archives/2007/03/13/824/
○音楽情報サイト「Music Village」
Red Red Wine | UB40 (ユービー・フォーティ)
http://www.eastvillage.jp/Blog/2007/03/ub40.html
○洋楽航海記since1974 2006/10/22
「親しみやすいレゲエバンドと言えば?─UB40」
http://rohiemon.seesaa.net/article/25876029.html
○My Music Garden 2006/08/05
「#0129 Red, Red Wine (レッド・レッド・ワイン)」
http://blog.livedoor.jp/golden_70s/archives/50879913.html
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