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祝! スピッツ結成20周年

 10月10日にニュー・アルバム『さざなみCD』をリリースするスピッツ(Spitz:http://spitz.r-s.co.jp/)が、今年の夏に結成20周年を迎えました。
 
彼らのメジャー・デビューは91年、シングル「ロビンソン」でブレイクしたのが95年のことですから、決して最初から順風満帆だったわけではありません。

 メジャー・デビュー後、ほどなくして偶然に彼らのことを知った僕は、ハード・ロックとネオ・アコースティックをブレンドしたようなバンド・サウンドと鮮烈なメロディーに、すぐに虜になりました。彼らにはメジャー・デビュー以前にインディーズから出した作品(後に中古市場で高騰します)があるのですが、お店で見かけたことはあるものの、残念ながら未だに聴いたことがありません。

 メジャー・デビュー・シングル「ヒバリのこころ」は、イントロのギターのフレーズからして、わりとよくあるパターンだな、と思ってそれほどハマらなかった(高騰したインディー盤に手を出さなかったのは、この曲がタイトルに冠せられていたこともあります)のですが、セカンド・シングル「夏の魔物」が僕の運命を変えました。歌のメロディー、歌詞の世界、ギター・ソロまですべて、個人的な話になりますが、ここまでピタッと自分の好みに一致した曲というのもそうはありません。当時まだ学生だった僕は、これ以降、仲間内ではスピッツ宣伝部長としての役割を果たしていくことになります(笑)。

 セカンド『名前をつけてやる』はファースト『スピッツ』とほぼ同じ路線ですが、サード・アルバムの前に、ホーン類やストリングスを大きくフィーチャーした実験的なミニ・アルバム『オーロラになれなかった人のために』を出します。もともと甘いメロディーをもつ彼らの曲にストリングスなどが被さると、ちょっとトゥー・マッチな感じがして(「田舎の生活」のマリンバは効果的でとても好きなのですが)、個人的にはこの路線に進んでしまうことが心配でした。

 そんな心配は杞憂に終わり、サード・アルバムは彼らの全シングル中もっともハード&ヘヴィな「惑星のかけら」でスタートするアルバム『惑星のかけら』。アルバムにはズバリ「オーバードライブ」という曲もあって、「夏の魔物」とはまた違ったハードな魅力に心地よく心を揺さぶられたものでした。



『惑星のかけら』スピッツ史上もっともハードなサウンドが聴ける

 以降、4作目『Crispy!』、5作目『空の飛び方』と充実した内容のアルバムが続き、シングル「ロビンソン」のヒットの勢いもあって6作目の『ハチミツ』で大ブレイクするわけですが、そこに至るまでセールス的には苦戦していたということを後になって知り、意外に思ったものでした。『ハチミツ』以降の活躍に関しては、もう説明は不要でしょう。後はみなさんもご存知のとおりです。

 スピッツの楽曲は、わかりやすいメロディーをもつ反面、転調を多用したり、変拍子が曲にアクセントをつけたりといった曲はまず出てきません(前出の「田舎の生活」は、4分の5拍子と4分の4拍子を組み合わせた、彼らにしては珍しい曲です)。

 しかし、ギター・バンドとしての魅力は突出しています。「ロビンソン」や「ホタル」に代表されるアルペジオの美しさ、「さわって・変わって」や「春の歌」で轟くディストーション・サウンド、またその一方で「スターゲイザー」に代表されるようにアコースティック・ギターが目立って使われる(「春の歌」のようなラウドな曲でも効果的に使われています)など、楽曲を彩るギターはヴァリエイションに富んでいます。そして、そんなギターに押されることなく、ときに印象的なフレーズやリズム・パターンを繰り出し主役にもなるベースとドラムス。単なる「ギターの魅力」にはとどまらない、「ギター・バンドとしての魅力」がスピッツには備わっているのです。

 彼ら自身がギター・バンドとしての魅力に自覚的であることは、2002年の10月にまとめて再発された旧作のリマスタリングをスティーヴン・マーカッセン(Stephen Marcussen)に依頼したことからも明らかでしょう。ヴァン・ヘイレン(Van Halen)の2004年に出た2枚組ベスト『ヴェリー・ベスト・オブ・ヴァン・ヘイレン─The Best Of Both Worlds』のリマスタリングも担当した彼は、ラウド・ロック系のバンドからローン・ジャスティス(Lone Justice)やライロ・カイリー(Rilo Kiley)といったオルタナ・カントリーのバンドまで、幅広いジャンルのギター・バンドのマスタリングを手がけています。スピッツの近作のマスタリングも彼によるもので、日本のバンドではスピッツ以外にもHIGH and MIGHTY COLORといったところまでを手がけています。

 『さざなみCD』には、スピッツとしては珍しく、アルバム発売前にシングル・カットされた曲が3曲(「魔法のコトバ」「ルキンフォー」「群青」)も収録されています。そういった意味では近作以上の大ヒットが期待できますし、12月からスタートする全国ツアーも間違いなく盛り上がることでしょう。

 

【関連情報】

○bounce.com 2007/08/25
 スピッツが2年9か月ぶりのニュー・アルバム『さざなみCD』をリリース
http://www.bounce.com/news/daily.php/11369


○スピッツ特集【OnGen:国内最大級の音楽ダウンロードサイト】
http://www.ongen.net/domestic/artist/feature/spitz070418/index.php


○そんな気がした曇りの日 
 スピッツ・ニューアルバム 「さざなみCD」 2007/09/02
http://pub.ne.jp/gupico/?entry_id=898352


○スピッツについて 「スピッツを語る」(アルバム、楽曲解説)
http://www.geocities.jp/haji2490/spitz/spitz.html


○関心空間 「スピッツ」 2007/09/23
http://www.kanshin.com/keyword/1221413

 

 


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