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悩める青年ギャングの救い主として犯罪歴のある元ギャングを採用

(記事概要)

ベルリン・クロイツベルク地区は、移民地区として有名だ。中でも36地区と言われる辺りは、貧困層の家庭が多く、アウトサイダーの若者たちが、職にもつけずにギャングとなっていく。

早くに家を出、教育も受けていない彼らには、麻薬のディーラーや窃盗で生計を立てているものが多く、市も彼らの対処に困っているのが現状だ。ソーシャルワーカーもこうした若者ギャングたちを救おうと動いてはいるが、実際直接若者の輪に入り込んで話す機会を作ることさえ困難だ。そこでベルリン州議会は、旧ギャングのメンバーや、元リーダー数人に、助けを請う事にした。(Der Spiegel2007年9月17日発行)


(解説)

ベルリン・クロイツベルク地区にあるナウニン通りは、夜になれば麻薬ディーラーやギャングたちの集会場所になる。この社会から、はみ出してしまった若者たちに、どうにかやり直させる機会を与えられないかと、ベルリン州議会は頭を痛め、過去2年間において15万ユーロ(約240万円相当)が、救済プロジェクトとして投資された。ところが犯罪件数が減る傾向が見られない。

そこで議会が探した救い主が、当地区で元ギャングだった大人たちだ。「上からモノを言う」のではなく、若者と同じ目の高さにたって話せる相手たちとして、選ばれた彼らの過去は、現在のギャングたちの現実と同じものだ。

「警察のために働いてるんじゃないんです。それを彼らにも最初にはっきりさせなければならない。」元ギャングであったトゥランが電話をすると、ザッと20名のギャングたちが集まった。

若者たちはそれぞれの悩みを打ち明けだした。町にあった青少年活動場が閉鎖されたこと、通りに住んでいることで差別を受けること。コミュニティーにおけることを、市だけで決めて欲しくないこと、そして彼ら自身も、日向(ひなた)の生活に出て行きたいと望んでいること等が主に話し合われた。

救い主たちは、こうした若者たちの意見に耳を傾け、メモをし、署名を集め、市に申し出た。州だけではなく、若者たちだけではなく、両者が協同することで、地区の事情が変えられるのではないかと期待されるこのプロジェクトだが、犯罪歴のある彼らを救い主として採用することに対し、他の教育者の間では不安が隠せない。この新しい試みが成り立つには、まずお互いの信頼関係を作ることから始まると言えるだろう。

 

【関連情報】

○コントラバス奏者 高橋徹のBlog ベルリンでさーて何を喰おうかな?
 「異人街/昼飯だけ見るとイタリア人?」 2007/09/07
http://diary.jp.aol.com/xm32ubfvb/940.html


○黒井文太郎の「スパイ&テロ」 「オカルトと銃社会と移民社会」 2007/05/17
 (国際情報誌『ワールド・インテリジェンス』(軍事研究別冊)編集長のブログ)
http://wldintel.blog60.fc2.com/blog-entry-59.html


○不 可 視 の 学 院 「移民問題と『下流社会』」 2005/11/10 
http://black.ap.teacup.com/fukashinogakuin/260.html


○Taejunomics 「フランスにおける暴動」 2005/11/08
http://stjofonekorea.blog6.fc2.com/blog-entry-289.html


○藤田徳人ブログ 2005/11/17
 「仏暴動:サルコジ内相が人気盛り返す 世論調査で判明」
http://www.fujitanaruhito.com/blog/archives/001577.php


○おんなんどおん(On and On) 「アメリカで最も凶悪なギャング MS13」 2006/08/31
http://denho.jugem.jp/?eid=294


○時空を超えて Beyond Time and Space
 「厳しくなったアメリカ国境管理とメキシコの立場」  2005/09/27
http://blog.goo.ne.jp/old-dreamer/e/2dadc0070cb8a6462367f55f68afe81d


 


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