7月15日から始まったパリ市内の自転車レンタル・サービス、ベリブ Vélib（自転車Véloとセルフ・サービスLibre-serviceと自由Libertéを融合させた造語）が人気だ。

車の渋滞による公害と騒音がフランス国内でも突出して問題になっている首都のパリ市。現在のパリ市長ベルトラン・ドラノエ氏は、この問題を改善することを公約の一つに掲げていた。

2001年の市長就任以来、バス、タクシー専用レーンの敷設、夜行バスの郊外までの運行、トラム電車（路面電車）の設立、運行開始とパリ市内の乗用車の数を減らすための政策をつぎつぎと打ち出してきた。その一環が、市内で自由に乗り降りできる貸し自転車システム。地方のリヨン市は2005年5月から、エクサンプロバンス市でも、同じ自転車貸し出しサービスが成功して、満を持しての首都パリでのサービス開始だ。

約1万5000台の自転車がパリ市内に配置されている。1000ほどの自転車置き場があり、各置き場には20台くらいの自転車が停められている。300ｍ歩けばどこかの置き場に行き当たる。無人券売機にクレジット・カードを入れるだけで、誰でも24時間、パリ市内はいつでも乗り降り自由。

1ユーロ（約160円）の一日券と5ユーロ（約800円）の一週間券を購入し、最初の30分は追加料金なし。30分を過ぎると30分につき追加料金（31分から59分は1ユーロ、60分から89分は2ユーロ、それ以上は30分につき4ユーロ）がかかってくる。

つまり、30分でパリ市内を自転車で移動してほしいとのことだ。実際、サービス開始から1ヶ月ちょっと経過して、のべ200万人の平均利用時間は、22分と短い。30分以内に一度、自転車置き場に戻したら、同日内に再度自転車を借りて30分以内に返却すれば、追加料金はかからない。天気の良かった8月4日には、一日で10万人弱が利用したという。パリの住民は、29ユーロの一年有効券がお得と、登録数も増加している。

よく遭遇する問題は、目的地に着いた時に、駐輪場が一杯なこと。快適に目的地まできたのに、駐輪できずにそこから少し離れた駐輪場を探しに行かなくてはならず、時間のロスがある。

問題解決のために、運営会社がオンラインで自転車の駐輪状況をみて、駐輪場が満車のところから自転車を移動し、足りないところに自転車を置いている。が、多くの利用者がそれぞれの場所に自由に乗り降りしているので、完全に調整するのは難しい。

初めて使う時に無人販売機での券の買い方がちょっと複雑で、慣れないと5分くらいかかってしまうのが難点ともいえる。しかし、後ろに並んだ人がきっと助けてくれるだろう。

乗ってみると、確かに快適。公共交通機関での移動が便利なパリだが、中心から離れると隣の地区に行くにも地下鉄やバスでは乗継が悪く、時間がかかる。歩くと結構ある。しかし、自転車なら10分だ。それに、行きに自転車で行っても、帰りは地下鉄やタクシーで帰ることもできる。

パリ市内は、山の手線内くらいの大きさなので、30分も自転車を走らせればどこにでもいける。タクシーが東京や他の首都に比べて極端に少ないパリ。夜遊びをして、最終電車を乗り過ごしたら、タクシーを待つ事30分以上。そんな時も、自転車でスイスイ帰れる。（飲みすぎていなければだが）
　
ただ、日本と大きく違うのは自転車も二輪車とみなされ、自動車と同じ道路法が適用されること。車道を走らなければならないし（日本のように歩道を走るのは交通法違反）、一方通行も車と同じように注意しなければならない。運転の荒いパリで車道を走るのは、ちょっと勇気がいったりする。

今までは、自転車が移動に便利とわかっていても、盗難が多いし、安全な駐輪場を見つけるのは至難の業だし、疲れていたり、友人が一緒の帰りの時も乗ってきた自転車で帰らなければならなかったりと、不都合な点も多かった。新しいサービスで、エコで経済的な移動方法がひとつ増えたのは嬉しい。

だが、どうやらパリはまだまだクリーンな街には遠いようだ。自転車で走っていると、埃や虫が目に入ってきて、眼が開けられません。サングラスか眼鏡をかけて走る事をおすすめします。 

