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電話通話料も無料に─広告収入による無料ビジネスモデルの広がり

広告収入を元に、サービスや製品を無料で提供するビジネスモデルが増え始めている。放送業界で長年機能してきたこうしたビジネスモデルは今後、分野を越えて広がっていくのかも知れない。

前回のブログでも紹介したSpiral Frog(スパイラルフロッグ)は、無料で音楽配信を行うサービスを展開するサイト。利用者は自分の属性を明らかにした上で登録し、30日ごとに情報を更新する必要がある。それと引き換えに、自由に楽曲をダウンロードできる。レコード会社に支払う曲のライセンス料金は、広告主がスパイラルフロッグに支払う広告料で賄われる。広告主の広告は、サイト利用者が曲のダウンロードや再生を行う際に表示される仕組みだ。

こうした広告を使った無料サービスは、音楽配信に限らずいくつかの分野で見られる。そのひとつthe Pudding(ザ・プディング)は、IP電話を使った無料電話サービス。同社のウェブサイトから一般の固定電話や携帯電話に無料で通話ができる。通話をしている最中に広告が表示され、通話料はその広告料でカバーされる。

このシステムがユニークなのは、音声認識システムを採用していること。通話中に発せられた単語を抽出し、関連する広告を次々と表示する。例えばiPhoneの話題であればAppleもしくはiPhoneの広告、ディナーのトピックがでればレストランの広告といった具合。そのときの話題と関連性の高い広告を表示することで、広告効果を高める狙いだ。

サイトを運営するThe Pudding Media(ザ・プディング・メディア:http://puddingmedia.com/)はシリコンバレーに本社を置くイスラエル系のベンチャー企業で、同国に技術開発拠点を持つ。創業者兼CEOのアリエル・マイソロス氏によると、「皆にメリットをもたらすために通信と広告を融合した」という。会話の内容は広告表示のために機械的に抽出するだけで、盗聴のようなことはしないと同社ではいう。

広告を見たり聞いたりする代わりに無料で通話ができるサービスは、日本でもいくつか登場している。通信事業と広告との相性の良さを物語る例だ。

一方、ネットサービスではないが、広告を活用して無料で新車を提供するフリーカー・サービスも米国にはある。希望者は、車体に派手にペイントされた広告付きの車を乗ることを条件にその車両のリースを受けられる。「走る広告塔」として、毎日一定以上の距離を走ることなどの条件を守れば、数百万円の新車がタダで手に入る。故障時の修理も先方もちだ。乗り手は保険とガソリン代だけを負担すればよい。

カラフルな広告付きなので周りからジロジロ見られるはずだが、アメリカ人は目立ちたがり屋が多いせいか人気は高いという。マイカーに広告をペイントすることで、毎月4─5万円程度の掲載料をもらう仕組みもある。

フリーカー・サービスを運営するのは、専門の広告代理店。そのうちの1社Free Car Media(フリーカー・メディア)は、ニューヨーク、ロサンゼルス、日本に拠点を持ち、2000年からサービスを続けている。広告の地域性もあるため、誰もが車を手に入れられるわけではないが、申し込みをしてから早い人で3日、平均数カ月で広告主が見つかるという。

広告を利用しながら、こうして100円の楽曲から数百万円の車まで無料で提供してしまうことを考えると、このビジネスモデルはジャンルを問わずに応用ができるといえそうだ。特にネット上のデジタルメディアに関しては馴染みやすい。

先に取り上げた楽曲、通信に加え、書籍や映画チケットなどを無料提供するサービスもいずれでてくるだろう。必ずしもコスト全体を無料にする必要はない。例えば、広告の視聴やEメールなどを使ったユーザーによる広告の再配信と引き換えに、商品の割引や送料を無料にすることも考えられる。

無料の商品やサービスには人が集まりやすいという点で、広告主が最も気にする宣伝効果を高めやすいのがこのビジネスモデルの利点。トラフィックが増えれば、媒体側の広告掲載費用を吊り上げることができ、それだけ多くのユーザーへ無料サービスを提供することが可能になる。

いくらトラフィックが増えても、広告主の望むマーケティング対象層がいないことには効果は薄まる。しかし、会員制をベースにした属性情報の開示や、音声認識技術を導入したthe Puddingのようなアイデアと技術面での進化が、こうしたハードルを越えさせていくことだろう。

このビジネスモデルの欠点を上げるとすれば、経済状況に左右されやすいこと。かつてドットコムバブルの時代には、無料でパソコンを提供するフリーPCプログラムがあった。だが、シリコンバレーの景気後退と同時にあっという間に消えてしまった。このあたりは広告収入への依存率が高い民間放送や活字メディアの経営が、景気の波に影響されやすいのと同じことだ。

 

【関連情報】

○MediaSabor  2007/09/24
 「米SpiralFrog(スパイラルフロッグ)─無料音楽配信サービスの新たな
 ビジネスモデルは定着するのか」
http://mediasabor.jp/2007/09/spiralfrog.html


○ITmedia News  2007/09/25
 無料通話を「会話のキーワード」に反応する広告で提供――米ベンチャー
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0709/25/news024.html


○GIZMODO  2007/07/31
 「sex dollが楽しくなる? 京大の複数音声認識技術(動画)」
http://www.gizmodo.jp/2007/07/sex_doll.html


○CNET  2007/10/16
 ユーザー行動を予測--ゼロックスPARCの携帯用都市ガイドシステム「Magitti」
 http://japan.cnet.com/special/tech/story/0,2000056938,20358814,00.htm


○CNET  2007/10/03
 「20代男性のモバイル利用に関する調査--無料コンテンツに加入している
  20代男性ユーザーは91.7%」
http://japan.cnet.com/research/column/webreport/story/0,3800075674,20357795,00.htm


○メディア・パブ 2007/10/15
 「世界のインターネット広告,2009年でも総広告のまだ10%未満」
http://zen.seesaa.net/article/60688257.html


○小飼弾 404 Blog Not Found 「究極のアフィリエイト、ニコニコ市場」2007/07/22
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50877247.html


○たけくまメモ 「ソフトがタダになる時代」 2006/05/05
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_5c98.html


○FIFTH EDITION 「ネット時代の商業ソフト販売」 2006/05/05
 だから、もう考え方を変えるしかない。消費者にコンテンツをタダで提供した上で、
 どこか、別のところからお金を引っ張ってこないといけない。そうしないと既存市場は
 先細りが確実だし、いずれは、質でも負ける。絶対に負ける。というか、すでに負けて
 いる分野がかなりある。ネットだけが、メディアの視聴時間を延ばしているのがその
 証明だと思います。
http://blogpal.seesaa.net/article/17425282.html


○【ライブスープ:Live-soup】 無料ライブ配信/無料ライブ動画 クラブイクスピアリ
  クオリティの高いアーチスト達のライブ動画や最新の音楽ニュースなど、
  大人向けミュージックコンテンツ満載のサイト。
http://www.live-soup.com/


○GIGAZINE  2006/10/17
 「無料でダウンロードして利用できるBGMや音楽ファイルあれこれまとめ」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20061017_free_music/


○小心者の杖日記  200万曲を無料でフル配信するSNS「finetune」2007/03/11
http://www.outdex.net/diary/archives/2007/03/finetune.shtml


○無料で使える写真素材 - 厳選12サイト - デザインウォーカー 2007/02/17
http://www.designwalker.com/2007/02/stock-photo.html


○POP*POP  2006/11/21
 「無料で映画/動画をダウンロードできるサイト一覧」
http://www.popxpop.com/archives/2006/11/post_24.html

 

 


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