Entry

ビジネス創造の実験場、米国で続々と登場するネット映像関連サービス

  • 米国在住ビジネスコンサルタント
  • 鶴亀 彰

アメリカに住み始めて41年が過ぎた。1966年10月の渡米以来、ずっと実感していることがある。それはこの国は常にビジネス創造を続けているということである。ネット時代以前にも、自動車や飛行機、電話、映画、ラジオ、テレビ、パソコンなどのビジネスを世界に先駆けて伸ばしてきた。

最近ハイテクビジネスに詳しい仲間との夕食のテーブルでもそのことが話題になった。現在でも色んな分野で様々な新しいビジネスが生まれつつある。いわゆるベンチャー企業であり、独自技術の開発や、すでに開発された技術を組み合わせてのニューサービスである。

それらの一つにオンラインテレビ分野がある。従来のテレビ放送局とは全く違う。デジタル時代、オンライン時代のサービスである。著作権の問題が解決されず、その上に、政府の認可や許可を楯に既得権益を守ることに熱心な日本とは大きく異なる。

通信と放送の壁を越えた動きに加え、新しい発想の映像サービスが生まれつつある。オンラインビデオを見る人口の増加と共に、広告企業とコンテンツ提供者をマッチングさせるサービスがその一つで、カリフォルニア州のサンマテオ市にある「Adap.TV」(http://www.adap.tv/)などがそうである。このオンラインビデオ広告サービスを提供するベンチャーは最近1000万ドルの投資を得た。

オンラインビデオの検索サービスを提供するベンチャーもある。この新たなベンチャーは、かの有名なネットスケープ創業者のMarc AndreesenやGoogle(グーグル)の初期投資家Ron Conwayなどが支援している。会社名は「CastTV」(http://www.casttv.com/)である。最近310万ドルの投資を得た。ウェブ上の各種映像の検索を瞬時に行なうことを目指している。

「ExpoTV」(http://www.expotv.com/)というベンチャーは、消費者に自分が勧める商品のビデオを作成させ、それをユーチューブのように自分でExpoTVに投稿させる。いわばYouTube(ユーチューブ)のビデオ商品広告版である。投稿者は、視聴者がビデオを一回見るたびに1セント稼げるシステムになっている。商品によって違うが、最低60回以上見られる必要があり、また上限は一つの投稿商品ビデオに付き10ドルまでである。

最後に我田引水になるが、同じtvベンチャーということで、私の「Yugobi.TV」(http://www.yugobi.com/yugobi_tv.html)も便乗してお知らせしたい。いまは一年半余りかかったパートナー企業との映像検索技術や映像配信システムの開発も完成し、投資家に向けてのベータ版の紹介中である。最近ジェトロ・ロサンゼルスと一緒に一部の関係者にロサンゼルスでお披露目したが、優れた技術を持つ日本の中小企業のニッチな技術商品や伝統工芸品、デジタルコンテンツなどを紹介、マーケティングする映像サービスである。

多くのニュービジネスが生まれ、その多くは沈み、ごくわずかな企業が大きなビジネスや産業にまで発展するビジネス創造の実験場、それがアメリカである。ブッシュ大統領が始めたイラク戦争により世界からの信頼に陰りが見えるが、常に新しいものを求めての挑戦が続くこの国の活力は衰えていない。

 


【関連情報】

○MediaSabor  2007/07/06
  Joostは「閉ざされた庭」と言い放つVeohTV
http://mediasabor.jp/2007/07/joostveohtv.html


○オーマイニュース 2007/09/27
 「赤字なのに乱立続くネット動画ビジネス」
http://www.ohmynews.co.jp/news/20070927/15517


○ITmedia News  2007/09/21
  「テレビからWebへ」に向けてアクセルを踏む巨大テレビ網
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0709/21/news085.html


○小寺信良 コデラノブログ3 「抵抗勢力」 2007/07/27
  動きの速いネットの世界で、3年の差は大きい。数々のサービスが
   欧米で実施され、それに関する特許がどんどん取られていく。
   日本が始めることには、サービス特許料を海外に払いながらやることに
   なるのではないか。
http://blogmag.ascii.jp/kodera/2007/07/27230238.html


○池田信夫blog  「BBCテレビのネット配信」 2007/07/24
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/78e30886c15667e57ff67d747ff39ee7


○歌田明弘の『地球村の事件簿』 2007/05/18
 「未来のテレビ広告」
http://blog.a-utada.com/chikyu/2007/05/post_3e74.html


○歌田明弘の『地球村の事件簿』 2007/07/20
 「ネットには何でもあり」の時代は終わり?――ユビキタスネット社会の
  「情報通信法」
http://blog.a-utada.com/chikyu/2007/07/post_f3d2.html


○Web担当者Forum  2007/08/20
 『ネットはテレビをどう呑みこむのか?』(著)歌田明弘
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2007/08/20/1767


○神田敏晶 KandaNewsNetwork 「そんなの関係ねえ!」2007/09/10
  テレビ局は、著作権侵害で削除要請という対応よりも、ネット上の
   再放送での課金手法などの視聴率以外のビジネスモデルを、総務省に
   申請し可能性を検討すべきであろう。現在の「視聴されている」という
   行為をもっと理解すべきである。
http://knn.typepad.com/knn/2007/09/post-5.html


○FPN  和蓮和尚 2007/05/31
  理想のNetTV その1「mixiとかTwitterに情報発信する」
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=2358


○CNET  2007/01/22
  なぜ実現しないネット放送--「品質論」唱える既得権益者の本音
http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000055923,20340814,00.htm


○CNET  2007/07/02
 国×放送業界×権利者が語るネット放送の未来--慶大「デジタル知財研究会」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20352032,00.htm


○TechCrunch Japanese アーカイブ 2006/10/04
 「CastTVは動画サーチに革命をもたらすかもしれない」
http://jp.techcrunch.com/archives/casttv-will-revolutionize-video-search/


○mediologic.com 2006/06/11
  「放送・通信の在り方に関する、ふるかわ節、と、広告ビジネス」
http://www.mediologic.com/weblog/archives/000913.html

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/398