【関連情報】

○海外LRTニュース・ひろい読み　2007/08/16
　「トラムに匹敵【パリ】出だし好調のヴェリブ」
http://urbantransit.seesaa.net/article/51615934.html

○海外LRTニュース・ひろい読み　2007/09/03
　「バス停の広告契約更新で収入増ほか」
 （米国屋外広告最大手クリアチャンネル・アウトドアに関する情報）
http://urbantransit.seesaa.net/article/54196928.html

○フランス落書き帳　「VELIBな一日(VIDEO）」　2007/07/17
http://naoparis.exblog.jp/5879912/ 

○フランス落書き帳　「パリVELIB（レンタル自転車）事情」　2007/08/21
http://naoparis.exblog.jp/6029477/ 

○Velib ヴェリブの利用方法（YouTube映像　00:28)
http://www.youtube.com/watch?v=oecoAA7w8NI

○Velib ヴェリブの登録&レンタル方法（YouTube映像　02:00)
http://www.youtube.com/watch?v=R5Sl-pMiN60

○モバツア日記＠shinco Part?
　「パリのレンタルバイク（自転車）」　2007/09/03
http://mobatuashinco.blog82.fc2.com/blog-entry-166.html

○L'ECUME DES JOURS ─日々の泡─
　「Velib'始動」　2007/07/15
http://hibinoawa.blog10.fc2.com/blog-entry-584.html

○L'ECUME DES JOURS ─日々の泡─
　「パリ市長選まであと半年」　2007/08/29
http://hibinoawa.blog10.fc2.com/blog-entry-604.html

○b-notes　2007/08/03
   BLOG IT! from 東京新聞:レンタル自転車 パリっ子に浸透？　
   脱「運動不足」にも:国際(TOKYO Web)
http://shelf.b-room.oops.jp/?eid=694356

○フランスにておもふこと　「Enfin, j'ai teste Velib'」　2007/08/24
http://hydepicorette.blog32.fc2.com/blog-entry-682.html

○水織(mizusiki) 「パリではレンタル自転車Velibがお盛ん」2007/07/15
http://mizusiki.blog.shinobi.jp/Entry/285/

○フランス・リヨン生活　Bouchon Cochon
　「VeloV ついにパリにも」　2007/03/15
http://lyonnaise.blog32.fc2.com/blog-entry-200.html

○「リヨンにおける『ベロブ』コミュニティ・サイクル・システム」
http://www.cycle-info.bpaj.or.jp/japanese/report/rep06_01.html

○コミュニケーションのカタチが変わるということ 2nd
　Kenichi Kikui：総合広告会社勤務。インタラクティブメディア局統括、
　Web Strategist。
　「異業種参入：三井物産、屋外広告会社を設立」　2006/10/16
http://d.hatena.ne.jp/kikuiken/20061016

○経営からの地域再生・都市再生　2006/10/31
 「街に広がるOOHと施設整備-広告収入を活用した地域経営支援」
（ストリートファーニチャーを利用したOut Of Home Media事業）
http://blog.revitalization.jp/?eid=471028

○とぐろ系会議 「全自動の本場を訪ねる」　2006/07/26
　フランスのJCDecaux（ジェイシードゥコー）社が開発した屋外の
　全自動トイレ
http://www.1096.jp/archives/2006/07/post_146.html

○Scala（スカラ）のデジタルサイネージ.blog
　「コメントいただきました」　2007/01/31
　東京都交通局では、オリンピック招致や東京マラソンの開催などを見据えて、首都東京の景観・まちなみ　　にふさわしい新しいタイプの「広告付きバス停留所」を設置する
http://ameblo.jp/digitalsignage/entry-10024630678.html 

○JDN /Finmind /01  リポート ： 大塚和子 ／ アートディレクター
　「公共デザインとシステム」　2005/03/09
　1990年代に建築家ユハ・レイヴィスカとJCDecaux Finland  との
　コラボレーションによってデザインされたバス停やトラムの駅等に
　広告領域を組み込んだ総合システム
http://www.japandesign.ne.jp/HTM/REPORT/finmind/01/index.html